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環境破壊は本当か?ゴルフ場開発への誤解(3ページ目)

「なぜゴルフは嫌われてしまうのか?」に引き続き、森林ジャーナリスト、田中淳夫さんの『ゴルフ場は自然がいっぱい』を紹介。ゴルフ場の持つ自然環境保全の機能について解説。農薬問題にも切り込みます。

児山 和弘

執筆者:児山 和弘

ゴルフガイド

豊かなゴルフ場の自然

ゴルフ場には、失われつつある豊かな自然環境が保全されているケースが多い
本書では、非常に興味深い事例を挙げています。それは、筑波大学大学院(※論文執筆当時)の栗田英治氏による「里山ランドスケープの保全に果たす、ゴルフ場の役割とその管理手法」という論文の調査結果。1947年から、1970年、1995年の3つの時期における土地利用の比率を調べたものです。

詳細は割愛しますが、それによると地域のゴルフ場開発が進んでいく中で、森林は15.7%から31.0%と比率を増やしていたのです。これは埼玉県比企丘陵の例で、より多くの例で検証すると傾向がはっきりすると思いますが、少なくともゴルフ場建設によって森林が減っているという認識は誤りだといえそうです。著者は、「ゴルフ場建設とともに、森林が増えたのだ!」と興奮を持って語っています。

山野に密接したゴルフ場では、森林と草地(ゴルフ場では芝地)が交じり合っていて、例えばウサギなどの小動物にとって、住みよい環境である可能性の指摘もあります。ゴルフ場には、様々な動物が暮らしています。ガイドが、かつて働いていたゴルフ場には、タヌキ、キツネ、サル、イノシシ、イタチ、キジにフクロウやタカなどの猛禽類、池や川には、魚やカモなど多くの水生生物が生息していました。カブトムシ、クワガタなどの昆虫も大変多く存在します。ゴルフ場が、多くの生物の生息する環境を保全しているということは、もっと認識されてもよいのではないでしょうか?

さらに、本書では、CO2削減という観点からのゴルフ場の可能性や、住民の心理的リラックスをもたらす森林療法としてのゴルフ場の可能性、適度な運動のできる健康法としての可能性などに言及されています。

現代のゴルフ場のもつ自然豊かな面に注目した『ゴルフ場は自然がいっぱい』
著者の田中氏は、森林ジャーナリストとして里山の崩壊を強く懸念されています。里山とは、人里から離れた険しい「奥山」に対する造語で、「田畑が広がる中にため池や小川がながれ、ところどころ雑木林が残る小さな山があり、人家や草地なども点在する」、まさに日本の原風景とも言える景観です。

里山の景観が時代の移り変わりとともに失われ荒廃していく中で、里山に似たゴルフ場の環境を地域社会の中で生かせないか?というのが本書の提案です。内容に興味をもたれた方は、ぜひ本書を読んでみてください。詳細がデータとともにわかりやすく語られています。

多くのゴルフ場では、過去に多くの農薬を使われていました。開発の仕方も乱暴で生態系を破壊するケースも決して少なくなかったと思います。そうした反省をもとに、現代のゴルフ場のもつ環境を活かし、新しい在り方を考える時期に来ているのではないでしょうか?

なぜゴルフは嫌われてしまうのか?」で、ゴルフ場が多くの誤解によって嫌われている現状を紹介しました。ゴルファーだけでなく、地域住民のゴルフ場環境への認知を高め、貴重な自然環境として相互利用し、保全していけるような状況を生み出すこと、それがゴルフへの偏見を払拭する有効な手段になるでしょう。



<関連リンク>
なぜゴルフは嫌われてしまうのか?
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