統合失調症/統合失調症の原因・症状

現実に幻が混じる?精神病性障害(統合失調症、妄想性障害)とは

【医師が解説】現実と非現実の区別がつかないような問題は、実は日常生活でも時にそれらしき事が起きますが、もしそれが深刻化している場合、精神病性障害の可能性もあります。今回は統合失調症などからなる、この精神病性障害について詳しく話します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

思考が生み出す知覚の誤認……誰にでもある見間違いや誤解

現実と非現実の境がぼやける…精神病性障害(統合失調症・妄想性障害)

精神病性障害を代表する心の病気は統合失調症です。ほかにも妄想性障害など、この精神病性障害に含まれる、心の病気は幾つかあります

それが現実かそれとも非現実か、私たちはその認識を時に間違えます。分かりやすい例を出せば、例えば子供に親御さんが怪談を読んで聞かせた時です。親の話にすっかり震え上がった子供は、一人で寝る時にそれを思い出し、窓に映った風が作る木の葉のざわめきに大きな悲鳴を上げてしまうかもしれません。もっともこれは、まあ子供だから、で済む問題ですが、実際、私達には信じたい事を信じ、見たいものを見たつもりになる心理傾向というか、一種のバイアスがあります。

これはUFOの目撃例でもそうです。そのほとんどは公式には誤認だとされています。そうした誤認が実際に起きる背景としては、例えば、「UFOは実在する。故に、はっきり正体が分からない何かが空を富んでいれば、それはUFOだ」といった思考が、目撃者の頭のうちにあったのかもしれません。それで、ここで言いたい事は、このように頭のうちにある思考内容は、何かを知覚する際、間違いが起きる理由になり得る、ということです。先の子供の例でも、そして、このUFOの誤認の例でも、基本的には日常、誰にでも時に起きるかもしれないレベルの問題です。しかし場合によっては、問題のレベルが日常生活ができないほど、深刻化することもあります。そうした状況が一般に精神疾患の、なかでも精神病性障害の可能性が出てくる状況です。

今回は心の病気の基礎知識として、現実に非現実が混じってくる、と形容できるような問題が出てくる、この精神病性障害を詳しく解説します。
 

現実に非現実が混じる場合、精神病性障害の可能性も

まず、精神病性障害の「精神病性」とは、基本的にはその当人が日々精神体験する現実の中に、非現実が混じってくるような状態を意味します。具体的には、聞こえないはずの声が聞こえてくる、あるいは、あり得ないことが起きていると確信する…といった問題が、「精神病性」という言葉が表わす内容です。

それで、精神病性的な精神体験は、日常の中でも、数自体は決して多くはないでしょうが、時に起き得ることです。冒頭でも挙げた例の他にも、例えば、他人の素振りを見て、何か自分に当てつけている気がした、あるいは悲しいことですが、大事な誰かを亡くしたばかりの、そのなんとも言い難い時期に、突然故人の声がはっきり耳元に聞こえた…といったことには、精神病性的な要素もあります。でもそれは大部分、一時的な問題です。いいかれば、精神科で治療が必要な状況ではありません。

しかし、場合によっては、幻聴や妄想などが持続的に現れ出し、それゆえに普段通りの生活が全く成り立たなくなるようなことがあります。そうした状況では脳内に何か深刻な医学的問題が発生しています。言葉を変えれば、脳内に至急医学的に対処すべき問題が発生しているということです。よりはっきり言えば、その当人の脳内には至急精神科で対処すべき問題が発生しています。そして、そうした状況が、一般に精神病性障害の診断がつく状況です。
 

精神病性障害に含まれる病名……統合失調症の他に、妄想性障害なども

精神病性障害とは、簡潔に言えば、統合失調症とそれに類ずる疾患で構成される、心の病気の1カテゴリーです。精神病性障害には、このカテゴリーを代表する統合失調症の他にも、妄想性障害など幾つか疾患が含まれています。ここでは、この2つに絞って、その概略を以下に述べてみます。

■統合失調症
統合失調症は単に精神病性障害を代表する病気というだけでなく、むしろ、うつ病などと共に、心の病気を代表する精神疾患の1つともいえます。それで、統合失調症の初発は、通常10代後半から30代前半までです。その時期は、まだ学校に通っていたり、社会に出て頑張り始めた時期です。そうした、その後の人生を決める大事な時期に発症しやすいことも。この疾患が生み出す問題が深刻化しやすい要因の1つです。それで、その初発時の問題に関しては、今回取り上げました幻覚や妄想などが、特に現れやすいです。この病気の発症率やその性差に関しては、おそよ人口の1%程度の発症率になっていて、その男女比はほぼ1:1です。

■妄想性障害
妄想性障害は精神病性障害というカテゴリーに属している以上、その代表疾患の、統合失調症に類似する心の病気です。とはいえ、統合失調症との違いもはっきりあります。それは、妄想性障害では、その問題症状が、その病名どおりに、妄想にかなり限定されます。それゆえ、幻覚等も現れやすい統合失調症よりも、精神症状が日常生活に与える問題は、それほど深刻化しない可能性もあります。実際、妄想性障害での精神科受診はかなり少ないです。しかし、妄想は基本的には深刻な精神症状です。対人関係や仕事上、ネガティブな問題を生み出す素地がはっきあります。当人の日常の質を向上させためには、精神科での治療が通常最も役に立ちます。

以上、今回は幻覚や妄想が現われている際の、基本的な心の病気のタイプとして、精神病性障害を詳しく解説しました。ただ現実には、精神病性障害とはかなりタイプが異なる疾患でも、例えば、うつ病でもその重症例で現れることがあります。これを少し観点を変えて説明すれば、今回の精神病性障害とははっきりタイプが異なる、うつ病などでも、その重症例において、その重症内容の1タイプとして、幻覚や妄想が現れる可能性もあることは、今回の関連知識として、ここに付け足しておきます。

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