提灯に手招きされちまった
先日、小金井公園に出かけた。その広大な敷地内に江戸東京たてもの園なるものがあって、そこを訪ねたのだ。小金井市という土地は、これまで私の人生においてはまったく縁のない地だったが、なかなかよい所だった。小金井公園には、行きはJR中央線武蔵小金井駅から向かい、帰りは公園から東小金井駅へ出た。どちらもバスを使ったが、5分程度の道のりで、非常に近い。
上/お店の入り口。この赤い提灯に手招きされてしまった。下/串揚げの盛り合わせ(580円)。 |
高いビルもない、ほんとうに何もない駅前で立ち止まり、「ここは東京なのか」と呆然としていたら、左目の端っこに朱色の提灯が入り込んだ。顔を向けると『なんでや』という居酒屋がガツンと両目に飛び込んできた。
思わず、「なんでや!」と口にしてしまった。こちらの胸中を察しているかのように、あまりにもタイミングよく提灯が「おいで、おいで」と手招きしていたからだ。
冴えわたる、ハイボール
ジャスト5時。開店と同時に「なんでや、なんでや」と僧侶のように呟きながら店に入り、カウンターに座った。生ビールを、と思いつつもメニューを見る。すると、なんでや、ウイスキーのハイボールが500円とあるではないか。ならば生ビールなんぞ私は飲まない。ハイボールである。オールドとジャックダニエルがあって、オールドのハイボールにした。
なんと、ステンレス製のマグカップに入って登場してきた。「なんでや」とまた呟きながら、樽に似せた、ずんぐりとしたマグカップを唇に乗せる。おっ、冴えた、冷えた感覚が口元に走る。
口中から喉元へと駆け抜ける味わいには、ハイボールの爽快さとともにほんのりとした甘さがあり、心地いい。キーン、と旨い。
いいぞ、いいぞ、である。この手招きされて入った店は、ザ・大衆酒場として、なかなかの出色。料理も安くて旨い。次のページではハイボールのあてに、何を食べたか伝える。(次ページへつづく >>)