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「開かれた保守主義」ってなんだろう(3ページ目)

安倍首相が唱える「開かれた保守主義」……そもそも保守主義とはいったいなんなのでしょう。そしてこの言葉にこめられた安倍首相の考えとは? 2007年のはじめに、これを考えたいと思います。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【首相が共感する「保守主義」の原点をさぐる】
2ページ目 【1980年代、英米で生まれた「新保守主義」】
3ページ目 【新保守主義に立脚した「開かれた保守主義」】

【新保守主義に立脚した「開かれた保守主義」】

中曽根政権の「新保守主義」

中曽根改革
民営化に靖国参拝……中曽根行政改革と小泉構造改革の共通点は多い?(photo(c)2000ピクセル以上のフリー写真素材集(列車)・東京発フリー写真素材集(靖国神社))
1982年からおよそ5年間政権を担った中曽根康弘は、前内閣の鈴木内閣から行われていた行政改革を強力に押し進めていきました。

それは3公社民営化という結果をもたらしました。電話事業の国家独占をやめて電々公社を民営化(NTTの設立)し、専売公社も民営化(今のJT)にしました。

そして、大量の赤字を抱えていた国鉄を6つに分割、JRグループとして民営化するという大事業を敢行したのでした。

もしこれが行われていなかったら、今でも携帯電話は国家独占により高い料金のまま普及しなかったかもしれませんし、「駅ナカビジネス」なんてものは生まれなかったかもしれません。

一方、中曽根政権は国家伝統の重視ということにも積極的で、1985年には首相としてはじめて靖国神社への公式参拝を行いました。しかしこれは内外からの批判を浴び、翌年からは行われませんでした。

民営化と靖国参拝……小泉政権時代とだぶるものがありますね。

遅れて始まった構造改革

中曽根改革が進んでいけば、日本の構造改革ももう少し早く始まったことでしょう。しかし、それは進みませんでした。

まず、空前のバブル景気によって税収が伸び、行財政改革への熱意が冷めてしまったこと。そして、そのあとの大不況は政府の政策を混乱させ、なかなか一貫した改革が行われなかったということ。

そして1993年にいわゆる「55年体制」が崩壊し、90年代後半は政界再編の波が進み、行政改革よりも権力争いに熱が入ってしまったこと。

こうしたことから本格的な新保守主義的改革である小泉構造改革は、21世紀になってようやく始まることになったのでした。

「翼を左へ伸ばす」のが「開かれた保守主義」?

開かれた保守主義
「開かれた保守主義」を掲げる安倍政権、はたして文字通り支持を広げることができるだろうか?
このあたりを意識的に自覚して、「闘う保守主義者」として自らの立ち位置を明らかにしたのが安倍首相なのだろうと思います。

そして、そういう政治姿勢を貫くことにより、「タカ派」といわれがちな自身への支持を、より「左寄り」に開いていこう、というのが「開かれた保守主義」ということなのかもしれません。

かつて衆院選で大勝した中曽根元首相は、「自民党はレフトウイングにまで翼を伸ばした」と言いました。

「開かれた保守主義」は、はたして中曽根自民党と同じように、「レフトウイング」にまで支持を広げることができるでしょうか。今年の参院選で、それが問われます。

★こちらもチェック!「安倍内閣の動向」

「『開かれた保守主義』ってなんだろう」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
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