ブレンデッドの時代に登場した「山崎」
当時のチーフブレンダー、佐藤乾氏 |
その頃のウイスキー事情は、サントリーオールドが人気の頂点にあり、世界一の販売数量を記録していた。これは1970年代から80年代前半にかけて日本人がいかにウイスキーをよく飲んだか、という証しといえる。そしてウイスキーといえばブレンデッドウイスキーの時代でもあった。
シングルモルトはバーで飲むというよりは目にする、といった表現がふさわしく、グレンフィディック、マッカラン、グレンリヴェットがボトル棚に飾ってあったという言い方ができる。スコッチのブレンデッドでさえ高価で、よくわからないシングルモルトなんぞを口にする人は極めて稀だった。
わたしはちょうど25歳。酒のコピーを書きはじめた時。シングルモルト山崎の登場でシングルモルトの存在を知り、上司に「スコッチのシングルモルトがどんなものか、知っておきなさい」と銀座のバーに連れて行かれたのを覚えている。
日本が薫る秀逸な熟成感「山崎1984」
「山崎1984」/700ml/48度 |
あれから25年、「山崎」は日本でいちばん飲まれているシングルモルトであり、ヨーロッパを中心にアメリカ、台湾、中国などの国々で人気を得、世界的評価の高いブランドとなった。おそらく今後も世界品質のシングルモルトとしてより香味を高めていくことだろう。
では25周年記念として出された限定品を紹介しよう。まずひとつは、「山崎1984」。
シングルモルト山崎が誕生した1984年蒸溜の原酒のみで香味設計された稀少品。その主体はジャパニーズオーク、ミズナラ樽熟成原酒で、まさに日本が薫る風格ある一瓶だ。
グラスに注ぐと立ち上る香りが豊かな熟成感をたちまちに伝えてくる。伽羅、シナモン、バニラ、熟した果実香と香りはしっとりと華やか。味わいは甘酸のバランスがとてもよく、熟成感が心地よい。口中香は香木様の香りが甘みとともに感じられ、長くつづく余韻に品格がある。
全体的な感想を言えば、「山崎」だけが持ち得る個性に満ちている。そしてミズナラ樽原酒の特性が活かされながらも、しつこさがなく、品よくおさまっている点が素晴らしい。
ただし「山崎1984」は高い。100,000円。仕入れたバーを見つけて、一杯だけ試す。そういうウイスキーだ。お金がある人はネットのオンラインショップで買い求めなさい。
もう一品の限定品はシェリーカスク。これは9,000円で求めやすい価格。
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