最後は、鳥井信吾氏。
サントリー副社長であり、第三代マスターブレンダーである。初代の鳥井信治郎、二代目佐治敬三とつづくジャパニーズ・ウイスキーの正統を受け継ぐ。
鳥井信吾氏の印象は真摯で頑固。スコティッシュの頑固さに通じるものがあるが、しかしながらそこに進化というものが明確にあるから非常に興味深い。
いまサントリーは鳥井氏の指揮の下、ジャパニーズをより構築しようとする姿がさまざまに見受けられる。
清澄麦汁による雑味がなく伸びのある原酒のつくり込み、焙煎梅酒樽によるモルト原酒の後熟、世界で唯一のミズナラ樽での熟成と、東北・北海道でのミズナラ原生林の復活活動など、未来へ向けての試みが随所に見られるのだ。
またスコッチでは稀少となりつつあるエール酵母でのつくり込みもおこなっている。エール酵母はリンゴのようなフルーティな香味を引き出す要因となるのだが、それを日本のサントリーが守りつづけている。
伝統を継承し、さらに進化させる。ジャパニーズがスコッチを刺激する日はそんなに遠くないと私は思っている。
鳥井マスターブレンダーが、これからどんなウイスキーを世に送り出すのか、とても愉しみにしている。
さてこれが今年第一回目の記事になるが、これからはつくりに携わる人を紹介しながら、ウイスキーの世界を伝えていきたい。読みつづけてくだされば有り難い。
(写真・ジム・ビバレッジ/太田隆生)
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