
お金の不安は、いつの時代も多くの人にとって身近で切実な悩みです。
「収入が増えれば安心できるのではないか?」
「もっと節約すれば不安は消えるのではないか?」
「家計簿をつけてお金を管理できれば安心できるのではないか?」
そう考える人も少なくありません。
もちろん、収入を増やすことや支出を減らすこと、お金の管理をすることは大切です。しかし、それだけで本当にお金の不安はなくなるのでしょうか。
心理カウンセラーの亀井弘喜さんは、仕事、人間関係、家族、パートナーシップ、将来への不安など、これまで延べ1万人以上の人生相談に向き合う中で、「お金の悩みは、稼ぎ方や使い方の問題というよりも、その人の日頃の生き方や心のくせが反映されたものだということに気付いた」と言います。
お金の悩みを単に「稼ぎ方」や「使い方」の問題だけで捉えると、本質を見落としてしまうことがあります。一般的には、収入や資産、節約力の差として語られがちなこのテーマを、亀井さんはその人の人生に対する「豊かさ意識」という違った視点で捉えています。
今回は、この「豊かさ意識」について亀井さんにお話しを伺いました。
お金がないのは「結果」に過ぎない?
私がお金の相談を受けたときに最初に伝えていることは、「原因と結果の法則」です。
お金に困る人は、お金がないこと自体が問題と捉えがちですが、実はそれは「結果」に過ぎないのです。
当たり前のことですが、ミカンの種からはミカンが実ります。リンゴの種からはリンゴが実ります。種(原因)があって実(結果)が生まれる。ミカンの種をまいて、リンゴがなることはありません。つまり、今、目の前に現れている現実には、必ずそれに対応する原因があるということです。
お金の問題も同じです。貯金ができない、支払いに追われている、いつもお金の不安がある……こうした現実は、「実」(結果)の部分です。では、その「種」(原因)にあたるものは何なのでしょうか。
お金の問題を抱える人に共通するもの
1つには、「お金に対するルーズさ」があります。何のために使うのかを考えずに使ってしまう。見栄でお金を使ってしまう。何かへの依存が止められない。そもそも管理があいまいになっている。そうしたルーズさが積み重なることで、「お金の問題」という結果が生まれていきます。
これは体重の問題にも似ています。太ってしまった体型は結果です。その背景には、食べるものや飲むものに対するルーズさがあるかもしれません。ストレスで食べすぎる。お菓子や炭水化物を無意識に食べ続ける。何を体に入れているかを意識的に扱っていない。そうした日々の積み重ねが、結果として体型に現れます。
お金も同じで、現実だけを見て「どうにかしなければ」と焦っても、原因に目を向けなければ、同じことを繰り返してしまうのです。
では、なぜ人はお金にルーズになってしまうのでしょうか。実は、そのルーズさのさらに奥にある本当の原因こそが「恐れ」なのです。
お金がなくなったらどうしよう。老後のお金は足りるのだろうか。子どもの教育費は払えるのだろうか。自分はこの先、ちゃんと生きていけるのだろうか。こうした恐れがあると、人は冷静にお金と向き合えなくなります。必要以上に抱え込もうとしたり、不安を紛らわせるために使ってしまったり、見栄や損得勘定に振り回されたりします。
つまり、お金の問題の根っこには、稼ぐ力や管理能力の問題だけではなく、「自分は十分に満たされていないのではないか」「いつか足りなくなるのではないか」という感覚があるのです。
お金持ち体質の人が持つ「豊かさ意識」とは
ここで出てくるのが、「豊かさ意識」です。豊かさ意識とは、「お金がある」と思い込むポジティブ思考ではなく、「自分という存在そのものが豊かさとつながっている」という感覚です。自分は豊かさを受け取り、生み出すことができる存在である。そう感じられている状態のことです。
