鉄道/おすすめ鉄道旅行

東京「枝線」紀行【1】東武・大師線

通勤電車で何気なく路線図を眺めていて、本線からちょこっとはみ出す路線を見つけたことはありませんか?そう、それが「枝線」。用がなければ乗ることもないそんな「枝線」を、あなたの代わりにガイドが探訪します。

執筆者:高橋 良算


地上に地下に、網の目のように張り巡らされた東京の鉄道網。その路線図を眺めていると、本線からちょこっとだけはみ出した路線を見つけることはありませんか?用事がなければ乗らない、多くの人が素通りしてしまうそんな1駅か2駅だけのはみ出し線、人呼んで「枝線」。

都会の中でそういった枝線が生まれた経緯をたどってみると、意外な事実に驚くことも。距離は短いけれど、どこか不思議で好奇心をくすぐる枝線。早速乗りに出かけてみましょう!

なお、『東京「枝線」紀行~通勤電車の横道へ』は、シリーズでお届けします。

幻に終わった鉄道路線計画を今に伝える
東武大師線

東武大師線
今回の「枝線」は東武大師線
枝線紀行のトップバッターは、東武伊勢崎線・西新井駅と大師前駅とを結ぶ1.0kmの枝線、東武大師(だいし)線である。

まずは東武伊勢崎線に乗るべく、北千住駅へと向かう。JR、東武など4社5路線が集結する、大ターミナル駅だ。しかしながら、東京西部の郊外で生まれ育った私にとっては馴染みが薄い駅であり、いまだに構造がよく把握できていない。いつも乗り換えの度にウロウロしてしまう。

今回も、地下鉄千代田線のホームからエスカレーターをいくつか乗り継ぎ、やっと東武伊勢崎線のホームに出たと思ったら、そこは各駅停車が停まるホームだった。急行なら次の停車駅は西新井なのだが、各駅停車だとその間に3つも駅が挟まっている。

駅員に確かめると、ちょうど急行は発車したところだから、ここに停まっている各駅停車が先に着きますよ、と言うのでそれに従うことにした。

西新井駅の不思議な改札

西新井駅大師線改札口
改札の中に改札がある西新井駅
かくして各駅停車で西新井駅に到着。階段を上がり、早速大師線のりばへと向かうと、駅を出るわけでもないのに自動改札機が並んでいる。同じ会社の路線を乗り継ぐ場合、途中に改札などないのが普通なのだが、この大師線はちょっと変わっている。

おそるおそるPASMO(パスモ)をタッチすると、料金が引き落とされた。切符を持っている場合は、ここで回収される。これからまだ乗るのに、である。しかしその理由は大師駅で下車する時にわかる。

大師線のりば
短いホームの大師線のりば
とにかく大師線のりばの1番線へ。するとたった2両編成の電車が発車を待っていた。ホームも2両分しかない。本線には10両編成が走っているからずいぶん短く感じるが、このローカルな雰囲気が、枝線探訪をいっそう盛り上げてくれるのである。

とはいえここは足立区である。たった一駅とはいえ、乗客はそこそこいる。沿線住民の足としてちゃんと利用されているようだ。平日の朝夕などはもっと乗客も多いのだろう。

全長1キロ・2分間、それが大師線の旅

分岐
すぐに本線と分岐する
わずか2分で終点だから運転席の後ろに立って前方を観察してみよう。発車の合図があった後、運転士が後方を確認しながらドアを閉めた。大師線は車掌のいないワンマン運転なのだ。

発車後すぐに左にカーブして潔く本線と別れると、登り坂にかかる。単線ながら1991(平成3)年に高架化されているためだ。高架に上がったら、すぐに終点の大師前駅が見えてきた。周囲の景色を眺める間もなく、電車は大きな屋根に覆われた高架駅にゆっくりと停車した。

大師前駅
大きな屋根に覆われた大師駅ホーム
あまりにもあっけないのでホームにしばし佇む。すると、下車した客はあっという間にいなくなり、乗る客はさっさと席に着いて、30秒ほどでホームには人がいなくなった。運転士も手際よく準備を終えて西新井方の運転席に移動。するとまもなく発車の放送、そしてドアが閉まり発車していった。何だか古いサイレント映画を見ているようで慌ただしい。

日中は10分間隔の運転だから、2分走って3分で折り返す、というのを繰り返していることになる。こういう列車ダイヤを専門的には「パターンダイヤ」という。さっき発車した電車は、7分後にはまた大師駅に戻ってくるのだ。


果たして、西新井駅にある大師線用改札口の存在理由とは?
次ページで明らかに! >>
  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます