2)支払額の算定には父親の生活が考慮される
こうしたことが養育費の大前提であり、建前なのですが、もちろん現実はそれほど甘くありません。まず、子供を引き取るのは多くの場合女性であり、社会において男女の賃金格差は歴然としてあります。しかも、離婚前まで専業主婦だった女性が安定した立場で働ける職場というのは非常に少ないのが現状です。
ならば「離婚前と同程度の生活ができる」金額の養育費を受け取れるかというと、現実的にはお寒い限り。離別した子供に養育費を払い続けている父親は三割程度しかいないのです。
支払額は1人平均4万円、2人だと6万円程度。しかし、これは全国平均で都市部は1人5万円、地方だと4万円程度だというデータもあります。この差額は物価と所得の格差によるものと考えていいでしょう。
養育費を算定するための計算式もいくつかあるのですが、「どれだけ払えるか」という現実の方が重要視されているのが現状です。早い話が父親にも自分の生活があるわけで、今後、再婚して、新しい家族をも扶養していかなければならなくなる可能性だってあります。そうした夫側の事情を汲み取った結果が、平均4万円という金額なのです。
3)「口約束」は泣き寝入りのもと
さて、日本の離婚のほとんどが協議離婚だということはご存知でしょうが、これはある意味で「口約束の離婚」です。もしもあなたが、離婚するときに夫に対して、「養育費は払ってね」と約束して別れたとして、それが実行されなかったとしましょう。残念なことですが、口約束だけでは、あなたが泣き寝入りするしかないのです。
現在、離婚したときに養育費の取り決めをしているケースは約半数、にも関わらず離別した子供に養育費を払い続けている父親は3割程度であることがその証拠です。また、途中で支払いが滞っても「口約束」では法的強制力が効かないケースが多いことも事実です。
ですから、養育費に関しては家庭裁判所に持ち込んでも、支払いを決めておいた方がいいと私は皆さんにアドバイスしています。なぜなら、調停調書に支払い金額が書き込んであれば、それは法的強制力を持ち、支払いが滞ったときには給与差し押さえなどの手続きをとることができるからです。
しかしながら、離婚調停というのは気の重いものです。ですから、お互い離婚に同意しており、夫が養育費を支払う意思があるならば、その内容を公正証書に記載しておくことをお勧めします。公正証書は公証人役場で作成してもらえ、手数料として数万円が必要ですが、子供の将来のことを考えれば、作成してもらっておいて損はないはずです。