また、従業員自身の積み立てでも、自社株を購入する人が多かったようです。401(k)の財産のほとんどを自社株で運用している人もいたようです。日本でいえば、社内持株会の感覚でしょうか。毎月の401(k)の積立額で自社株をこつこつ購入するわけです。
景気がよい間は、会社が成長すると、株価も上がり、給料も増えるし、401(k)財産も増えるという一石二鳥(いやむしろ三鳥?)の幸せな状態が続いていました。
ところが、エンロンが破綻して株価がぐんぐん下がったときに、あわてて自分の持っている自社株を売ろうとしてみても、売買には制限があり、「売れません」と言われるだけ。従業員の人々は指をくわえて株価が下がるのを見ているしかありませんでした。気がついたときには老後の財産は何十分の一になってしまったというわけです。
■問題のひとつは、売買制限を課した制度にあるが……
問題のひとつは、自社株式の自由な売却を認めなかった会社にあります。株価が下がったときに途中で処分できれば、被害は最小限度に抑えられたでしょう。さらに、数週間程度の期間、システムの変更に際して売買が停止されていたといいます。その間、経営者は自身の株式を売却して切り抜けていたといいますから、ひどい話です。
しかし、ストックオプション制度では何らかの売却制限を課すのが一般的なのも事実です。従業員が株価が上がったらみんな喜んで簡単に売り始めてしまっては「もっと会社が大きくなるまで一緒にがんばろう」というストックオプションの機能が損なわれてしまうからです。
とはいえ、エンロンの場合、役員は従業員に対して会社は健全なので持ち株の売却は不要だと説明していたようですから、こういった真実と異なる説明については問題があるようです。会社を信じて自分の掛け金で自社株を買っていた部分については今後どのように保証されるのか、また役員等が賠償の責を負うことになるのか裁判等が進むことになりそうです。
■問題のもうひとつは、従業員の判断ミスにもある!
とはいえ、もうひとつの問題は加入していた従業員のほうにもあります。会社の問題を追及する声が多いようですが、私はむしろ問題の本質は従業員の側にあったのではないかと思います。