分譲マンションの「将来のお金の不安」を解消するためには?

分譲マンションの所有者が気になる「修繕積立金」と「大規模修繕工事費」は、金額の妥当性や将来必要になる金額が分かりにくいため、漠然とした不安を抱く人が多いもの。今回は、マンション管理の専門家である平賀さんに、これらの“お金の不安”を解消する方法について教えて頂きました。

提供:住宅金融支援機構

お話をうかがった方

平賀 功一

All About『賢いマンション暮らし』『マンション管理』ガイド:平賀 功一

ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、管理業務主任者などの資格をもつ、マンション事業のコンサルタント。e住まい探しドットコム主催。自宅マンションでは管理組合の理事長経験もあり、マンション管理の運営実務にも携わる。

所有マンションの修繕積立金、今後どうなる?

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分譲マンションでの安全かつ快適な暮らしと、資産価値の維持には、適切な維持修繕が重要です。マンション管理組合は共用部分の維持修繕のために、所有者から修繕積立金を徴収しますが、その方式は主に2種類あります。

■均等積立方式
長期修繕計画に基づき見積もられた大規模修繕工事の工事総額を、その計画年数で割って、毎月、均等に修繕積立金を積み立てる徴収方式。当初は修繕積立金の負担が大きくなるものの、途中での値上げがないため居住者の反発や未回収(滞納)を回避する効果が期待できる。

■段階増額積立方式
均等積立方式と同じように算出した金額を、竣工時は低く抑え、段階的に増額していく方式。5年を目途に増額するケースが多い。

平賀功一さん(※以下敬称略)「最近の新築マンションは、多くが段階増額積立方式を採用しています。一方で既存マンションは、国土交通省の調査(※1)によると均等積立方式と段階増額積立方式がほぼ同じ割合となっています」

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平成30年度マンション総合調査/国土交通省

所有マンションの修繕積立金の今後が気になる方は、まずは、どちらの方式なのか確認しましょう。

平賀「段階増額積立方式なら、値上げの額とその時期を把握して下さい。これらを把握していないと『修繕積立金が突然値上げされた』と感じてしまいます。ただ、均等積立方式でも、人件費や建築資材の高騰などで修繕工事費が上昇し、徴収額が値上げされる可能性はあります。

いずれの方式でも、管理組合は突然の値上げを防ぐために、定期的に修繕工事費の見積もりを取り直したり、必要に応じて修繕積立金会計の収支計画を再考したりすることが重要となります」


修繕積立金の妥当性に疑問点があるときには

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修繕積立金の金額は、長期修繕計画に基づき設定されるものです。しかし、過去には『管理費の約1割』や『管理費と合わせて2万円程度』など、明確な根拠もなく決められていたことがありました。

では、修繕積立金の妥当性に疑問点があるとき、どう解消すればよいのでしょう。

平賀「そのマンションの金銭事情を最もよく知っているのが管理会社です。まずは管理会社の担当者に相談することをおすすめします。

また、居住者の力を借りる方法もあります。私が中規模の分譲マンションに住んでいた時の体験ですが、所有者の中に弁護士や税理士、大手ゼネコン退職者などがいて、皆さんに力を借りながら管理組合で解決しました。もっと大規模のマンションなら、このような専門家が住んでいるケースはより高くなるでしょう。

所有者の専門家から協力が得られず、管理組合だけで解決するのが難しい場合は、マンション管理士や管理コンサルタントに報酬を支払って相談するとよいと思います」


管理組合のお金の悩み解消をサポートする「マンションライフサイクルシミュレーション」

このように、管理組合が自分たちで修繕積立金の疑問点を解消するのは難しい面がありますが、公的機関である住宅金融支援機構では『マンションライフサイクルシミュレーション』によって組合が抱えるお金の不安や課題の解決をサポートしています。

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マンションライフシミュレーションは、建物・工事・資金に関する情報を入力すると、今後必要となる大規模修繕工事の概算費用や、修繕積立金の収支状況とキャッシュフローの試算などができます。

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マンションライフシミュレーションの入力画面のイメージ

平賀「マンションライフシミュレーションでは、今後40年間に必要な修繕積立金の負担額を試算できます。試算結果を見ながら現状の修繕積立金の妥当性をチェックしたり、修繕積立金を見直す場合の検討資料としても活用できます。

