特急列車「ワイドビューひだ」とは?
「ワイドビューひだ」は、名古屋と高山、富山をJR高山本線経由で結ぶJR東海の特急列車である。定期列車だけでも1日11往復していて、名古屋駅発は、朝の7時台から夜の20時台まで、おおむね1時間に1本ある。
名古屋~高山の運転がメインで、1日4往復は、高山から北進し、富山までの運転となる。高山の少し先の飛騨古川行きが1本あるほか、1日に1往復だけ大阪発着もある。この列車は、東海道本線を岐阜まで走り、岐阜駅で名古屋からやってきた車両と併結して高山行きとなる。
ワイドビューひだの停車駅
・すべての列車が停車する駅
岐阜、美濃太田、下呂、高山
・一部の列車のみ停車する駅
尾張一宮、鵜沼、白川口、飛騨金山、飛騨萩原、飛騨小坂、久々野、
飛騨古川、猪谷、越中八尾、速星
・大阪発の列車が岐阜到着までに停車する駅
新大阪、京都、草津、米原、大垣
主要駅間の運賃、特急料金
運賃 | 普通車指定席 | |
---|---|---|
名古屋~美濃太田 | 1140円 | 1700円 |
名古屋~下呂 | 2270円 | 2350円 |
名古屋~高山 | 3350円 | 2680円 |
高山~富山 | 1660円 | 1700円 |
大阪~下呂 | 4430円 | 2900円 |
大阪~高山 | 5400円 | 2900円 |
(大阪~名古屋を新幹線利用の場合は、これよりも割高となります)
ワイドビューひだの乗車レポート!
まずは名古屋名物を食べて、旅の腹ごしらえ
旅の始まりは名古屋駅である。お昼の発車まで少々時間があるので、11番線ホーム南端にある名古屋名物きしめんの立食コーナーで腹ごしらえをしておこう。平べったいパスタのようなうどんのきしめんは、汁の味とともに大変美味しい。ひさしぶりに故郷の駅に降り立って名物の味を堪能した頃、轟音と油の臭いを伴ってディーゼルカー「ひだ」が入線してきた。
ワイドビューひだの座席
特急「ひだ」には、ワイドビューという枕詞がついている。沿線の車窓を堪能できるよう座席は一段高いところにある。そのため車両の真ん中を貫く通路とは段差が出来てしまう。言ってみればバリアフリーではない。したがって、ドア付近には車椅子専用の座席が他の座席とは一段低い位置に設けられていて、誰でも列車に乗れるよう配慮がなされている。 景色を見るために座席は右側・左側のどちらがおすすめ?という質問もよくあるが、下呂までだと白川口を過ぎるまでは右側がよく、そのあとは左側の車窓がよくなる。帰りも高山本線で名古屋方面へ戻るなら、往路と反対側の車窓を楽しんでみるのがいいかもしれない。高山本線の旅に出発!
