今どき夫の離婚事情
まだまだ自分の結婚生活や離婚についての悩みや迷いを、自分の言葉で語る男性というのは多くありません。仕事の場では「家庭という私生活を持ち込まない」というのが暗黙のルールとしてありますし。家庭がくつろげる場所となっていない男性向けの逃避場所は巷にたくさんあり、現実の問題から目をそらしている夫のほうが多数派です。
そう、男性は妻や家庭から逃げるのが上手なのです。そんな夫たちの態度が離婚件数を上昇させている面も否定できないでしょう。しかし、少しずつ男性も変わり始めています。不況やリストラなどで仕事や会社が人生のすべてでないことがわかったことと、妻たちが体を張って「もっと家庭を顧みて。私と向き合って」と訴え続けてきたことが成果となって表れ始めているのです。その結果、自分の生きる場所としての家庭を積極的に見直し「これでいいのか?」と迷い、悩む男性も増えてきました。
ひと昔前、とはいっていもそんなに昔ではありません。私が離婚相談の仕事を始めた頃は、カウンセリングに訪れる人は女性だけといっても過言ではありませんでした。また、「妻と離婚したい」という男性のほとんどには、他に結婚したいと思っている女性がいました。
性格や価値観の不一致を理由に離婚を望むのはほとんどが女性。しかし、最近では男性が自ら「自分の人生をやり直したい」といって、離婚相談に見えるケースも増えてきています。
例えば、定年退職後に毎日顔を合わせるようになった妻との生活にやりきれなくかった夫が離婚を申し出るなど、逆濡れ落ち葉現象ともいえるケースも増えています。若い世代にいたってはなおさらのこと、この傾向は今後も増えていくでしょう。
昔なら何歳ではこのくらいの地位にいて、こういう生活をしているという標準がありましたが、今ではそんなものは意味を持ちません。生き方が多様化しているからです。離婚も増えていますが、結婚しない人も増えています。
今の人たちの精神年齢は実際の年の七掛けだといわれています。例えば、四〇歳の人だったら、精神年齢は二八歳だということ。だから、「まだ人生をやり直せる」といって離婚を選ぶ人は、男女にかかわらず増えていくでしょう。
離婚に悩む夫たちへのアドバイス
さて、私が男性にアドバイスすることは、女性に対して言うこととは違います。“男女参画型社会”という理念からは反するかもしれませんが、男女が同じ性ではない以上、おのずと役割は違ってくるのが当然であり、性別役割分担と平等・対等ということは決して矛盾しないと私は考えています。
私はクライアントとその家族の幸せを第一に考えているので、どうしても社会の現状を踏まえたうえでのアドバイスになってしまいます。夫婦も共働きであったり、ときには妻のほうが収入が上だったりといろいろですので、それぞれのケースに合わせて対応しています。
しかし、どの男性にも共通してアドバイスすることは、次のようなことです。
◆ 別れる、別れないはじっくり冷静に考えて決める
◆ 修復したいなら、妻の人格すべてを受け入れる
◆ 離婚を決めたら迷わない
◆ 離婚の条件は子どもたちの幸せを第一に考えて決める
◆ りりしく穀然と振る舞う
(まだまだ続きます)