会社の出張や買い物で、マイルやポイントを貯めても良いのか
会社の出張や買い物で、マイルやポイントを貯めるのはあり?
『ポイント、貯めてください!』
家電量販店などで買い物をすると、必ずある会話ですね。購入金額や、購入した品物に応じて購入金額の5%から20%程度のポイントが貯まっていき、次の買い物のときにそのポイント分だけ値引きを受けることができる仕組み。大手家電量販店などで「ポイントシステム」等の名称でおなじみですから、みなさんご存知のことでしょう。
また、「マイルを貯めて、この夏、夫婦で帰省します!」なんて方がいらっしゃるのではないでしょうか?顧客が飛行機を利用した距離に応じてマイルが貯まっていき、一定のマイルが貯まると、航空券や記念品などと交換できる「マイレージシステム」。ほとんどの航空会社がやっているサービスで、最近は飛行機に乗らなくても、光熱費などの生活費やショッピングで使用してもマイレージが貯まるようになっているようで、飛行機に乗らずにマイルを貯める「陸(おか)マイラー」と呼ばれる人もいるとか。
私の場合、飛行機は年に数回しか利用しませんので、マイレージカードは持っていませんが、家電量販店のポイントカードはよく利用しています。ポイントは、知らず知らずのうちに貯まっていくもので、気がつくと「万円」単位になることもしばしば。かなりお得なシステムですよね。
この「ポイント」や「マイレージ」、自分のプライベートで貯めて使うのならば、もちろん何の問題もありません。むしろ、使わない手はないでしょう。でも、会社の備品を購入する際に自分の口座にポイントを貯めてしまったり、会社の出張で航空機を利用する際に自分の口座にマイルを貯めてしまったりして、これらのポイントやマイルを会社に無断で、自分のために使っても良いものなのでしょうか?
今回はこのあたりの問題と、これにまつわる経理の対処方法について、考えていきます。
ポイントは「×」、マイルは「?」
家電量販店、航空会社ともに大手2社に電話で確認しました。家電量販店の「ポイント」は「法人(あるいは個人事業主)契約が出来る」、航空会社の「マイレージ」は「法人契約が出来ない」ということでした。「マイレージ」が法人契約不可なのは、個人の搭乗記録(航空チケットの半券)をもとにマイレージを加算する仕組みのためだそうです。この前提をもとに、弁護士さん、司法書士さん数名に「社用で発生したポイントやマイルを自分でつかうと、法的に何らかの問題が生じるのか」を確認してみました。すると、おおよそ以下のような回答が得られました。
まず家電量販店の「ポイント」の場合。そもそも「法人契約」が可能ですから、ポイントにこだわる会社ならば、社用でパソコン等を購入する時に「会社名義」でポイントカードを作ってから使うことになるはずです。もし、会社のポイントを自分のために使ってしまった場合、それは「横領」や「窃盗」などの罪に問われる可能性があるということです。すなわち「会社」という他者のものを勝手に使って自分のものにしてしまうことですから、これはさすがにマズイですよね。
次に「マイレージ」の場合。これは微妙です。マイレージクラブの加入は個人に限られているので、法人が直接加入することはできません。
『マイルを貯める行為自体が会社に直接損害を与えたとは言えないので、直ちに刑事上の罪には問えない』
という意見と
『お金を出したのは会社なのだから、マイルも会社のもの』
という2つの意見がありました。ただし、「刑事上の罪に問えない」とおっしゃった方も、
『マイルを自分のものすることは、会社・社員双方が、相手の信頼や期待を裏切らないように仕事をしないといけないという信義則に反した行為と思われるので、刑事罰に問われなくても、最悪の場合、解雇の理由にはなってしまうかもしれない』
ともおっしゃっていました。
会社としての「マイル」や「ポイント」対処法
問題となったのは、「会社に無断で」ポイント等を使用した場合です。と、いうことは会社との合意があれば、大事には至らないわけです。まず、会社としてこの問題に対処する場合、「ポイント」や「マイレージ」について、「会社としてのスタンス」をハッキリとさせることからはじめていきましょう。「会社としては、ポイントもマイルもいりません。勝手にどうぞ」というのか、「ポイントもマイルも会社で管理します!」というのか、ココをハッキリさせないことにはどうしようもないですよね。
■「ポイント等」を会社としては管理しない場合
