高層建築に地震の危険が?
都市部には固有周期の長い建造物が無数に存在する。その被害は実は想定されていない。 |
長周期地震動とは別名、表面波とも呼ばれていて、地震発生直後に来るP波やS波の後にくる地震動を指し、その周期は数秒から十数秒程度です。長周期地震動は超高層ビルディング、免震構造物、橋など周期数秒以上の固有周期を持つ構造物に大きな震動を引き起こし、大被害をもたらす可能性があります。建物や構造物は大きさなどによって揺れる周期(固有周期)が決まっていて、一般的に建物が大きいほど固有周期も長いとされています。
長周期地震動が発生する地域は、地表面から岩盤まで数キロも柔らかい地盤が続いている深い盆地構造をもった地域に発生すると考えられていて、この盆地構造により地震動が増幅・伸張され、大振幅で継続時間の長い地震動が発生します。
2003年に発生した十勝沖地震では、この長周期地震動により北海道内の各地の大型石油タンクがスロッシング(石油タンク等が特定の周期の地震波に共振し液面が激しく揺れ動く現象)に起因する被害を引き起こし、一躍この長周期地震動が注目されることになりました。
また新潟県中越地震発生時には、なんと震源から約200キロ離れた東京都港区の六本木ヒルズ森タワー(54階建て、高さ238m)のエレベーター6基が損傷、うち1基は8本ある主ロープの1本(直径約1センチ)が切れていたことがわかりました。 これは地震を感知して停止させる装置が長周期地震動の揺れに反応せず、運転を続けたことが原因と思われます。
関東大震災のときにも長周期地震動が発生したと記録されていますが、当時は固有周期の長い建造物が殆ど存在しなかったために大きな被害は報告されていません。
しかし近年では、首都圏を中心に固有周期の長い巨大な建造物が無数に建設され「免震構造」という固有周期を伸ばす構造の建築物が長周期地震動発生時にどのような被害を受けるかは未だ分かっていません。
では自宅や仕事場が高層マンションや高層ビルディングであった場合、どのような事に気をつけ、どんな準備をしておけばよいのでしょうか?
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