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自爆テロリストの心の「闇」(2ページ目)

10日、ロンドンで21人の自爆目的のテロリストが身柄を拘束されました。自爆テロリストは何を想いながらテロに走るのでしょうか?

執筆者:鳥羽 賢

自爆テロ組織による洗脳、成功の報酬

花畑
自爆テロリストは死後にパラダイスにいけると信じ込まされている。
自爆テロを実行する若者たちの心には絶望感があり、それと同時に自爆テロ組織は若者を洗脳して自爆テロリストにしてしまいます。その洗脳方法の1つとして、「祖国のために死ぬことによって、死後にパラダイスに行くことができる」と信じ込ませるものがあります。

現世に絶望している若者が、「死後にはパラダイスが待っている」と言われれば、喜んで死んでいくのは火を見るよりも明らかです。それだけではなく、自爆テロの成功者を英雄に仕立て上げ、「君も早くそうなるんだぞ」とけしかけることもやっています。

そしてもう1つ、自爆テロには成功の報酬を与えている組織も多いのです。その報酬とは、例えば自爆テロリスト本人の死後に、家族の生活を保証してあげるというものがあります。自分が死ぬことによって、家族がその後で楽な生活ができるのです。

日本ではいくら家族のためとはいえ、死ぬことなどありえません。しかし貧しく将来の生活に希望が持てない国では、自分が犠牲になれば家族が楽になると思えば、何でもしてしまう者も出てくるでしょう。

自爆テロリストに近いもの

これらの行動は日本の常識では考えられないので、遠い世界の出来事だと思う方も多いでしょう。しかし先進国にも、これらに近いと思われる存在や現象があります。例えば、自爆テロ組織に若者が入り込んでしまう現象は、新興宗教に若者がどっぷり浸ってしまう様子によく似ています。

新興宗教に浸る若者は、どこかで自分自身を見失っており、自分の価値を認めてもらえる場所を探しています。そしてそういった心の隙間に入り込み、自分たちの集団に入らせているのです。これは、どこか自爆テロ組織に入る若者に通じるものがあります。実際に新興宗教に入る若者の中には、かなり高学歴の者もいます。同様に自爆テロ組織に入る者の中にも、学歴の高い者がいるのです。

また現在の日本では自殺数もかなり多いままとなっています。もちろん、ただの自殺と大勢を道連れにする自爆テロは全く違います。しかし、自分の命を絶つということは、自ら死を選ぶという点において、自爆テロリストと同じ行動を取っています。

日本も大戦中には神風特攻隊という、いわば自爆部隊を編成し、特攻させていました。これらは上官の命令で特攻していたのであり、自分から志願して自爆するテロリストとはかなり違う存在です。しかし神風特攻隊が日本に存在していたのは史実であり、自爆テロは遠い海の向こうの出来事で片付けることはできません。

アメリカでは自爆テロリストを描いた『パラダイスナウ』という映画が、すでに公開されています。この映画は2005年ベルリン国際映画祭で最優秀映画賞を受賞しましたが、一方でテロの犠牲者の遺族からは、強烈な批判を受けています。

この映画は、今年か来年に日本でも公開される予定があると言われています。公開されたあかつきには、世界のテロの現実を知るために、ちょっと見てみるのもいいかもしれません。


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