人生100年時代。住環境を見直して、シニアライフを快適に暮らす方法

定年退職後も生き生きと暮らすためには、60歳頃から先々の住環境について検討することが大切。そこで今回は、シニア世代の住まいやお金に関する悩みごとと、解決のための選択肢を、All About『最新住宅キーワード』ガイドの山本久美子さんに教えていただきました。

提供:住宅金融支援機構

お話をうかがった方

山本 久美子

All About『最新住宅キーワード』ガイド:山本 久美子

AFP・宅地建物取引士・マンション管理士などの資格を持つ、住宅ジャーナリスト。リクルートで「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任後、2004年に独立。住宅の売買やリフォーム、住宅ローンなどの幅広い取材経験を活かし、住宅メディアの編集・執筆やセミナーなどの講演活動を行っている。

快適で健康的なシニアライフを送るための住環境とは?

シニアライフ

「人生100年時代」の今、“シニアライフ”は一層長くなる傾向にあります。快適で健康的なシニアライフを送るためには、20年、30年先の住環境について考えることが重要です。

山本久美子さん(※以下敬称略)「60代は、今後のライフスタイルの変化を見据え、住環境を見直すのに最適なタイミングです。例えば、定年退職すると通勤がなくなりますし、高齢になり運転免許を返納したりすると、活動範囲が大きく変わります。病院やスーパーなど、生活に必要な施設が徒歩圏内にあると便利なので、必要に応じて住替えを検討するという選択肢もあります。

また、定年後は在宅時間が長くなるため、快適な住環境を整えるためにリフォームを検討されることも多いと思います。例えば、キッチン、お風呂、トイレなどの水回りのリフォームや、子供の独立といった家族の変化による間取りの変更などがあげられます。そのほか、窓ガラスなどを省エネ性能の高いものに交換することや、耐震性を高める工事も検討されるかもしれません。大掛かりなリフォームでは仮住まいへの引越しが必要になる場合もありますし、在宅のままリフォームを行う場合でも、工事の音や職人さんの出入りなどで疲れが溜まりやすいので、夫婦共に元気で健康なうちに行いたいですね」

「リバースモーゲージ」を活用するという選択肢

リバースモーゲージ

定年後は主に年金収入で生活するという場合、預貯金はできるだけ生活資金として手元に残したいと考えるのが一般的でしょう。先々を考えて住環境を整えたいものの、出費がかさんで生活資金が減るのは不安だし……と悩む方もいるかもしれません。

山本「住環境を整えるために住替えや自宅のリフォームをする場合、まとまった資金が必要ですが、ローンを借りたくてもシニア世代は借入れが難しいケースが多いです。

一方、シニア世代は持ち家で暮らす方が多く、『資産の大半が自宅』という方もいます。このような方は、自宅を担保にしてお金を借りる『リバースモーゲージ』を活用し、まとまった資金を確保する方法があります」

リバースモーゲージとは、自宅の家や土地を担保に金融機関からお金を借りる融資制度のことです。自宅を所有し続けることができ、契約者が亡くなられたときに残った借入金は、相続人の方が一括で返済するか、担保物件を売却して返済します。

リバースモーゲージ

左は一般的なローンの返済イメージです。毎月の返済額は一定ですが、利息に加えて元金の返済が必要です。右はリバースモーゲージの返済イメージです。返済期間中は利息のみの支払となります。

※変動金利の場合は、金利が見直されると毎月の返済額または支払額が変わります。

リバースモーゲージの最大の特徴は、毎月の返済負担が一般的なローンと比べて軽いことです。一般的なローンは元金と利息を合わせた金額を毎月返済しますが、リバースモーゲージは毎月の支払が利息分のみ。したがって、年金収入のみのシニア世代でも、無理のない返済計画を立てやすくなります。

山本「自宅を売却して資金をつくる方法もありますが、その場合は自宅を手放すことになります。一方、リバースモーゲージは、愛着のある自宅を手放したくないけれど、まとまった資金をつくりたいときに検討したい方法といえるでしょう」

公的機関と金融機関が提携している【リ・バース60】

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現在、多くの金融機関でリバースモーゲージを取り扱っています。ただし、資金の使いみちや担保の対象となる物件の条件は、金融機関ごとに大きく異なります。

山本「金融機関独自のリバースモーゲージは、資金の使いみちが生活資金や旅行費用、住宅関連費用など比較的自由。しかし、担保の対象となる物件は、都市圏にある戸建住宅など、担保価値が高い住宅に限られる場合が多いのが現状です。

もし、リバースモーゲージで借りたお金を、建替えや住替え、リフォーム、住宅ローンの借換えなど住宅関連資金として使うなら、住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)と提携している金融機関が提供する、60歳からの住宅ローン【リ・バース60】を活用するという方法があります。【リ・バース60】は、資金の使いみちこそ住宅関連資金に限定されますが、都市圏だけでなく全国を対象としています」

なお、【リ・バース60】の融資限度額は、(1)8,000万円(2)所要金額100%(3)担保評価額の50%または60%(※)のうちの最も低い金額となります。

※契約者の年齢が満50歳以上満60歳未満の場合は「担保評価額の30%」となります。担保とする住宅(セカンドハウスを含みます)が長期優良住宅の場合で、契約者の年齢が満60歳以上のときは「担保評価額の55%または65%」となります。

相続人が残った債務を返済する必要のない「ノンリコース型」が人気

借入金の返済は、契約者が亡くなられたときに相続人の方が一括返済する方法と、担保物件を売却して一括返済する方法があります。

山本「【リ・バース60】では、ノンリコース型とリコース型のいずれかの商品タイプを選択できます。契約者が亡くなられた後、担保物件を売却して一括返済したものの債務が残ってしまった場合、リコース型は相続人の方が債務を返済する必要がありますが、ノンリコース型は返済が不要です。【リ・バース60】をお申込みされた方の多くがノンリコース型を選択しています」

ノンリコース型

【リ・バース60】では、約99%の方がノンリコース型を選択しています。ノンリコース型およびリコース型の取扱いは金融機関ごとに異なります。
※2020年度の申込件数に占める割合

ちなみに、相続人の方が担保物件にいずれは住みたいと考えている場合、借入金を一括返済すれば担保物件を売却する必要はありません。

山本「【リ・バース60】などリバースモーゲージの利用は相続に関わることなので、利用する前にはお子さんなど相続人の方とよく相談して、商品内容を理解してもらうことがとても大切です」

「ノンリコース型」について詳しく知りたい >>

【リ・バース60】で住環境を整え、充実したシニアライフを

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充実したシニアライフを送る住環境を手に入れる方法として、リバースモーゲージを活用する方法が、近年注目されています。

山本「シニア世代の場合、転勤や子供の進学などがないため、住まいについてじっくり検討することができます。しかし、あまり先延ばしにすると気力や体力が落ちてしまい、引越しや家の片付けが難しくなるかもしれません。今すぐにと焦る必要はありませんが、定年退職が視野に入る頃から検討を始めると良いでしょう」

【リ・バース60】は、ご利用いただける契約者の年齢、資金の使いみち、ご融資の限度額、融資金利、金利タイプ、取扱可能エリア、金融機関における商品名称その他商品内容は、金融機関ごとに異なります。興味がある方は、早めに金融機関や不動産会社の担当者に相談してみてはいかがでしょうか。

【リ・バース60】について詳しく知りたい >>

次回記事(8月公開予定)では、【リ・バース60】がどのような使いみちで利用されているか、毎月の支払額がどれくらいになるかなど、具体例を紹介していきます。