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THE WINDS OF GOD今井雅之インタビュー(3ページ目)

8/26~全編英語映画『THE WINDS OF GOD-KAMIKAZE-』(字幕付き)公開する今井雅之監督への直撃インタビュー。18年目を迎えるライフワークに込められた平和への願いと撮影秘話【写真掲載】。

執筆者:南 樹里

今井雅之:終演宣言した後、沖縄で休んでいたら『9・11』がありました。ある報道を見たらビルに突っ込む画に<カミカゼアタック>の見出しがついていたんで……ムッとして。それよりも腹だったのは、それに対して日本政府もマスコミも誰もクレームを言わなかったことなんです。そしたら俺、また出てきちゃった!「あの特攻隊員たちが可哀相だ、誰か代弁してやれよ」って。またイメージ悪くなるじゃん。民間機を乗っ取って、罪のない人たちを人質にして、モーニングコーヒーを飲んでいるサラリーマンに突っ込んで、何が神風だよ。

今井雅之:それで、『映画をつくろう! ヒットしてくれればいいけど、一人でもアメリカ人に判ってもらえればいいや』って考えました。でもアメリカで、「字幕スーパーのある映画は映画じゃない。エンターテインメントじゃないって」言われてしまった。「じゃあ、字幕スーパーなしで英語で挑戦しよう! 」って……ただその後が大変だったわけですけど(笑)。

寿司店のカウンターで「神風は民間人は狙わなかったんだよ」とキンタ(ウェイン・ドスター)がマイク(ニコラス・ペタス)に教えるセリフは、今井さんが込めたメッセージなのだろう。

今井雅之氏の著書など⇒

今井監督直撃インタビュー後記


■今井雅之監督インタビュー■

【映画に込めた思い】「一人でもアメリカ人に判ってもらえればいい」

『THE WINDS OF GOD』今井雅之監督に直撃インタビュー

グラウンドゼロで世界初ロケ

『THE WINDS OF GOD』今井雅之監督に直撃インタビュー

南:世界で初めて「グラウンドゼロ」で映画撮影をされたわけですよね?

今井雅之:グラウンドゼロをどうしてもいれたくて、半年ぐらい交渉して、何とか2時間撮影許可が下りました。あの9.11テロ以来、カメラがはいるのは初めて。独特なものがありましたね。僕は霊感とかないですけど、ものすごく感じました。

南:撮影中は?

今井雅之:「神風特攻隊の撮影です」なんて言ったら、「ゴー!ホーム」って言われてしまうところでした。本当は俯瞰(ふかん)で撮りたかったけど、どこのビルも貸してくれなかった。めちゃめちゃ撮影に協力的なアメリカなのに、それだけは叶いませんでした。

英語セリフについて「挑戦しよう!という心意気をかってくれ」

『THE WINDS OF GOD』今井雅之監督に直撃インタビュー

『THE WINDS OF GOD』今井雅之監督に直撃インタビュー

南:英文科ご卒業で、日常会話に不自由しない今井さんでも、本作のために英語の特訓をなさったとか?

今井雅之:英会話というより、英語で芝居をするのね。一番難しかったのは感情表現。住んだことがないから分かんないわけよ。

南:ネイティブならでは!って分かります。でも皆さんで特訓は大変ですよね。具体的には?

今井雅之:合宿もしたけど、特訓は僕とキンタ(松本 匠)だけ。あとは帰国子女だから。
例えば、「I told you get out of here.」を普通に言うと、「あなた出てゆきにゃさ~い」になっちゃうから、「俺は出て行けゆうとるだろ。おんどりゃ、こりゃー」とするには、どうするか。そこを先生に聞いた。「I told you get (間をあけて、ささやく)out of here.」って、間をあけるっていうのがワシらには分からへん。細かいこというと大変だったのはそういうとこ。

今井雅之:この前、飛行機で『ピンクパンサー』を観たら、(フレンチなまりをまねつつ)「マイネーム クゥル~ゾー」って、めちゃめちゃフレンチなまりやん! 一生懸命スティーブ・マーティンはん、やってはるやん。けど、あそこまでうちらなまってないよね。だからいいんじゃないのかな、って思ったんだけどね。もう一人ジャン・レノはんもエライなまった英語だったなぁ。だから、英語で挑戦しよう!っていう俺らの心意気をかってくれ。

南:(そっくりのモノマネに大笑いしながら)では英語学習でモチベーションを保つコツは?