試算の結果、大規模修繕工事費が足りないと分かった場合、ローン利用を含めた収支計画を立てることも可能です。さらに、修繕積立金を値上げすべきかの判断材料も提示されるなど、実によく考えられていて、管理組合にとって頼りになるツールと言えるでしょう」

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今後40年間のキャッシュフロー表のイメージ

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収支計画グラフのイメージ


また、マンションライフサイクルシミュレーションは、お住まいのマンションと規模や築年数が同じマンションの大規模修繕工事費の平均値も把握できます。

平賀「大規模修繕工事費は、建物の形状やグレード、劣化の程度、工事の内容や範囲で大きく変わることや、管理組合にとって内部情報であるため、マンション同士で情報共有しようという発想はありませんでした。

それが、住宅金融支援機構が取り扱う『マンション共用部分リフォーム融資』(後述)の工事費データから算出された補正・平均的な金額を、インターネットで見られるのは、とても画期的だと思います」

修繕積立金不足の可能性があれば、リフォーム融資や積立て債の提案も

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今後の修繕計画によっては、修繕積立金が不足する可能性が高い管理組合もあるでしょう。実際、国土交通省の調査(※1)によると、34.8%のマンションが修繕計画に対して修繕積立金が不足していることが明らかになっています。

平賀「適時かつ適切な大規模修繕を実施するには、不足分は融資を受けるか運用で増やすしか方法はありません。しかし、管理組合の多くは“任意団体”という位置付けのため、融資に取り組む銀行は多くありません。

一方、住宅金融支援機構は【マンションすまい・る債】や『マンション共用部リフォーム融資』などの金融商品を用意しています。積立金不足による修繕工事の先延ばしや工事範囲の縮小を避けるためにも、上手に活用して下さい」


【マンションすまい・る債】

【マンションすまい・る債】は、住宅金融支援機構が国の認可を受けて、マンション管理組合向けに発行している利付10年債です。定期的な利息の支払だけでなく、「マンション共用部分リフォーム融資」を利用するときに金利が年0.2%引下げられるなどの特典があります。

【マンションすまい・る債】の詳細はコチラ >>


マンション共用部リフォーム融資

住宅金融支援機構の「マンション共用部リフォーム融資」は、管理組合が実施する共用部分のリフォーム工事や、耐震改修などの工事費用を対象とする融資です。担保が不要なうえ、全期間固定金利のため返済計画が立てやすいメリットがあります。

「マンション共用部分リフォーム融資」の詳細はコチラ >>


平賀「管理組合が修繕工事のために融資を申し込んだり、修繕積立金で債券を購入したりする前には、総会での普通決議が必要です。一般的に、お金に関する事項は所有者の合意形成に時間がかかるケースが多いので、利用を検討している組合は早めに準備を始めた方がよいかもしれません」


修繕積立金会計の定期的な見直しで「大規模修繕クライシス」を防ぐ

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前述した国土交通省の調査によると、分譲マンション居住者の62.8%が「永住するつもり」と回答。マンションを“終の棲家”と考えている人が多いことが窺えます。

しかし、築年数が経つにつれて「建物の老朽化」と「居住者の高齢化」という“2つの老い”は否応なく進みます。その結果、修繕工事費が計画以上に高くなったり、修繕積立金の滞納が生じたりして、大規模修繕の資金不足に陥るかもしれません。

平賀「資金不足のために適時・適切な大規模修繕工事ができない『大規模修繕クライシス』に備えるためには、管理組合が修繕積立金会計を定期的に見直すことが大事です。

国土交通省が定めた長期修繕計画作成ガイドラインでは、5年を目途に長期修繕計画の見直しを推奨していますが、マンションライフサイクルシミュレーションを使えば、いつでも簡単に計画の見直しができます。たとえば、少なくとも年に一度の定期総会のタイミングに合わせて見直しをすると良いでしょう。

修繕積立金不足などで赤字になる可能性があれば、『マンション共用部リフォーム融資』や【マンションすまい・る債】を適切に活用し、マンションの安全・安心・快適な暮らしと、価値を維持して欲しいと思います」

「マンションライフサイクルシミュレーション」を試してみる >>