暮らしの歳時記/正月の行事・楽しみ方(年末年始)

「謹賀新年」「迎春」とは? 賀詞の種類と意味、年賀状でやりがちなNG

「謹賀新年」「迎春」「謹んで新年のお慶びを申し上げます」「あけましておめでとうござます」「Happy New Year」など年賀状で使う賀詞の種類は多いのですが、意味を知らずに使っていると思わぬ失敗をしてしまうことも。目上の人に使ってはいけない賀詞や、賀詞の重複などのNGも見られます。「元旦」と「元日」の意味の違いや日付の重複も要チェック。年賀状の書き方のマナーを押さえておきましょう。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

年賀状の賀詞の種類・意味を知り、正しい使い方やマナーを押さえよう

賀詞とは、年賀状に限らず祝いのことばのことをいいます。年賀状の場合、「寿」のような1文字の賀詞、「迎春」のような2文字の賀詞、「謹賀新年」のような4文字の賀詞、「明けましておめでとうございます」「謹んで新年のお慶びを申し上げます」のような文章の賀詞があります。
謹んで新年のお慶びを申し上げます、謹賀新年、迎春、新春のお慶び申し上げます……年賀状の賀詞

「謹んで新年のお慶びを申し上げます」「謹賀新年」「迎春」……年賀状の賀詞それを選んで大丈夫?うっかりミスに気をつけましょう

このように年賀状の賀詞の種類はいくつかありますが、例えば、年賀状を目上の人へ送る際、賀詞は「謹賀新年」「迎春」「明けましておめでとうございます」の中でどれを選びますか?

形式にとらわれすぎた年賀状は味気ないものですが、賀詞の意味を正しく理解せずなんとなく選んでいると、思わぬ失敗をしてしまうことがあります。年賀状の基本マナー、賀詞の使い方をチェックしておきましょう。
<目次>

「謹賀新年」「謹んで新年のお慶びを申し上げます」……年賀状で使われる主な賀詞の種類と意味、読み方

まずは、年賀状で使われる賀詞の種類とそれぞれの意味を知っておきましょう。

1文字の賀詞
  • 寿 :めでたい
  • 福 :幸せ
  • 賀 :祝い
  • 春 :新年、年の初め
  • 禧 :よろこび
2文字の賀詞
  • 賀正(がしょう):正月を祝う
  • 賀春(がしゅん):新年を祝う
  • 頌春(しょうしゅん):新年をたたえる
  • 迎春(げいしゅん):新年を迎える
  • 慶春(けいしゅん):新年をよろこぶ
  • 寿春(じゅしゅん):新年を祝う
  • 初春(しょしゅん):新しい年、年の初め
  • 新春(しんしゅん):新しい年
  • 慶福(けいふく):おめでたいこと
「賀」が含まれる賀詞は相手に対してお祝いを伝える感じになり、「春」がつく賀詞は新年になりましたね、という感じになります。「春」が新年を表すのは、昔は立春のころに元日が巡ってきたことや、二十四節気は立春から始まるので、春が新しい年の象徴だったからです。

4文字の賀詞
  • 謹賀新年(きんがしんねん):謹んで新年をお祝い申し上げます
  • 謹賀新春(きんがしんしゅん):謹んで新しい年をお祝い申し上げます
  • 恭賀新年(きょうがしんねん):恭しく(うやうやしく/丁重に)新年をお祝い申し上げます
  • 恭賀新春(きょうがしんしゅん):恭しく新しい年をお祝い申し上げます
  • 敬頌新禧(けいしょうしんき) :恭しく新年のお慶びをおたたえ申し上げます
  • 慶賀光春(けいがこうしゅん):輝かしい新年のお慶びを申し上げます
  • 慶祥麗春(けいしょうれいしゅん):麗しい新年を大いにお慶び申し上げます
文章の賀詞
  • 明けましておめでとうございます
  • 謹んで新年のお慶びを申し上げます
  • 謹んで初春のお慶びを申し上げます
  • 謹んで新春のご祝詞を申し上げます
  • 新年おめでとうございます
  • 新春のお慶びを申し上げます
英語の場合
  • Happy New Year :新年おめでとう
では、どれを選べばよいのでしょう? 最低限のルールがあるので、好きなものというわけにはいきません。次に失敗しない賀詞の選び方など基本マナーを紹介します。
 

