不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

住宅購入、残代金の支払い前に入居できる?

住宅の買換えのときなどに売却と購入のタイミングが合わないと、仮住まいをするのも大変です。残代金を支払う前に購入した物件へ入居する「先行入居」について考えてみましょう。(2015年改訂版、初出:2005年1月)

執筆者:平野 雅之


今回は、購入する物件の残代金支払い日とその引き渡し日がずれるケースについてのご質問をいただきました。



question
このたび買換えで住んでいたマンションを売却し、その引き渡しが来年の1月下旬になっています。購入する物件は中古の一戸建て住宅を検討しており来週中に契約する予定ですが、マンションの売却代金を支払いの一部に充当するため、業者の人からは売却物件と購入物件の残代金支払い日を同じにする旨の説明がありました。しかし、子供の転校のことを考えると、できれば新学期が始まる前に引越しをしたいと思います。このような場合はどうすれば良いのでしょうか。ちなみに購入予定の一戸建ては、不動産業者が売主で既に空家となっており、リフォーム工事も済んでいます。
(東京都世田谷区 匿名 30代 女性)



answer
住宅の買換えの場合には、その当事者だけではなく、売却物件の買主、購入物件の売主、そしてそれぞれの契約にあたる媒介業者と、さまざまな人の立場や都合が関連するため、日程の調整がなかなかうまくいかないこともあるでしょう。

さて、ご質問の件ですが不動産の売買においてたいていの場合は、残代金の支払い(=決済)にあわせて所有権の移転および物件の引き渡しを行ないます。

このうち、所有権の移転は特別な事情がない限り残代金の支払いと同時であることが原則となるものの、引き渡し日を残代金の支払い日とずらすことは実務上それほど難しいわけではなく、そういった事例も少なからずあります。

もちろん、売主または買主どちらかの一方的な意思だけで日付を変更することができるわけではなく、あくまでも双方の合意が前提となります。

家と家族のイラスト

条件が整い、双方の合意があれば、残代金の支払い前に入居することは可能

具体的には、ご質問のケースのように残代金の支払い(所有権移転)前に引き渡しを受けて買主が入居(=先行入居)する場合と、それとは逆に残代金を受け取って所有権が買主へ移った後もしばらくの間は売主が居住を続ける場合と考えられます。

先行入居を認めるケースはほとんど買主の都合によるもので、子供の転校日程による場合や、これまで居住していた賃貸住宅の契約期限による場合、売却した住宅の明け渡し日程による場合、引越しの都合による場合などが該当します。

また、先行入居に似た措置として、残代金の支払い(所有権移転)前に買主による内装リフォームを認めるケース(=先行内装)もあります。

先行入居でも先行内装でも、それを希望する時点で購入物件がすでに空家(あるいは新築完成済み)となっていることが前提です。まだ住んでいる売主を追い出してまで「残代金の支払い前に入居やリフォームをさせてくれ」というのは常識的に通用しません。

また、先行入居とは逆に残代金の支払い(所有権移転)後も、売主がその物件にしばらく居住するケースは、いうまでもなく売主の都合によるもので、転居先物件(新築未完成物件など)の引き渡しが遅れる場合などですが、買主が投資目的で購入したならともかく、自分で住むために購入する買主にとってはなかなか認めづらいことでしょう。


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