岩さき(2ページ目)

繊細な出汁が利いた椀物と鍋料理

・椀物

鱧豊年のお椀

椀種は鱧豊年。これは鱧に道明寺粉をまぶして揚げたもののこと。静かな湖畔のような落ち着いた繊細感溢れる余韻のある味わいで、塩加減もぴたりと決まっています。

・向附

ぐじ（甘鯛）と鮪の合い混ぜ

お造りは骨董の染付のお皿で登場です。基本となる刺身はどれも一仕事されていて、ぐじ（甘鯛）と鮪の合い混ぜ形式となっています。醤油で既に味付けされていますので、そのまま頂けのが特徴。長芋、カイワレと共に口に入れると、複雑で奥深い味わいが畳み掛けてきて、これが単なる刺身とは違い、一つの料理として完成されていることに気付かされます。例えお造り（刺身）といえども、客に最後の味付けを委ねない、料理人としてのプライドを感じさせられましたね。

・焼物

名残り鱸の油焼き

焼物は名残の鱸が供されます。夏が旬の魚ですが、この時期でも驚くほどに脂の乗った旨味が舌の上で主張する仕上がり！　敢えて名残ものを使われただけあり、さすがの質高さです。この時期、なかなかこれだけの鱸とは出逢えませんからね。また、レモンのカットされた美しさまで、コダワリが徹底されております。

・御凌ぎ

栗のおこわ　栗と銀杏と小豆入り

御凌ぎは、秋の冥加である「栗」と「銀杏」を盛り込んだ薫り高い「おこわ」。口に入れた途端に、秋の香りがスーっと鼻腔を擽り、その余韻と共に素材の持つ甘味がじんわりと拡がる、まさに丹波の山の恵みが溢れんばかりに詰まった一皿でした。

・鍋

焼き穴子と引き上げ湯葉のお鍋

5,000円コースでは炊き合わせに代わって、鍋物が登場。鍋は熱伝導がよい銅鍋を使用されており、鍋の中身は「焼き穴子」と「引き上げ湯葉」、それに「水菜」と「舞茸」が入っています。それぞれの素材の美味しさは元より、この出汁だけでも充分すぎる満足感が味わえます。

・〆御飯

炊きたての白御飯。無垢で美しい艶白色です。

土釜はもちろん、信楽の中川一辺陶さんの土釜を使用。米は丹波出身のご主人の父上が作られたお米で、炊く30分前からアルカリイオン水に浸けて炊き、炊きたてを供されます。

具沢山のちりめん山椒	お漬物も上品な仕上がり

また、添えられた「ちりめん山椒」は奥様のお母様の手作りで、筍と土生姜を贅沢に使い、薄味に炊き上げられたもの。これがまた素晴らしい味わい。今まで割烹で食べてきた中では、間違いなく最高の「ちりめん山椒」です。こういう家族の繋がりが感じられる〆の御飯というのも、心が温まっていいですね。

控え目な焼き目加減の「おこげ」も秀逸。

それにしても、今回のコースで、とりわけ感動したのが、この白御飯。ここ数年、幾多の和食店で食べてきた「白御飯」の中で、心から感激できた白御飯は「上賀茂 秋山」と「祇園 花霞」に次いで3店目です。秋の新米の季節は混ぜ御飯ではなく、新米の質を活かした「白御飯」で勝負される店が多いですが、極上の米質、とそれを活かしきるだけの土釜と水、そして炊き込むタイミングと、念入りな下準備の五拍子揃った白御飯はなかなか出逢えません。

というのも、炊き上がりの時間を見計らって、炊きたての白御飯を客に供すのは、非常に難しいことなのです。特にこの店では、御飯の炊きあがりにはごだわりを持たれているため、客が訪問する30分前から水に浸して準備されることもあり、炊きたての御飯を食べたい方は、出来る限り、訪問時間は正確に守られるのがベターでしょう。

・水物

柿と巨峰

供されるのは柿と巨峰。特に柿の熟しっぷりがベスト。巨峰も旬のものならではの瑞々しさで爽やかに〆。

実力派の一店

厳選された食材から生み出される端正で真っ直ぐな料理の数々。器の揃え方もセンス良く、日本料理の粋を感じられる一軒です。

＜DATA＞
・店名： 岩さき
・所在地：京都市中京区釜座通御池上ル723
・アクセス：京都市営地下鉄「烏丸御池」徒歩約5分
・地図：Yahoo!地図
・TEL：075-212-7800
・営業時間：11:30～14:00(LO)、17:00～21:00(LO)
・定休日：日曜