失敗しない年賀状賀詞の選び方・マナー

「謹んで新年のお慶びを申し上げます」は目上でも使える賀詞

「謹んで新年のお慶びを申し上げます」は目上の方にも使える賀詞

相手が目上の人や友人の場合など、賀詞の意味を考えた上で選びましょう。

相手が目上の場合の賀詞
  • 「謹賀新年」「恭賀新年」など4文字の賀詞
  • 謹んで新年のお慶びを申し上げます
  • 謹んで初春のお慶びを申し上げます
  • 謹んで新春のご祝詞を申し上げます 
相手が目下・友人の場合(目上の人に使ってはいけないもの)
  • 「寿」「福」など1文字の賀詞
  • 「賀正」「迎春」など2文字の賀詞
相手を選ばず使える賀詞
  • 明けましておめでとうございます
  • 新年おめでとうございます
  • 新春のお慶びを申し上げます
  • Happy New Year
  • 相手が目上の場合の賀詞もOKです
相手によって賀詞を変えられない場合には、相手を選ばず使える賀詞、または相手が目上の場合の賀詞を用いると無難です。
 

「迎春」はNG、「謹賀新年」「謹んで新年のお慶びを申し上げます」はOK! なぜ1文字、2文字を目上の人に使ってはいけないの?

もともと賀詞の基本は、「謹賀新年」「恭賀新年」「敬頌新禧」など4文字からなるもので、「謹(謹んで。相手を尊ぶ)」「恭(うやうやしく。礼儀正しく丁寧)」「敬(尊んで礼をつくす)」「頌(ほめたたえる)」といった相手の方への敬意と丁寧な気持ちを表す語が入ることで、礼儀にかなった挨拶の敬語となります。「謹んで新年のお慶びを申し上げます」など文章の賀詞も同様です。

ところが、漢字1文字の「寿」「福」「賀」などは「おめでたいことです」といっているにすぎません。漢字2文字でも「賀正(正月を祝います)」「迎春(新年を迎えました)」「新春(新しい年です)」といっているだけで、相手に対する敬意や丁寧さに欠けてしまいます。だから、漢字1文字や2文字のものは目上の方には使わないほうがよいとされています。
※参考文献:『明鏡国語辞典』『問題な日本語』(ともに、北原保雄編/大修館書店)
 

Happy New Yearに“A”はつけるのか?

年賀状で使われる「A Happy New Year」は「よいお年を」…というニュアンスなので、一般的にはクリスマスカードに添えて使います

ワンフレーズの年賀状では“A”をつけず、「Happy New Year」となります

「Happy New Year」に“A”をつけるかどうかは、文章の体裁か、ワンフレーズの挨拶かで変わってきます。年賀状の場合、ワンフレーズの挨拶を用いることが多いです。

■文章の体裁で述べる場合には冠詞の“a”が必要
  • I wish you a Merry Christmas and a Happy New Year.
    (クリスマスおめでとう、そしてよいお年をお迎えください)
英語圏では、新年のあいさつはクリスマスのあいさつと同時にすることが多いです。 有名なクリスマスキャロルもそうですね。

We wish you a Merry Christmas
We wish you a Merry Christmas
We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year

