■1,000万円が40万円に? エンロン社員の401(k)のショック
米通信大手企業のエンロン社が昨年末に破綻したことはご存知の方も多いことでしょう。エンロン社を優良企業と考え社債を組み込んでいたMMFが元本割れしてしまったり、その後、財政上の隠ぺい工作が明らかになるなど大きな波紋を呼んでいます。
ところで、エンロンの社員の401(k)が大変なことになったことはご存知でしょうか? テレビや新聞等でも報道されていますのでご覧になった方もあることでしょう。ワールドビジネスサテライトや日経金融新聞では特集記事も掲載されました。
エンロンでは社員に対して401(k)を実施していたのですが、社員が老後のために運用をしていた資産がエンロンの破綻によって大きく資産価値を失ってしまったというのです。私が見たテレビでは女性社員の方が「1,000万円近くあったのに40万円になってしまった。老後のことが心配だ」というようなことを話していました。その社員の方の境遇については、同情することしきりです。確かに老後の予定はゼロから考え直さないといけないでしょう。
退職金が、企業の倒産によって減ってしまうことはよくありますが、401(k)においては年金資産は個人ごとの財産として管理されています。つまり、企業の破綻からは守られるはずです。なのに、401(k)の資産まで企業の破綻で減ってしまうのはなぜでしょう? ――その鍵は「自社株」にありました。
■売れない自社株をたくさん持っていたエンロン社員
エンロンでは、従業員が自分の給料から積み立てる拠出額を決定すると一定割合で会社が追加拠出を行い自社株を従業員のために積み上げる形で401(k)の積み立てが行われていたようです。これはアメリカの401(k)でよくある形です(日本では会社が強制的に自社株を積み立てさせるようなことはありません。詳しくは後ほど)。
これはストックオプションのような形態といえます。その自社株については、ストックオプションに通常設定されるような一定年齢を経ないと売買できないような制限がかかっていました。