週末だったので、ほぼ満員の乗客を乗せた列車は、定時に名古屋をスタートする。変わったことに座席は後ろ向きになったままだ。あわてて座席の向きを進行方向に変える人もいるが、大方の人は無視したままだ。車内放送があって、次の停車駅岐阜で進行方向が変わりますとのアナウンスがある。つまり、18分後の岐阜到着で向きを変えるのが面倒なので、初めから向きを逆にしてあるというわけだ。岐阜までは、取り立てて絶景もない。ただ、稲沢付近の貨物ヤードにたむろする貨物列車や電気機関車、ディーゼル機関車、尾張一宮(おわりいちのみや)付近での名鉄特急との出会いなど、テツならワクワクする場面に事欠かない。私にとっても、久しぶりの名古屋周辺通過なので、行きかうどの車両からも目が離せない。
木曽川の長い鉄橋を渡ると、市街地を高架で進んで岐阜に停車する。ここで進行方向が逆になり、ようやくまともな向きで車窓が眺められるようになる。来た道を少し戻って、東海道本線と分かれ、いよいよ高山本線の旅が始まる。
高山本線に入って……日本ラインが出現
高山本線は単線非電化路線だ。車両の上を覆う架線もなく、本線とは名ばかりのローカル線である。特急列車の本数は多いが電車ではなく、すべてディーゼルカーが使用されている。しばらくは雑然とした市街地を走るが、突然現れた満開の桜並木に車内は騒然となる。各務原(かかみがはら)市の市民公園に近い境川堤の桜で、この付近の桜の名所らしい。列車は停車することなく先を急ぐ。やがて開けた田園地帯が展開するが、意外にスピードは速い。 南側を付かず離れず並走していた名鉄電車と別れ、鵜沼を通過すると、右側にゆったりと流れる木曽川が見えてくる。大きく左にカーヴしながら国道と並んで川沿いに走るが、道路より一段高いところを走るので川の眺めがクルマに遮られることはない。このあたりは「日本ライン」と呼ばれる景勝地で、ドイツのライン河にあやかって命名されたものだ。しかし、彼の地の大型船も運航できる大河とは異なり、木曽川は奇岩がごつごつとばら撒かれたように点在する日本的な景色である。川下りも小さな舟であり、ラインとは似て非なるもの。名称は変だが、美しい車窓風景で、高山本線最初のビューポイントである。 木曽川と離れてしばらく田園地帯を快走すると、市街地にさしかかる。美濃加茂市だが、駅の名は美濃太田。長良川鉄道と太多(たいた)線の乗換駅で、「ひだ」は停車する。太多線は右手に分かれ多治見へ、左手には長良川鉄道のホームがある。最近は、観光列車「ながら」が人気だ。
飛騨川に沿って渓谷美を楽しむ
下呂駅駅舎は和風の造りで、古くからの温泉地にふさわしい落着いた雰囲気だ。 |
カーテンで窓をふさいでいた女性客が眩しそうに外を見やり、それにつられる様に、欧米からと思しき外国人観光客グループが物珍しそうに車窓を眺めている。
これ以後、延々と続く飛騨川の眺めの、最初のビューポイントだが、この付近は過去に悲惨な観光バス転落事故が起きた場所でもある。対岸には、その国道41号線が崖っぷちを這うように走っている。
渓谷が続いたあとは、川にダムが造られ、せき止められて出来た人工湖がある。しばらく進むと、川は再びもとの姿に戻り、自然の渓谷となる。小さな駅を通過し、やがて初めて飛騨川を渡る。かなり高いところを渡るので、眼下の渓谷を覗き込むと中々迫力がある。トンネルに入り、抜けると駅でもないところで停車する。線路が複線になっているので、列車の行き違いのための信号場であろう。一本だけ咲き誇っている桜に見とれているうちに、高山方面からやって来た特急「ひだ」が名古屋方面へ駆け抜けていく。
遠ざかる山道。近づく下呂温泉
小休止の後、旅を再開。飛騨川を二回ほど渡って、今度は、川が左に移る。車窓を眺めるには、ずっと右側の席がよかったが、このあたりから下呂の少し手前までは、左側が優良席となる。私の座っている場所からは遠めにしか川が見えないが、またしてもダムの人工湖を通り過ぎている。飛騨金山を過ぎ、中山七里と呼ばれる渓谷美で知られた名所に差しかかる。 焼石を通過し、山並が少し遠ざかると、渓谷が穏やかな様相になってくる。列車は、いつしか再び右手に移ってきた飛騨川に沿ってのんびり走る。かなりの乗客が、荷物を棚から下ろし始める頃、車内放送があり、列車は、神戸の有馬温泉、群馬の草津温泉と並んで日本三名泉の一つと言われる下呂温泉の最寄り駅下呂(げろ)に到着する。名古屋からおよそ1時間40分の旅であった。
こちらの記事で、下呂から高山を経て、富山までの旅をレポートしている。
特急「ひだ」で行く下呂~高山~富山の旅
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