新年の挨拶の場合も、文章の一部なら“a”が付きます。
  • I wish you a happy new year.(新年おめでとうございます)
  • Wishing you a happy new year.(新年が良い年でありますように)
  • Best wishes for a happy new year.(新年のご多幸をお祈りします)
  • Have a happy new year.(よい新年を)
■ワンフレーズの挨拶の場合には冠詞の“a”が不要
  • Happy New Year(新年おめでとう)
ワンフレーズの新年の挨拶の場合には、冠詞の“a”は不要になるため、「Happy New Year」 となります。「Happy Birthday」や 「Happy Christmas」 と同じです。

日本で「A Happy New Year」が広がったのは、英語圏の「Merry Christmas and a Happy New Year」を、「Merry Christmas」と「a Happy New Year」という風に誤解し、それを年賀状に用いたからではないかと考えられています。
 

年賀状の賀詞を重複させてはいけません

よくありがちなのが、「迎春」「謹賀新年」などの短い賀詞と「明けましておめでとうございます」などの文章の賀詞を重複して使ってしまうこと。賀詞を使ったら、添え書き(「今年もよろしく」などの文)には賀詞を書かないように注意しましょう。
 

「新年明けましておめでとうございます」は間違い?

間違いではありませんが、「間違いだ」と思っている人が多いのでご注意ください

間違いではありませんが、「間違いだ」と思っている人が多いのでご注意ください

よく「新年」と「明けましておめでとうございます」が重複しているから間違いだといわれていますが、『問題な日本語』(北原保雄編/大修館書店)の中で正しいという見解を見つけました。以下にその内容を抜粋します。

「朝が明ける」「新年が明ける」は誤り、ほんと?
夜が明けて朝になり、旧年が明けて新年になるのだから、「朝明け」「新年明けましておめでとう」などの言い方はおかしいのではないかという疑問である。しかし、これは正しい表現で、「夜 [旧年] が明ける」は現象の変化に、「朝 [新年] が明ける」は変化の結果に注目していうもの。「湯 [風呂] がわく」「家が建つ」「穴があく」なども同じいい方。 

しかし、一般的に“「新年明けましておめでとうございます」は間違いです”という見解が浸透しているので、「明けましておめでとうございます」「新年おめでとうございます」を用いたほうが無難でしょう。
 

「元旦」「元日」の違い、「1月1日」日付の重複にも注意!

日付も意味の重複に注意

日付も意味の重複に注意。「元旦」は1月1日の朝のこと、 「元日」は1月1日のことなので、意味が重複しない「令和○年 元旦」が正解です

「元日」は1月1日のこと、「元旦」は旦という漢字が太陽が地平線から出てくる様子を表しているので、1月1日の朝という意味があります。年賀状は1月1日の朝に届くように出すのが礼儀なので、一般的には「元日」ではなく「元旦」を使います。

年号と組み合わせて「○○年 元旦」はよいのですが、「○○年1月1日 元旦」「○○年1月 元旦」「○○年正月 元旦」は日付の意味が重複するので間違いになります。うっかりミスをしないようご注意ください。

謹賀新年に関してよくある質問

Q. 謹賀新年の読み方や意味とは?

A. 謹賀新年は「きんがしんねん」と読みます。「謹んで新年をお祝い申し上げます」という意味の賀詞で、相手への敬意が含まれています。そのため、目上の方に対しても使うことができ、どのような相手に送る年賀状で使用しても問題がありません。 

Q. 謹賀新年以外の4文字の年賀状の賀詞は?

A. 上司や恩師、取引先など目上の方にも使える4文字の賀詞は下記の通りです。
・謹賀新年:謹んで新年をお祝いいたします
・謹賀新春:謹んで新春をお祝いいたします
・恭賀新年:恭しく(丁重に)新年をお祝いいたします
・恭賀新春:恭しく新春をお祝いいたします
・敬頌新禧(けいしょうしんき):恭しく新年の喜びをお讃え申し上げます
・慶賀光春(けいがこうしゅん):輝かしい新年のお慶びを申し上げます
・慶祥麗春(けいしょうれいしゅん):麗しい新年を大いにお慶び申し上げます
【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます