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パキスタン政治の基礎知識2007(3ページ目)

非常事態宣言、テロ、政治の混乱…パキスタンはいま大きな岐路に立っています。そもそもパキスタンという国はどういう国なのでしょう。なぜクーデターが多いのか、イスラム教徒の関係…わかりやすく説明します。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【インドから分離独立した「イスラム教徒国家」】
2ページ目 【インドの脅威・民族の対立・軍政の歴史】
3ページ目 【アメリカの「最前線基地国家」としての歴史】

政党政治への不信感と軍政との関係

パキスタンの経済
それぞれの時代の年平均GDP成長率。政党政治期は政治も経済も混乱し、クーデターを招く理由の1つとなった。(数値はIDE-JETROレポート「パキスタン──軍事クーデターの背景(内川秀二編)」および外務省サイトから。
パキスタンで軍政が多いもう1つの理由は、パキスタン政党政治の腐敗や混乱と、それに対する不満などにあったともいえるでしょう。

1971年の第3次印パ戦争の敗北で軍政が倒れると、文民のズルフィカール・ブット首相(ベーナズィール・ブット元首相の父)の政権が誕生します。

しかし、彼と人民党の政権は社会主義政策に失敗し、さらに腐敗を起こして国民からの信頼を失墜、騒乱が起きると戒厳令を発して自ら文民政権の首を絞めてしまいます。このようなことは結局ジア・ハクのクーデターを招き、彼は処刑されてしまいます。

ハクは1985年に正式に大統領となりますが、88年に飛行機事故で死去、文民政権が復活します。ここから99年まで、4回の総選挙が行われパキスタン人民党のベーナズィール・ブット首相とイスラム民主連合のシャリフ首相が政権を交代で担当します。

しかしここでも、経済政策の失敗や腐敗、行政の私物化などを展開し、中立的な存在である大統領の介入を何度も招き議会が解散され、全国の騒乱を引き起こすなど混乱を極めます。このようななかで1999年、ムシャラフ陸軍参謀総長(現在の大統領)によるクーデターを招いたのでした。

現在、亡命していたブット・シャリフ両元首相が帰国し、政治活動を再開させようとしていますが、過去の過ちを繰り返すようでは、再度のクーデターも懸念されることになるでしょう。

アメリカの最前線国家・パキスタン

アメリカの前衛国家として
パキスタンはアメリカに接近することで力を保ってきたが、同時にアメリカの最前線基地国家として利用されてきたところもある。
パキスタンがインドと対抗するためアメリカに接近していったことはお話ししましたが、その後の国際情勢によって、パキスタンはアメリカにとって重要な場所になっていきました。

その状況を作ったのが、1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻でした。

アメリカはソ連勢力の拡張を防ぐため、アフガニスタンの隣国であるパキスタンを最大限支援します。その結果、軍政のハク政権のもと、80年代のパキスタン経済成長率は平均で6.5%を記録します。

冷戦終了後、アメリカは1990年、パキスタンの核開発疑惑を名目にこれを中止します。それからしばらく、アメリカとパキスタンの仲は冷却していきます。特に、パキスタンがアル・カーイダをかくまうタリバンを支援していることは、アメリカの怒りを買うものでした。

しかし、そんななか起こった「9.11」で事態は一変します。

パキスタンは、再びアメリカの最前線基地国家となりました。ムシャラフ政権はタリバンへの支援をあっさりと翻し、アメリカの空爆に協力する姿勢に転じました。さらにタリバンたちを育てたとされるマドロサ(モスク附属の宗教学校)の管理強化も表明し、イスラム原理主義を抑える立場に変貌します。

こうしてアメリカの援助のもとムシャラフ政権は継続されていますが、国内では親米に転じた政権に対するイスラム原理主義勢力によるテロが頻発するようになり、治安は年を追うごとに悪化していきました。

また、こうしたことから民主化の要求が高まり、ブット元首相らが帰国するなか、なおの混乱を避けるため、ムシャラフ政権は非常事態宣言の発令に踏み切りました。

冷戦構造が終了した今、「アメリカの同盟国」であるためには民主化が求められます。しかし、民主化をしたらムシャラフ政権はもたないかもしれないし、さらなる混乱をもたらすかもしれない。

アメリカ、民主化、イスラム勢力、民族対立……さまざまな問題を抱えているムシャラフ政権は、2008年1月8日に下院選を行います。注目したいところです。

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◎関連インデックス 南アジアの政治

「パキスタン政治の基礎知識2007」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

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