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日本政治の「亥年現象」ってなんだ?(2ページ目)

来年2007年は亥年。ところで、日本政治には「亥年現象」とよばれるものがあるのを知っていますか? 来年の日本政治を占ううえで重要かもしれない「亥年現象」について解説します。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【「亥年」と参院選との奇妙な関係とは?】
2ページ目 【「亥年現象」のメカニズムとはどのようなものか?】
3ページ目 【2007年参院選の「亥年現象」はどのように現れる?】

【「亥年現象」のメカニズムとはどのようなものか?】

参院選と統一地方選挙が重なるのが「亥年」

選挙
来年の参院選、「亥年選挙」に何が起こる?(写真は前回の参院選でのもの)
亥年は、1947年に始まった「統一地方選挙」と参院選が同時に行われる年でもあります。

統一地方選挙は4年に1度、春に全国の自治体の多くで一斉に首長・議会選を行うものです。有権者の関心を高めたり、選挙経費の節減を行うための制度です。

そして1947年から3年に1度、夏に参院選が行われています。ですから……4年と3年の最小公倍数である「12年に1度の亥年」に、必ず「春に統一地方選、夏に参院選」が行われることになるのですね。

これが、「亥年現象」、つまり参院選投票率の低下につながるといわれています。なぜでしょうか。

亥年には地方議員たちが参院選運動を「さぼる」?

その理由は、このようなものだといわれています。

●統一地方選挙が終わり、一番の死活問題が片付いた地方議員たちは、参院選で国会議員の応援運動を「さぼって」しまう。

→その結果、参院選の選挙運動自体が盛り上がりに欠けるものとなってしまい、投票率が下がる。

●有権者のなかには、地方議員たちといった有力者の運動によって投票する人をきめる人たちが相当数いる。

→しかし、その地方議員たちが参院選での運動を「さぼって」いるため、こういう人たちは誰に投票していいかわからず、棄権する。

●有権者が選挙疲れしてしまい、真夏の参院選にいく気がしなくなり、棄権する人が増える。

……このようなことから、亥年の参院選は投票率が低下してしまう、というのです。

自民党は亥年不利、公明党・共産党は有利な構造?

さて、ではなぜこのように投票率が低下してしまうと、自民党に不利に働くというのでしょうか? 「有権者は寝ていてくれればいい」といった自民党の元総裁もいたのですが……。

「亥年現象」という言葉を生み出した元朝日新聞編集委員・石川真澄(2004年没)の解説によると、

●自民党は地方有力者頼みの集票システムに頼った政党だ。したがって地方有力者たちが「さぼる」ために起こる「亥年現象」の影響を最も受けやすい政党である。

●公明党・共産党といった組織化された集票システムを持つ政党は、比較的堅調に議席を獲得する。

……以上のことから、亥年の参院選で自民党は不調に終わりやすく、公明党・共産党のような組織政党の結果はよくなりやすい、というのが石川の考えです。

争点なし、政治的無関心は現象を増幅させる?

石川真澄
「亥年現象」は元朝日編集委員として知られるジャーナリスト・石川真澄の造語。石川の代表書が写真の『戦後政治史』。
さらに石川真澄は、1995年、つまり前の亥年の参院選での自民党の不調は、以下のような要因が複合して起こったと考えています。

●争点らしい争点がなく、政治不信も高まっていたため、有権者の棄権が増えた。

●本格野党として生まれた新進党が、元来公明党の集票組織だった創価学会からの強力な支援を受け、自民党の勢力を奪った。

石川は政治の空洞化(政治に興味がない、政治不信からくる政治的な無関心)と、創価学会票の行方が、亥年現象に重なり、自民党の不調を招いたと分析しています(『朝日新聞』1995年7月24日号)。

果たしてこの亥年現象、2007年の参院選にも当てはまるのでしょうか?次のページで考えていきます。
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