一級建築士に聞いた!住宅取得後の住まいの「困った」とは?

念願のマイホーム! でも実際に住み始めると、不具合など思いがけない問題に見舞われることも。建てた業者さんが対応してくれれば良いですが、修理費用などをめぐってトラブルに発展したり、そもそも対応してくれなかったりと。こうした住宅に起こりうるトラブルや、それに対する適切な対応方法について住まいのプロに教えてもらいました。

提供:公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター

お話をうかがった方

井上 恵子

住まいの性能・安全 ガイド:井上 恵子

マンション設計に携わった経験を数多く持つ一級建築士が、住まいの性能を解説。性能評価申請に関わったマンションは20棟以上。設計事務所設立後は子育ての経験を生かし保育園の設計なども行う。その他に戸建て・マンション購入セミナー講師、新聞へのコラム連載など。

CASE1:断熱性能を高めた省エネ住宅のはずなのに、寒いし電気代がかかるのは納得できない

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断熱性能が高いはずなのに、家が寒いのはなぜでしょうか。例えば、太陽光発電を備えた断熱等性能等級4の省エネ住宅であっても「部屋が寒く感じる」「電気代が思ったより高い」という問題が生じるケース。原因として何が考えられるのか、どのように対策すればいいのかを一級建築士の井上恵子さんに伺いました。

井上さん(以下敬称略)「住み心地を左右する室内の温度、音や光の感じ方には個人差があります。そのため断熱性能が高い住宅であっても、寒がりの方は寒さを感じるかもしれません。寒さ対策として、まずは住まい方を見直してみてはいかがでしょうか。

暖められた空気は部屋の上部に昇ってしまうため、足元は冷えてしまいがちです。サーキュレーターなどで、空気を攪拌することも効果的です。また、換気扇を回した時にできる風の通り道は寒さを感じやすいので、そこを避けて、座る位置を考えることも大切です」

寒さなどの悩みが解消されると同時に、無駄な消費電力を抑えることができれば、省エネにもつながります。

住まい方を見直しても難しい場合は?

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何をしても寒さが改善されないなら、断熱工事の不具合が原因の場合もあるそうです。

井上「断熱性能の高い住宅を建てるには、屋根・壁・床下などに断熱材を隙間なく詰める必要があります。そのどこかに切れ目や隙間があると、そこから外の冷気が入ってきてしまいます。外気によって部屋が寒くなるだけでなく、躯体内の結露も起こりやすくなるため、断熱材や柱などの構造の傷みの原因にもなります。疑問に感じたら、まずは売主や請負業者に相談してみてください」

住宅専門の相談窓口である「住まいるダイヤル」を運営する公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターによると、戸建住宅では「ひび割れ」の相談が最も多く、次いで「雨漏り」、今回のような「性能不足」が多いそうです。

CASE2:家を建ててまだ1年なのに、雨漏りが……修理費用も心配です

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家づくりにおいて、雨漏りはあってはならない重大な瑕疵(欠陥)と話す井上さん。ただし、湿気や結露による内装の染みが、雨漏りと間違えられるケースもあるそうです。

井上「2003年以降に建てられたすべての住宅で24時間換気システムの導入が義務づけられていますが、『音が気になる』『電気代がかかる』と、運転を止めてしまう方がいます。今の住宅は気密・断熱性能が高く、上手く換気をしないと結露が発生する原因となるので注意が必要です。

また、北向きの部屋には結露が発生しやすく、北側の外壁に面してタンスなどの家具をぴったり壁に付けないこともポイント。タンスの裏の隙間に風が通らなくなり、結露によるカビが発生しやすくなります。

壁や天井の染みが大きく広がる場合や、明らかに水が落ちてくる場合は雨漏りの可能性が高いでしょう。そうなったら早めに売主や請負業者へ連絡をして、確認してもらうことが重要です。建物内部へ水が浸入すると、構造体を傷める大きな原因にもなってしまうからです」

気になる修繕費などはどうなる?

