「住宅性能表示制度」が2000年にスタートし、住まいの基本的な性能部分をわかりやすく等級表示する仕組みが整いました。この制度を利用した住宅であれば、耐震性や耐久性、火災時の安全性、メンテナンスのしやすさ、省エネ性、空気環境、明るさ、バリアフリー性、防犯性など、目に見えにくいけれども大切な住まいの性能について、どの程度の品質を持ってつくられた家なのか客観的にわかるようになりました。また「耐震性は等級2で」「省エネ性は等級4で」など等級を指定することで、予算と希望を踏まえた家を建てることができます。
全体的な傾向として、2011年に東日本大震災とその後の電力不足を経験し、住まいの耐震性と省エネ性について重視する人が増えました。この二つは家族が安心して快適な暮らしをするために欠かすことができない大切な住まいの性能といえるでしょう。
住宅は依頼先によって構造形式が決まっていることが多く、日本でなじみの深い木造在来工法、ツーバイフォー工法、住宅メーカーが独自に開発した軽量鉄骨(プレハブ)工法、重量鉄骨工法、鉄筋コンクリート工法など様々な選択肢があります。
工務店や大工さんに建ててもらう一般的な木造在来工法やツーバイフォー工法は、それぞれ共通のルールで建てられ、構造材やくぎ、金物などに細かい規定があります。一方、住宅メーカーが提供する軽量鉄骨、重量鉄骨工法などでは、それぞれの会社で構造体にあった耐震性や耐久性を発揮できる技術を持っています。それぞれ特徴があり、希望の間取りや予算などと照らし合わせながら選ぶとよいでしょう。
どんな工法で建てるとしても、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を遵守して建てられますが、免振・制振などの技術を使い、より高い耐震性を持たせることも可能です。家を建てる際に、なるべく早い段階で設計士に相談してください。
住宅の省エネ性は、建物の断熱性や気密性、省エネ性に優れ効率の高い高効率設備の導入や住まい方で決まります。
<断熱性>
まず、建物の断熱性で大切なことは、床・壁・屋根など建物の外気に面している部分を断熱材ですっぽりと、隙間なく包み込むことです。そして、冬の暖房時に室外に逃げる熱のうち48%を占めるといわれる「窓やドアなどの開口部」の断熱化も重要です。
例えば窓は、単板ガラスの代わりに二枚のガラスの間に空気層をサンドイッチした、断熱性のある「複層ガラス」の採用が今ではスタンダードになっています。複層ガラスの内側に特殊な金属膜を張った「Low-E複層ガラス」の採用も進んでおり、窓の方位によって、室内の熱を逃がしにくい断熱タイプ、または太陽の熱をカットする遮熱タイプを使い分けると効果的です。
さらに、複層ガラスの空気層にアルゴンガスを注入したガス入り複層ガラス、ガラスを3枚使ったトリプルガラスなど、より断熱性の高い窓もありますので、住んでいる地域や予算により、どの窓を使うか検討してください。
窓ガラスの枠も、従来のアルミだと熱を伝えやすい性質を持っていますが、樹脂製、木製などにすると断熱効果が高くなり、窓枠の結露も減るでしょう。これら窓の性能は、室内の快適性や光熱費に影響がある大切な部分ですが、見落としがちな部分でもあるので注意が必要です。
以上のような住まいの断熱性や窓の性能は、新築マンションを購入するときでも同じようなチェックをしていただきたいと思います。
<気密性>
せっかく断熱に気を使っても、窓や壁の隙間から外気が入ってくるようなことがあると、断熱効果はあまり期待できなくなってしまいます。したがって、隙間が生じやすい木造在来工法の家では特に、断熱性とともに気密性にも留意する必要があります。
断熱性も気密性も、はじめの計画とともに、実際に施工する職人さんの技術力と、現場での施工監理が重要と言われています。高断熱・高気密住宅の施工経験のある工務店や大工さんに施工してもらえれば安心です。
<高効率設備>
暖冷房・換気・給湯・照明設備は、高効率のものを導入しましょう。家庭で使用するエネルギーで最も多いものは照明・家電製品で37.8%を占め、次いで給湯が27.8%、暖房が23.1%と続きます(資源エネルギー庁「エネルギー白書2015」より)。
エネルギーを多く使用している部分に省エネ設備を採用することで、大きな省エネ効果が見込めます。照明には長寿命で低消費電力のLED電球を用い、エコキュート、エコジョーズ、エネファームなど高効率給湯器の導入、省エネ型エアコンの採用なども検討してみるとよいでしょう。
<住まい方>
そして最後に大切なことが「住まい方」です。窓の開け閉めで自然通風を取り込んだり、設備を適切に運転させ、住まいのメンテナンスや点検をしっかりすることなどが挙げられます。
省エネ性能の高い家に住むと、エアコンなどにあまり頼らず四季を快適に過ごすことができ、結露やカビも発生しにくく、健康的な暮らしができるというメリットがあります。CO2の排出を抑え、地球環境を守ることにも貢献します。住まいの省エネ性は、未来へつなぐこれからの住まいに欠かせない大切な性能です。
今、「パッシブデザイン」が注目されています。パッシブデザインとは、特別な機械に頼らず、建物や間取りの工夫などで自然の風や太陽光を取り込み、快適な室内環境を作り出す手法です。窓の位置や庇の形状、風を通すドアや通風のための小窓の採用などがあります。 戸建て住宅であれば、設計の段階であわせて検討してください。窓の数に限りがあり、通風の取り込みが難しいマンションでも、パッシブデザインを採用した間取りが増えています。探すときの参考にしてください。
井上 恵子 住まいの性能・安全 ガイド
マンション設計に携わった経験を数多く持つ一級建築士が、住まいの性能を解説。性能評価申請に関わったマンションは20棟以上。設計事務所設立後は子育ての経験を生かし保育園の設計なども行う。その他に戸建て・マンション購入セミナー講師、新聞へのコラム連載など。


