お金持ちの人と、貧乏な人の違いもここにあります。お金持ちの人は単にお金を多く持っている人ではなく、根本的に「自分は豊かな存在である」「自分の人生には無限の豊かさが流れ込んでいる」という前提を無意識で持っている人が多いのです。源泉かけ流しの温泉を掘り当てたかのように、人生の豊かさは尽きることなく自分の人生に現れてくる。そんな感覚を持っているのです。
一方で、貧乏な人は、豊かさとのつながりを感じられていません。「自分は豊かさとは無縁だ」「自分は豊かさから切り離されている」と感じ、その代わりに恐れとは強くつながっている。だから、収入が減るのではと不安になり、貯金が減るのではとパニックになり、将来のことを考えるほど苦しくなってしまうのです。

お金がない状態でも「豊かさ意識」とつながる方法とは
では、今まさにお金に余裕がない人は、どうすれば豊かさ意識とつながれるのでしょうか。
私はこのことをメンターの1人、アラン・コーエンさんから教わりました。アランは「豊かさのピザの法則」として説明してくれました。
「自分の人生の豊かさ」が1枚のピザだとすると、お金は豊かさのピザ全体の1スライスにすぎません。豊かさの要素には、お金以外にもさまざまなものがあります。
・健康な体があること
・愛する家族や子どもが人生を共に過ごしてくれていること
・親が元気でいてくれること
・食べるものに恵まれた時代に暮らしていること
・パソコンやスマホがあること
・会社員なら、仕事を与えてくれる会社や上司がいること
・独立している人なら、案件をくれる人、紹介してくれる人がいること
そうした「すでにある豊かさ」に目を向けていくのです。
お金という豊かさのピザの1スライスが今は小さく見えるかもしれません。それでも、人生全体のピザを見渡せば、すでに与えられている豊かさはたくさんあります。そこに気付くことが、豊かさ意識を取り戻す第一歩になります。
私は、「心が先、現実は後」だと考えています。
お金の状況という現実も、いきなり生まれるものではなく、その人の意識の在り方から少しずつ形づくられていくものです。多くの人は、お金の不安があると、現実だけを変えようとします。もっと稼がなければ、もっと節約しなければ、もっと貯めなければと焦ります。
もちろん行動は大切です。しかし、種である豊かさ意識が変わらないまま、実だけを変えようとしても、同じパターンを繰り返してしまうのです。
豊かさ意識がある人は、たとえ一時的にお金が減っても、動じることはありません。お金があるときだけ安心するのではなく、お金がないときにも「自分は豊かであり、お金はどこからでも生み出せる」と感じられているのです。
貧乏体質とお金持ち体質を分けるもの。それは、単なる収入差ではありません。自分は欠けている存在だと見るのか、それとも豊かさを無限に生み出せる存在だと見るのか。お金の不安に飲み込まれそうなときほど、まずは「今、自分の人生にある豊かさ」を見つめ直してみてください。そうすると、現実のお金の状況も少しずつ変わっていくはずです。
お話を聞いたのは:亀井弘喜さん
心理カウンセラー・セミナー講師。東北大学卒業後、外資系コンサルティング会社、人材業界を経て独立。コーチングや心理学をベースに、キャリア、人間関係、家族、パートナーシップ、お金の悩みなど、人生全般の意思決定を支援している。これまでの受講者は1500人以上、相談者は延べ1万人以上。現在は、お金に対する思い込みや不安を扱う「お金のブロック解放セミナー」、安心感・つながり感・自己肯定感を育てる人間心理学講座「センターピース」などを展開。2024年には株式会社PERを設立し、外食事業にも参入。著書に『最強の俯瞰思考』(KADOKAWA)がある。
この記事の執筆者:廣田 美絵子(ライター・キャリアコンサルタント)
化粧品会社の人事部にて採用・教育業務に従事した後、広報を担当。教育関連企業へ転職し、広報業務を中心にキャリアを重ねる。現在はフリーランスとして活動し、キャリアコンサルタントとしても人のキャリアや働きがいをテーマに執筆・発信を行っている。






