育美さん(仮名)は結婚前、事務機販売会社のOLでした。古い体質の会社で、ほとんどの女性社員は結婚か、出産をきっかけに辞めていくそうです。嫌がらせというほどではありませんが、上司は育美さんが20代半ばを迎えた年頃から「結婚はまだか」という言葉を頻繁にかけるようになったそうです。

仕事も入社以来、ほとんど変化がなく、確かにそろそろ潮時かしら、と思っていた矢先に、友人から今の夫を紹介されました。彼は2歳年上の広告代理店の営業マン、おしゃれな雰囲気や洗練された物腰は、会社の上司や同僚にはないものでした。

付き合い始めると間もなく、どちらからともなく結婚話が持ち上がりました。お互いに適齢期ということもあって、双方の両親も大賛成。結婚までトントン拍子に進みました。早速、ブライダル雑誌を買い込み、ウエディングドレスやブーケを品定めしたり、二次会のパーティ会場にするレストランを決めるために食べ歩きをしたりする日々。

新居は、彼の両親が遺産の前渡しという形でマンションを購入してくれることになりました。もともと家具や雑貨に興味があった育美さんは、マンションの内装やインテリアにもとことんこだわり、理想の新居ができあがりました。そして、挙式。

この結婚式までの準備期間が、今までの人生で一番楽しく、幸せだったと育美さんは言います。新婚旅行から帰って、結婚生活が始まったのですが、育美さんはなぜか何もやる気がしなくなってしまいました。

専業主婦になったので、例えば夫のための朝食の支度を、と思うのですが、どうしても起きられません。昼頃ようやく目が覚めて、洗濯をしたり、買い物に出かけます。夫は夜遅くにならないと帰らないのですが、不安になって、何度も携帯に電話してしまうそうです。

夫も最初のうちは、優しく応えてくれていたものの、それが度重なるうちに怒り出すようになったとか。それはそうでしょう、仕事中にかかってくる私用の電話ほど迷惑なものはありませんからね。夫の態度の変化に「私を嫌いになったんじゃないか」、「好きな女でもできたんじゃないか」と思い始めてからというもの、前にもまして家事をする気がなくなったとか。

新婚2ヶ月目にして「私たち、離婚した方がいいでしょうか」と育美さんは涙ぐみます。

育美さん夫妻も「結婚の意味」を考えないまま結婚してしまったケースだといえます。少なくとも育美さんにとって、結婚とは「つまらない仕事から解放してくれ、きれいなドレスを着て結婚式を挙げ、素敵なお部屋に住む」ことぐらいにしか考えられなかったのでしょう。

だから、新婚旅行から帰って、本当の結婚生活が始まったと同時に、目標とするべきものがなくなってしまった、つまり燃え尽きてしまったのです。
芸能人とは違い、一般人がこのような結婚や離婚をしても、得るものは何もないだけでなく、社会的信用を落とします。ましてや専業主婦の育美さんにはするべき仕事さえありません。