ポイント等について、会社で管理しないと決めた場合は、その旨を社員全員にちゃんと知らせれば、特に問題は無いでしょう。実際、ポイント等の管理を会社で行う場合、かなりの手数がかかり、仕事に支障が出てしまうといったマイナス面もありますし、実際の企業ではポイント等を完全に管理しているケースはあまり多くないように思います。
ただし、特定の人だけがポイントやマイルの恩恵をあまりに受ける様な場合、社内から不満が生じるかもしれません。その場合は特定のポイント等のみ会社で管理する等、再検討をすることを念頭においておくことが必要です。また、ポイント等で受けた利益相当額について、その利益を受けた個人のほうで所得税の課税対象となる場合がありますので、その点は充分社員に告知しておく必要があります。
■「ポイント等」を会社で管理する場合
ポイント等を会社で管理する場合、法人契約が可能なものは法人名義で契約し、経理や総務等で管理することにし、ポイントの使い道は社内でのお菓子や備品購入に充てるなどすれば良いでしょう。社内の忘年会の景品の原資に充てても良いかもしれませんね。
マイレージクラブ等、法人契約が不可の場合、マイルをスッパリとあきらめてしまうのが手かもしれません。そもそも、個人向けのサービスを法人で受けようとするから無理が生じるのです。
個人の場合のサービスが「マイレージ」ならば、法人の場合も何かしらのサービスが用意されていて当たり前でしょう(中には、あまり充実していない会社もありますが)。請求が一本にまとまって支払い業務が簡単になったり、ある程度の値引きをしてくれる会社もあるようです。
その他にも、あらかじめ近隣の旅行会社と話をして、ある程度の割引を受けられるような契約をしておくというのも手です。いずれにせよ、航空券は比較的高額であり、社員に立替払いさせるのは負担が大きいと思われます。突然の出張の場合には仕方が無いかもしれませんが、原則として予め会社で航空券を購入し、現物を支給するようにするべきです。
「何が何でもマイレージにこだわる!」という会社の場合、出張した社員にマイルを報告させる、という方法もあります。経費精算の際、マイル数も報告させて管理する、というものです。実際にそのような会社もあるようですが、「マイルは会社のもの」という意識を根付かせるのに、少し苦労するかもしれません。今までは、個人のものとして使っていても何にも言われていなかったのですから。
マイルはポイントの場合同様、社内の福利厚生に使ったり、新たな出張の際の航空券に充当させたりすればよいのではないでしょうか。この場合の「会社がポイント等により受ける経済的利益」の取り扱いですが、実は、税務上、文章として取り扱いが決められているわけではありません。が、これは税務上も会計上も、「値引き」という認識が一般的のようです。
つまり、ポイント等を使った場合、「実際に現金や預金で支払った額」のみで仕訳を切っていけば良い、ということです。ただし、あまりに大きな金額の場合などは、お近くの税理士さんなどに相談したほうが良いかもしれません。
「マイル」や「ポイント」は、おまけです!
さて、今回は「ポイント」や「マイル」について解説してみましたが、いかがだったでしょうか?『ポイントくらい、備品を買いに行ったときのお小遣い代わりにもらってもいいジャン』
『マイルは、大変な出張をするのだからもらって当たり前だよ』
こんな考えをする方もいらっしゃるかと思います。でも、これは大きな間違えではないでしょうか。備品を買いにいくのも、出張するのも「仕事」の一環です。もし、残業してまで備品を買いにいったのならば「残業手当」を、出張が大変であるのであれば「出張手当」をもらえば良いわけです。
もし、逆の立場の会社のほうでも「ポイントやマイルがあるから、手当は払わないでいいや」という考えをお持ちでしたら、これはちょっと改めたほうが良いと思います。いずれにせよ、これらの手当は量販店や航空会社に求めるべきものではないのです。
会社も社員も、ポイントなんかのことにこだわらず、本来の仕事でイイ仕事をして、その結果としてたくさんの利益をあげ、たくさんの給与をもらえるように頑張ること、それが本当の姿のはず。これが出来ている会社は、別にポイント等のことで決まりごとを作らなくても揉めることもなく、上手くいっているように思えるのですが、いかがでしょうか。あくまで、「ポイント」や「マイル」はおまけです!くれぐれもこのことをお忘れなきよう。
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