今井雅之:(ちょっとスネ気味に)しゃーないやん。「字幕スーパーやだ」って言ったんだもん。(※一同爆笑)

<戦後>のないアメリカで『THE WINDS OF GOD』を公開する?!

今井雅之監督に直撃インタビュー

南:全米公開のお話しはどうなんでしょう?

今井雅之:アメリカでは、作品を観る前から――
(アメリカ側)「これ、主演は?」
(今井 監督)「あーでこーで(説明)
(アメリカ側)「だから、主演は?」
(今井 監督)「アジア人です」
(アメリカ側)「ダメダメ、そんなの」
                      ――だからね。

南:(ガッカリしつつ)なるほど、アジア人の主演映画ではダメなんですか。だからストーリー等を気にいると、必ず『リメイク権』を購入するんですね。

今井雅之:そうそう。ま、最終的にアメリカが買ってくれたら……買ってくれたらの話ね。僕らの声を吹替えにされても、それはかまわない。ただ逃げたくなかった。日本語と英語ではリズムがかわってくる。吹替えになるにしろ、オリジナルが英語の方がしっくりする、だから挑戦したわけ。僕の声をトム・クルーズはんやトム・ハンクスはんがやってくれたら最高ですね(笑)。

【生きるとは】戦時下、「愛」に「逝」きた若者たち

『THE WINDS OF GOD』今井雅之監督に直撃インタビュー

『THE WINDS OF GOD』今井雅之監督に直撃インタビュー

南:今後まだまだ続けていただきたいです。続けますよね?

今井雅之:今後、あと何年ってここでは宣言しませんけど、そういうおじいちゃんたちが、何で悪者扱いされているかが分からない。特攻隊ってイメージ悪いのよ。

南:そうなんですか?

今井雅之:イメージ悪いの、だからスポンサーがつかない。特攻作戦はよくないと思う。非人道的だと。でも、16歳なんて何にもわかってないじゃない。靖国神社にもあるけど、「おかあさん」「おかあさん」って手紙や遺書を書いて突っ込んで。未だに海の中で、『自分が悪者扱いされている』なんて思ってないっすよ。

南:最期は、「おかあさん!」なんですよね。

今井雅之:悲しいかな、お父ちゃんは出てけえへん。映画の中で寺川隆二(田中伸一)の遺書は「お父ちゃん」でしょ。あれは珍しかったから。あれ本物の遺書なんですよ。もちろん寺川って名前は映画用のフィクションですけど、遺書はノンフィクション。文章は、ほぼ9割を採用。これって著作権に触れる?(と心配顔)。一人ぐらい「お父さん」っていてもいいでしょ? それぐらいお母さんは偉大なの!!

南:戦後60年で、いろいろ触れる機会がありました。史実・事実を知って、自分で判断することも大切だと思います。

今井雅之:「子どもに見せられない!」って声もあるんだけど、見せられないんじゃなくて、教えようとしていないんじゃない。だから親を殺したりするような事件が起きているでしょ。ドッチのほうが危険なんだよ!って思うわけ。『親を守りたい』って、体を張って命がけで守ろうとしたわけじゃない。戦争は良くないし、爆弾をかかえて突っ込むなんて……。夢を追いかけて、力一杯、生きていくのが若者の特権なんです。日本はもしかしたら戦前に近づいているのかもしれないんです。今の平和を大切にしないと。押忍!!

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