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井上「新築住宅の場合は、住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づき、引き渡しの日から10年間にわたって、売主や請負業者が瑕疵担保責任を負っています。雨漏りの発生や、住宅を支える構造耐力上主要な部分(基礎・柱・外壁・屋根など)の欠陥が対象となります。この期間内であれば、もし上記の箇所に欠陥が生じても、原則、費用負担なく修繕等を求めることができます。また、たとえ売買契約書に2年間のみの保証と記載があったとしても、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分は、10年間の瑕疵担保責任を負うことになります」

さらに、2009年からは新築住宅を供給する事業者には、住宅瑕疵担保責任保険(かし保険)への加入または保証金の供託を義務付ける「住宅瑕疵担保履行法」が施行されました。もし事業者が倒産した場合でも、かし保険に加入した新築住宅で、瑕疵担保責任の範囲に該当する欠陥であれば、住宅取得者は修補費用などに充てる保険金を受け取れるようになりました。

しかし、もし事業者が対応してくれないなどのトラブルになった場合には、どうすればいいのでしょうか。

井上「私の経験では事業者の方はスムーズに対応してくださいましたが、どうしても話し合いに応じてくれない場合もあるとは聞きます。暮らしに直結する住まいの悩みは、長引くほど大きなストレスになりかねません。その場合は住宅トラブルの相談に対応してくれる、第三者機関の利用をおすすめします」

年間3万件以上の相談を受ける、住宅専門の相談窓口「住まいるダイヤル」なら電話で一級建築士の相談員から専門的なアドバイスを受けられます。国土交通省が指定する公的な団体が運営している第三者機関なので安心です。

どうしても困ったときに心強い「住まいるダイヤル」とは?

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公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターでは、「住宅品確法」「住宅瑕疵担保履行法」に基づいて、消費者の利益保護や住宅紛争の迅速・適切な解決を図るために、住宅相談、紛争処理の支援などの業務を幅広く行っています。その相談窓口である「住まいるダイヤル」は、住宅取得者にとって多くのメリットがあると井上さんは話します。

井上「施工業者とトラブルの対応について話し合うには、ある程度の専門知識が必要になります。一級建築士の資格を持つ住まいのプロへ無料で相談できるのは心強いと思います」

さらに、『建設住宅性能評価』や『住宅瑕疵担保責任保険』を受けている新築住宅であれば、弁護士・建築士のペアによる対面相談(専門家相談)を無料で利用でき、資料を見ながら、法的・技術的観点からアドバイスが受けられます。それでも解決が難しい場合には、全国の住宅紛争審査会による裁判によらない紛争解決手続を利用することができます。これは、弁護士・建築士などの専門家が間に入って、解決に向けた話し合いを行う手続で、費用は申請手数料の1万円のみです。

その他、住まいるダイヤル」のホームページでは、様々な相談事例が検索でき、その回答も紹介されています。

井上「先日、シックハウスにお困りのお客様からのお問い合わせで、屋内の空気濃度を調査する会社を紹介するために、こちらのホームページをご案内しました。その後、ご自身のお悩みに似たシックハウスの相談事例もご覧になったようです」

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このように住まいに関する悩みを、どこに相談すればよいのか分からない方は多いのではないでしょうか。

井上「『住まいるダイヤル』のホームページでは、重大な瑕疵にあたる問題だけではなく、においや音の問題、近隣の建物から受ける影響など、身近な相談事例も多く探すことができます。ご自身に似たケースが見つかればお悩みの解消に近づけますし、もっと詳しく知りたい場合はどなたでも電話での相談が可能です。そうやって多くの方が上手に活用できるといいですね」

まずは、ホームページを確認してみましょう。

>>住まいの「困った」が解決できない時は、住まいるダイヤルへ

※住宅紛争審査会とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(住宅品確法)に基づき弁護士会が国土交通大臣から指定住宅紛争処理機関として指定を受け設置した、民間型の裁判外紛争処理機関。