マンションの修繕積立金が値上がりする理由は? 不足に備える方法も紹介
マンションの修繕工事に用いる修繕積立金と、その基になる長期修繕計画は、管理組合に任せきりにせず、住民ひとりひとりが当事者意識を持ちたいもの。今回は、修繕積立金の重要性やマンションの長期修繕計画をサポートするサービスについて、マンション管理の専門家である平賀さんにお聞きしました。
提供:住宅金融支援機構
お話をうかがった方
All About『賢いマンション暮らし』『マンション管理』ガイド:平賀 功一
ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、管理業務主任者などの資格をもつ、マンション事業のコンサルタント。e住まい探しドットコム主催。自宅マンションでは管理組合の理事長経験もあり、マンション管理の運営実務にも携わる。
修繕積立金の役割は? 値上がりすることがあるのはなぜ?
●修繕積立金や大規模修繕工事の役割
マンションの価値や住み心地を維持する重要なポイントは、主に共用部分の修繕工事を長期的な視点で計画した長期修繕計画です。この計画の中心となるのが、大規模修繕工事です。
平賀さん(※以下敬称略)「大規模修繕工事とは、おおむね10年~15年周期で実施する建物や設備の全体的な修繕工事をいいます。大規模修繕工事には、劣化や不具合を新築時と同等レベルまで回復させるとともに、性能や機能をアップグレードさせる改良工事も含まれます。そのため、単なる部資材の補修や交換で終わらないよう、居住者の意見や希望を反映することが大切です。
ただ、大規模修繕工事は、1回の工事に数千万円から億単位の費用がかかるため、計画通り行うためには資金的な裏付けが欠かせません。そのうえ、工事費の支払いは基本的に現金のため、管理組合は所有者から修繕積立金を徴収し、積み立てておく必要があります」
●修繕積立金が値上がりする理由
修繕積立金は、長期修繕計画をベースに徴収額を設定しています。しかし最近、“住んでいるマンションの修繕積立金が突然値上がりした”という話や、“管理組合の役員になったら修繕積立金が不足していることが分かった”という話を見聞きする機会が増えています。
平賀「修繕積立金が値上がりする理由は、そもそも長期修繕計画の作成時点で工事費に対する見通しが甘かった、徴収金額を段階的に値上げする方式(段階増額積立方式)を採用している、計画作成時より建設工事費が上昇したため修繕工事費も高騰した、などが考えられます。
ここ最近の値上がりは、建設工事費の上昇による部分が大きいでしょう。特にこの5年間の上昇幅は大きく、国土交通省の「建設工事費デフレーター(2015年基準)」によると建設工事費は約16%もアップしています。十数年前に修繕計画を立てた際には、建設工事費がここまで上がるとは誰も予想しなかったはずです」
修繕積立金や修繕計画をサポートしてくれる、住宅金融支援機構の商品・サービス
今後もマンションに安心かつ快適に住み続けるためには、長期修繕計画に基づく大規模修繕工事の実施と、常日頃の保守点検がとても大切です。
平賀「マンションの住み心地は、勝手に備わっている訳ではありません。劣化や不具合が生じないよう、管理組合による地道な努力が、快適な住み心地を作り出しているのです。所有者は管理会社や組合理事に任せきりにせず、ひとりの住民として長期修繕計画や修繕積立金に意識を向け、考えていきたいですね」
長期修繕計画の見直しや修繕積立金の運用などといった、管理組合の活動をサポートしてくれる商品・サービスが住宅金融支援機構には用意されています。公的金融機関である住宅金融支援機構は、【フラット35】などさまざまな金融サービスをラインナップしていますが、ここではマンション管理に関する商品・サービスをご紹介しましょう。
■【マンションすまい・る債】
国の認可を受けて住宅金融支援機構が発行する、利付きの10年債券です。1口50万円から購入でき、最大10回継続購入して積立することが可能。手数料無料で中途換金ができるため、長期修繕計画に合わせた運用が可能です。
平賀「修繕積立金の運用を考えるとき、資産の安全性、使いたい時に現金に換えられる換金性、少しでも増やせる収益性が重要です。これらの観点から、【マンションすまい・る債】は選択肢のひとつとなる商品だと思います」
【マンションすまい・る債】の詳細はコチラ >>
マンションの管理組合が実施する共用部分のリフォーム工事や、耐震改修、浸水対策、機械式駐車場解体などの工事費用を対象とする融資です。また、工事を実施する際に、組合員(区分所有者)が負担する一時金への融資も可能です。
平賀「国土交通省の『平成30年度マンション総合調査』によると、大規模修繕工事費を修繕積立金だけで行った割合は72.3%でした。つまり、修繕積立金だけでは足りず、不足分の融資を受けるケースは決して珍しくないのです。
