私も昔はダメ人間だった
キャリアにはアップもダウンもなく、幸せなキャリア形成か不幸なキャリア形成があるだけ |
私は大学時代、就職活動に見事に出遅れ、卒業後は半年くらいフリーターをしていました。このままじゃいけないと就職フェアに参加し、なんとか東京都内の会計事務所に滑り込むことができました。意気揚々と入社した私でしたが、ミスばかりで全く仕事ができず、クビ同然で辞めることになりました。
しかし、その後転職したコンビニエンスストアで花開き、優秀社員賞をもらえるほど活躍することができました。29歳の時に外資系戦略コンサルティングファームに転職。順調に昇格し、32歳で年収は1200万円超になりました。
在職時から不動産投資を中心とした各種資産運用に成功し、わずか1年で3億円の資産をつくり、働かなくても大丈夫なくらいの資産とキャッシュフローを作りました。そして現在、二つのベンチャー企業の経営者として、好きなことをやっています。
それまでは投資や資産運用には全く興味はなく、お金とは無縁の世界にいましたが、熱中しやすい私はとことんはまり、夢にも思わなかった分野で起業することになったのです。
時にはリセットボタンを押してみよう
そんなふうに考えてみると、私の人生はリセットボタンの連続でした。でも、今までの自分のキャリアにこだわらないで積極的にリセットボタンを押してきたからこそ、新しい自分や、自分の違う能力を見つけることができたのだと思います。また、業界は変わっても今までのキャリアが自分の付加価値を高める役にも立っています。知識や経験そのものよりも、仕事のやり方や考え方、つまり仕事を通じて培ってきた思考特性と行動特性が、いろいろなところで応用できているのです。
今までやってきたこと(もちろん主体的に関わり、一生懸命やってきたものに限る)は、必ず活きる日が来ます。私自身、会計事務所、コンビニ、経営コンサルと全く異なるキャリアを歩んできましたが、無駄になった仕事は一つもありません。経験で不利になったものや役立たなかったものは無いどころか、むしろ私の活躍の場を広げてくれています。「過去の評価は将来なしえたことで決まる」と言われるように、ダメダメ社員だった経験は、逆に「あんな時期があったからこそ今があるんですね」と、プラスの評価に変わるのです。
この経緯の詳しくは→『30代で差をつける 人生戦略ノート』 (三笠書房)。
自分の可能性を広げることにフォーカスしてみる
自分の経験を直接活かせられる仕事に就けて、それが時間を忘れるほど楽しければ、もちろんその方が望ましいのは言うまでもありません。しかし、現実に目をつぶってガマンしながら自分の仕事にしがみついたり、今までの経験が活かせることや給料の額に固執したりしてしまうと、選択肢を狭め、自分の可能性をシュリンクさせてしまう危険性もあります。今までのキャリアを捨てる、というのは勇気が必要ですが、自分の可能性を広げることにこだわれば、不思議と過去の経験や今の立場に対する執着心も消えて、むしろ好奇心がわいてくるものです。かの大前研一氏も、「オールクリアせよ。捨てられるものが多いほど得られるものも多い」と主張しているくらいですし。
「やりたいことを見つける」を銘打つ多くの起業セミナーや自己啓発セミナーは、過去の自分から何かを掘り起こす、自分が得意な部分を見つけ出す、というアプローチです。しかし、過去の延長線上に未来があるとは限りません。私たちの中には、表面上は意識できない多くの能力や素質が眠っています。
ですから、「自分で掘り起こせる程度のもの」にこだわらず、興味を抱いたことに徹底的にのめり込んでみるのも良いのではないでしょうか。それが全くのキャリアチェンジになったとしても、既存のキャリアにこだわるよりも、よっぽど未来を切り開くことにつながる場合もあると思います。
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