はっきりいって取材しにきたことを忘れました。実はこの料理を「写真に収めなくては」と最初は確かに思っていたのですが、料理が運ばれてくると、一気にその使命が頭から飛び去り韓国観光公社さんに写真をお借りしなくてはならない羽目になってしまいました。
それほどまでに、私たちを狂わせた料理は神仙炉(シンソンロ)。それは、ストロガノフを作るときに使う中央に穴があいた丸い型に中央が煙突のよう突き出たものを組み合わせたおもしろい形の鍋で、野菜や魚介類、肉をきれいに並べ牛スープで煮込んだ料理です。
神仙炉は韓国宮廷料理として高貴な方々に愛され、そのため具も高級食材をふんだんに利用して作られています。なんでも、あまりのおいしさに口が喜ぶということから「悦口子湯」の別名を持つそうです。煙突部分に炭を入れた鍋が運ばれ、大きなお皿に鍋に入れる具をチマチョゴリを着た女性店員がきれいに並べてくれました。オンドルの温かさが心地よい個室で、美しく盛られた料理となんともいえない上品な香りにすっかり夢心地。そんなフワーッとした雰囲気の中、彼女が手早く芸術品を作るように鍋を作り上げていました。
「煮えるまで少しお待ちください。」そういってにっこり微笑んだ彼女が部屋をでていった。頭の中はもう神仙炉を一刻も早く私の胃の中に収めることだけ。どういうわけか誰も「写真をとらなくちゃ」と言い出さない。しばらくして、ぐつぐつ煮え、それを見はらかったように部屋に入ってきた店員さんが私たちに料理を取り分けてくれました。
あああ!食べれるう。
あまりのうれしさにさっと箸をつっこみ一口目を味わった。おいしーい!!味はあっさりした塩味。だが複雑にうまみが絡み合って独得の味をかもし出している。あっという間に手のひらほどの取り分け皿に盛られた料理はなくなってしまいました。2杯目に手を伸ばそうとしたとき、はたと気が付いた。写真撮らなくちゃいけなかったんだ。ということで、食べてしまってから撮った写真がこちらです。
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