それはつまり、自社株を買ってしまった従業員自身の判断ミスということです。自社株をたくさん老後資金の運用手段として持つことはあんまり勧められることではないのです。
先ほど、うまくいっている間は一石二鳥(三鳥)の幸せ、といいました。しかし、投資をするときには逆になったときの場合のことも考えてみなくてはいけません。エンロンのようになってしまえば、会社はつぶれ、雇用は失われ、老後のための大切な財産も失う、ということになってしまいます。
これでは仕事も財産も共倒れということです。一石三鳥どころか一石で三鳥に逃げられるという感じです。大切な老後資金の運用方法としては危険度が高いということになります。
■日本では同じことにはならない! だが油断は禁物!
さて、日本版401(k)ではどうでしょうか? 答えを先にいいますと、日本では同じようなケースにはなりにくいと思います。
まず、会社が拠出してくれる掛け金は、現金の形で振り込まれます。何を買うかは本人が自由に決められます。最初から自社株を強制的に購入されることはありません。
また、会社は自社株を勧める行為については、そのデメリットについてよく従業員に説明しておかなければならないものとされています。つまり、自社株投資のよいところだけを説明し、購入を推奨するようなことはできないようになっているのです。実際、すでに導入している企業の説明会でも、かなり慎重な説明を行っているようです。
そして、自社株(あるいは自社株ファンド)を購入したとしてもストックオプションのような厳しい売買制限は課すことができません。インサイダー取引に該当しない程度の売買制限はありえますが、まったく売買できないことはありません。
つまり、これら3つの要素により、エンロン社の従業員に起きたようなケースは日本では起こりにくいと考えられるのです。しかし、多くの企業では自社株を投資対象の選択肢として組み入れているのも事実。また、それを最終的に決めるのは従業員である私たち自身。ですから、エンロンと同じことのおきないよう、自分自身がきちんと教訓を学んでおきたいものです。
■ちょっとしたコツで、自分自身の財産を守れる!
エンロンに学ぶ教訓はシンプルです。それは「自社株投資はほどほどにする」ということです。