しかし、マンションの管理組合の多くが“任意団体”という位置付けであり、管理組合向けの融資に取り組む銀行は多くはありません。一方、住宅金融支援機構やノンバンクでは、管理組合向けの融資商品が用意されていますので、必要に応じてこの融資を上手に活用すると良いと思います」
「マンション共用部分リフォーム融資」の詳細はコチラ >>
マンションの修繕工事の費用やタイミングを、ウェブサイト上でシミュレーションできるサービスです。お住まいのマンションと規模や築年数が同じマンションの、平均的な大規模修繕工事費の把握や、今後40年間の修繕積立金の過不足の試算、ローン利用を前提とした資金計画の比較などが無料で行えます。
平賀「これまで、大規模修繕工事の詳細は各マンション内に保管され、外部に提供されることはありませんでした。こうしたデータは管理組合にとっての内部情報であり、マンション同士で情報共有しようという発想がなかったからです。
それが、住宅金融支援機構が取り扱う『マンション共用部分リフォーム融資』の工事費データから算出された補正・平均的な金額を、インターネットで見ることができるのはとても画期的なことです。管理組合にとって、自分のマンションの修繕工事費の妥当性が判断できる、頼りになるツールと言えるでしょう」
「マンションライフサイクルシミュレーション」の詳細はコチラ >>
【マンションすまい・る債】の魅力や利点とは?
2000年度からスタートした【マンションすまい・る債】は、応募実績2万1600組合(2022年4月現在)と、多くのマンション管理組合から選ばれています。
平賀「使途が厳格に規定されている修繕積立金は、運用するとなると理事会や総会で協議し、所有者から合意を得る必要があります。
公的金融機関である住宅金融支援機構の債券の購入は、安全性という観点から所有者の理解を得やすいでしょう。さらに、元本は住宅金融支援機構の財産から優先的に弁済される仕組みになっているなど、管理組合の預託財産を保全する一定措置が講じられている安心感もあります。
気になる利率は、普通預金と比較すると相対的に高くなっています。例えば、2022年度募集の10年満期時の年平均利率(税引前)は0.208%なので、100口・5000万円購入した場合、満期時までには合計104万円(税引前)の利息が受け取れます」
【マンションすまい・る債】のもう一つの魅力は、「マンション共用部分リフォーム融資」を利用する際に、融資金利が年0.2%引き下げられる点です。さらに、保証料が2割程度割り引かれる特典もあります。
平賀「修繕積立金の不足に備え、【マンションすまい・る債】を計画的に購入し、資金を増やすのは賢い方法です。それでも不足しそうなときは『マンション共用部分リフォーム融資』を利用すれば、金利引き下げや保証料割引の特典が受けられるので、資金不足を理由にやみくもに工事を先延ばしたり、修繕範囲を減らしたりするなどの対応をしなくて済むでしょう」
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【マンションすまい・る債】を上手に活用して、将来も安心なマンションライフを
2022年4月には、管理計画が一定の基準を満たすマンションを地方公共団体が認定する「マンション管理計画認定制度」が施行。国や地方自治体は、マンション管理の適正化を推進しています。その背景として、「建物の老朽化」と「居住者の高齢化」が考えられると平賀さんはお話されます。
平賀「国土交通省の試算によると、2020年末時点で築40年を超えたマンションは総戸数の約15%で、全国に103万戸あります。それが2030年には約2.2倍の232万戸、2040年には約3.9倍の404万戸と、老朽化したマンションが大きく増加する見込みです。
同時に居住者の高齢化も進み、世帯主の年齢が60歳以上の割合が、2020年度は39.4%、2025年度は50.0%、2030年度は49.2%。つまり数年後には2世帯のうち1世帯が60歳以上となるのです。
この2つの“老い”により、管理組合の役員のなり手が不足して機能不全に陥ったり、修繕積立金の滞納が生じて長期修繕計画どおりに工事を実施するのが難しくなる、などの可能性があります。
マンションの所有者なら、管理組合の運営状況と、長期修繕計画の内容や修繕積立金の現状を知ることは、資産を守るために重要なことです。状況に応じ【マンションすまい・る債】など住宅金融支援機構の商品・サービスの利用を検討・提案し、将来も快適で安心できるマンションライフを手に入れてください」
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