輸入車/注目の輸入車試乗レポート

今、“頑張って買える”市販最速車、ZR1(2ページ目)

これがホンマにコルベット? と思うくらいに乗り心地がいいのに、フェラーリやランボルギーニより速いZR1。世界一流のスポーツカーと“ツルシ”で戦えることを証明した、歴史に残るコルベットです。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

600ps超であることを忘れそうなほどの乗りやすさ

コルベットZR1
最高出力647ps/最大トルク819Nmを発生するスーパーチャージャー付き6.2リッターV8エンジンを搭載。新開発のツインディスククラッチを採用した6MTを組み合わせる。0-96km/h加速は3.4秒、最高速度は330km/hとなる。

600ps超とはいえ、アメリカで乗ったときにはかなり気楽に走り出せたことを思い出す、も、ここは狭い日本。やっぱり647psと聞くと、ビビってしまう。やっぱりかなり身構えて恐る恐るエンジンを目覚めさせたのだが、掛かる瞬間の爆発音はともかく、すぐに落ち着き、アイドリングではかなり平穏。Z06に比べれば振動も少なく、おお、やっぱり(今までのアメリカンマッスルカーとは)違うじゃないか!

それでも慎重にアイドルスタートで走り出した。乗り心地が相当にいい。歴代最高レベルかも。加えて、とてつもなく扱い易い。2速で発進即6速クルーズでも街中はオーケー。過給器さえ作動させなければノーマルの6.2LV8並に燃費も良さそうだ。踏み込まない限り、オーバー600psであることを忘れそうに。

意を決して、アクセルペダルを踏み込む。グっと前方へと蹴り出される瞬間のフィーリングも、Z06はもちろんこれまでのコルベットとはまったくもって違うもの。どちらかといえば従来は、無理矢理エンジンに引っ張られるような豪快さがあったが、ZR1はクルマとエンジン、シャシーが一体となって加速してゆく。そう、まるで欧州のプレミアムスポーツカー級のように。

だから、暴力的で野蛮な加速とは無縁で、速度感を無くしてしまうのだろう。そういう意味ではコルベットらしさが減ったと言えなくもない。Z06を残したままZR1をリリースする背景には、新しいユーザー(たとえば独プレミアムブランドからの乗り換え)を獲得したいという意志と、そしてアメリカンスポーツカーの力を今こそ見せておきたいという意地があったのだと思う。

絶対的な速さは、もちろん世界一級レベル。クルマとしての完成度が高いため、Z06のように“いかにもアメリカン”な激しい個性として感じられないだけ。実際には常に、Z06の10%増し以上に速く走っている。

ブレーキは、効き、フィールともに最高レベル。これまたコルベットのブレーキ姿勢だとは思えない。よく止まるから、コーナーもファンだ。適度にロールをともなってくれるから、フツウのドライバーでも意外とコントロールしやすい。

ハイグリップのタイヤを信じて、出口が見えれば再びフルスロットル! 硬いボディがサスの動きを懐深く受け止めて、アメリカンに(=乱雑に)いなすことなく、キレイにコーナーを立ち上がっていく。実に気分のいいコーナリング性能で、今自分が600ps超のアメリカンモンスターに乗っていることがにわかに信じられなくなってくるほどだ。

アメリカの味に浸りたければ、まず間違いなくZ06を買うべきだ。Z06には、コルベットが半世紀に渡って受け継いで来たアメリカンマッスルの本質が、極限的に宿っている。これは、コルベットZ06でしか味わえないものだし、ひょっとすると自動車の歴史の中でも最後のものとなるかも知れない。

一方でZR1は、コルベットだって世界一流のスポーツカーと“ツルシ”で戦えることを証明した、これもまた歴史に残る1台である。コルベットファンは、さぞかし溜飲を下げたに違いない。ローカルキングがグローバルキングの座を射止めたのだから。

全く正確の異なる、けれども最高峰のパフォーマンスを誇る2台のコルベット。両方をガレーヂに収めたとしても、まったくもって矛盾はないのだった。

コルベットZR1
ブーストゲージの付いた専用メーターパネルや、ヘッドレストにロゴの入ったスポーツシートを採用。マグネティックライドコントロールのセレクターはシフト右下に備わる
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