シャンポリオンのヒエログリフ解読によって、ルーヴルのエジプト部門が充実した。「パセルのペクトラル(胸飾り)」第19王朝 高さ10cm ルーヴル美術館蔵 © Photo RMN / © Herve Lewandoeski |
あまり興味がない方にとっては、頻繁に開催されているような気がするエジプト関連の展覧会ですが、今回の展示は、ルーヴル美術館の古代エジプトコレクションが日本で初めて本格的に公開される機会でもありました。そんなところから、今回の展覧会の見どころをご紹介していきましょう。
ほとんどが日本初公開コレクション
まず、本展がいかに貴重であるかを語るには、古代エジプト史とフランスのパリにあるルーヴル美術館との関係を紹介しなければなりません。エジプトのコレクションというと、私のような素人でも、ロンドンの大英博物館やカイロ博物館を想像します。けれど、19世紀のこと、砂に埋もれた古代エジプト文明を再発見したのは、ルーヴル初代館長のドゥノンをはじめ、ヒエログリフ(神聖文字)の解読者として有名なシャンポリオン、カイロ博物館の前身を創設したマリエットなど、ルーヴルの学者たちだったことはあまり知られていません。
古代エジプト史を解明する上で欠かせないコレクションが、質量ともに充実したものとしてルーヴルに所蔵されることになったのは、そんなルーヴルの学者たちの功績によるわけだったのです。
今回の展覧会では、彼らルーヴルの学者たちがどのようなアプローチのしかたで古代エジプト史に迫っていったのか、古代エジプト人との対話ばかりでなく、作品を通じて近代フランスのエジプト学者とも対話することができるのです。
見逃せない「センウセルト三世像」
ファラオのさまざまな年齢の姿を残す風習を表す貴重な資料「センウセルト三世像」第12王朝 高さ119.5cm ルーヴル美術館蔵 © Photo RMN / © Herve Lewandoeski |
とはいえ、初公開だからいいというわけではありません。内容も充実したものがなければせっかく見に行く価値はありません。もちろん、今回のルーヴル美術館所蔵のエジプトコレクションは、世界的に見ても見どころは満載です。
最も注目されている作品は、「センウセルト三世像」でしょう。センウセルト三世は、紀元前19世紀に各地へ遠征を行い中王国時代の最盛期をもたらしたファラオです。ルーヴル美術館には、このファラオの老若の彫像がありますが、今回出品されるのは若年の像。
エジプトにおいて、ファラオは階級性社会の最高位にあり、紙と人間の双方の間に立つ仲介者だったといわれています。エジプトコレクションでは、その時代における存在感を忍ばせるファラオの彫像を見ることが意味あることなのだそうです。今回の展覧会では、「センウセルト三世像」のほか、「トトメス三世のレリーフ」なども出展されています。
古代エジプト展を鑑賞してきたガイドの個人的見どころチェックは、次のページにて。