性別役割分担拒否！　離婚

女も男も仕事と家庭

「男は仕事、女は家庭（家事・育児）」の時代から「男は仕事、女は仕事も家庭も」という時代に突入し、そこから更に現在は「女も男も仕事と家庭」という時代に移行する過渡期にあります。言葉にするのは簡単ですが、現実の生活の中でこれを実践していくのは並大抵のことではありません。

問題は、主に夫側の意識改革+実践がなかなか出来ないということあります。自分と同じように奥さんが外で働いていても家事は妻の役目、と信じて疑わない夫というのが沢山いるわけです。すると、どうなるか？　ただただ妻が過労し、ストレスが溜まり、時に病に倒れ、とうとう不満爆発して、最悪の場合“離婚”となることも実際あるのです。

「なんで私だけ毎日こんなに大変なの？」そんな不満を抱えながらも精一杯全力で頑張っている妻は多いでしょう。共稼ぎだったら家事を分担するのは当たり前、妻が忙しくあれこれ家事をこなしていたら、思いやりのある夫なら自分だけくつろいでビール片手にテレビを観て笑っているなんてことは本来できないはず。と、思いたい。ところが、ところが、ある面では思いやりのある普通の神経を持った男性でも、それが理不尽なことだということに気付かないのです。

何故か？　自分の母親を見て育っているからです。母親が専業主婦だったという夫は勿論のこと、母親が仕事を持っていたという夫でも、それぞれ「男は仕事、女は家庭（家事・育児）」、「男は仕事、女は仕事も家庭も」という構図を自分の家庭で見て育ったわけですから、自分が家事を分担すべきだとは、夢にも思わないのです。

確かに100％夫側にばかり否があるとは一概には言えません。妻側にしても上に挙げたような家庭で育っているわけです。働いていようがいまいが、女が家のことは全て一人でやるものと長年の間に刷り込まれてしまっています。どうしても無意識のうちに「私がやらなくて誰がやる」と思い行動してしまう。するとますます夫も腰が上がらなくなる、という悪循環が生じてしまうというのも事実です。

“性別役割分担拒否！　離婚”の実例

友人のＫさん（34歳）は、大手建設会社で経理部に所属しています。夫は同じ会社の営業部。Ｋさんの怒りが頂点に達したのは、1年で一番忙しい決算期。夫は結婚する前一度も一人暮らしを経験したことのない実家暮らしで、専業主婦だった母親が何から何まで面倒をみていました。そのせいか、キッチンに立ったことはなくまた立つ気もない。洗濯も掃除もしたことないし、やろうという気もないという人でした。

それにしても、Ｋさんがこれだけ毎日仕事で遅ければ、簡単な食事でもいいから用意してくれる日があるのでは？　と期待してみたものの、残業を終えてへとへとになって帰宅すると開口一番「今日のご飯、何？」。これが何週間か続いたある日、Ｋさんはプツンと切れたのでした。

Ｋさんは「もうこんな生活耐えられない！」と嘆きます。私は離婚したい理由は夫が家事を分担してくれないというそれだけ？　と訊けば、その１点だけだけど、何にも代え難いくらいにもう我慢できないと言います。でもＫさんは夫を変える努力を何もしていません。それで不満ばかりを訴えているのです。

「私はね、育児休業制度など最先端で整備されているこの会社が気に入っているの。だから就職した時から、定年まで勤める覚悟で今もそれは変わっていない。でも今の夫の態度では、子どもを作っても全部私の負担になるだけっていうのが目に見えていて、子どもを欲しいと全く思えない。初めの頃は、ご飯を作るのは私がやるけど、後片付けくらい手伝って、と言ってたの。言えばやってくれるんだけど、声をかけなければ自分からくることは一切無い。

私そこで、あぁ、ダメだこの人は。もういいや、って諦めちゃった。私が早く帰れる日はいいんだけど、夫が先に帰っているのに、何もしないで口開けて待っていられると、もう我慢できなくて。なんで？　なんで？　なんで？　って」Ｋさんがこんなにも苦しんでいても、夫はそんなこと夢にも思っていないはず。私はＫさんに「気持ちは分かるけど、この夫は言えばやってくれるんだから、話し合ってとにかく意識改革と家事全般の実践教育をしてみたら？」と言いました。

ところがＫさんはそれから3ヶ月後、離婚してしまいました。夫に家事分担のルールを作ろうと持ちかけたところ、「君が仕事を辞めて専業主婦になればいい」と言われたのだそうです。Ｋさんは結婚前、定年まで働くという意志を伝えてあったにも関わらず、あっさりそんなことを言ってのける夫に見切りをつけたのだと言います。