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なぜ日本人が「手放した土地」を中国資本が買い占める? 重すぎる「相続税」が招く恐ろしい実態

日本の過酷な相続税が外国資本による土地買収を加速させる実態とは。不公平な税制が招く日本の危機について紹介します。 ※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

日本人から外国資本へ、流出し続ける日本の土地と相続税の関係とは? ※画像:PIXTA
日本人から外国資本へ、流出し続ける日本の土地と相続税の関係とは? ※画像:PIXTA

「先祖代々の土地を手放すしかない」という日本人の悲鳴の裏で、着々と進む外国資本による土地買収。日本の重すぎる相続税が、結果的に国土を売り渡す手助けをしているという皮肉な現実があります。

元内閣官房参与で数量政策学者の髙橋洋一氏は、著書『60歳からの知っておくべき政治学』のなかで、財務省のデータに隠された真実や、世界標準から大きくかけ離れた税制の実態など、大人世代こを身に付けておきたい政治知識を分かりやすく解説しています。

今回は本書から一部抜粋し、マイナンバー制度の普及によって合理性を失った相続税がいまだに残され、国益を損ねている構造的欠陥について紹介します。

<目次>

日本の相続税は突出して高い

筆者は「相続税ゼロ」を主張してきたが、その根拠を説明する。日本では相続税が高いと認識されているが、実際に先進国と比較しても突出している。

財務省の資料を見ると、英国やフランスと同等と記載されているが、注意深く読むとそれは一部の限定的なケースであり、実態は異なる。米国は相続税が実質的にゼロだ。課税最低限が10億円近くに設定されているため、ほとんどの人が課税されない。資料ではその部分がわかりにくく表現されており、財務省の作為的な意図を感じる。

G7で見ると、イタリアとカナダは完全に相続税ゼロである。米国を含めれば、7カ国中3カ国がゼロ。残る国々も日本より税率が低く、日本は最も厳しい水準にある。

日本の土地が中国資本に置き換わる理由

相続税の目的は所得税の補完だ。所得再分配機能を果たすためという理由だが、それならば本来は所得税側で対応すればよい。

現在はマイナンバー制度により所得の捕捉精度が向上しており、課税対象を漏れなく把握できる状況にある。日本では相続税で所得再分配を担う必要性はすでに失われている。所得税の捕捉精度が高まれば、理論上、相続税は廃止しても構わないということになる。

なお、中国には相続税が存在しない。これは共産党体制において、土地や企業といった生産手段が本来国有であるという建前があるためである。

しかし、実際には中国人が日本国内で不動産を購入し、その資産を保有し続けている。中国では相続税がゼロであるため、所有権は代替わりしてもそのまま法人内で継続され、課税の機会が事実上、発生しない。

法人所有であれば名義も変わらず、法人の出資者が死亡しても中国国内では相続税がかからないため、日本の不動産が恒久的に外国資本に保有され続けるという状況が起こり得る。

日本人は相続税の負担から不動産を手放さざるを得ない一方で、中国人は持ち続ける。これにより、実質的な中国資本による土地支配が進行するリスクがある。

業種間格差? 課税所得の補足率

相続税撤廃に対し、「格差が広がる」と反対する声があるが、それは本来所得税で対応すべき課題である。なぜなら理論上、相続税と所得税の両方を課すことは二重課税にあたるからだ。マイナンバーによって所得捕捉が徹底されている現在において、格差是正は所得税で完結すべきであり、相続税を残す必然性はない。

現在、相続税を廃止している先進国は少なくない。G7以外でもオーストラリア、スウェーデンなどがその例である。こうした国々では、捕捉精度の高い所得課税により税制全体の公平性を担保している。

日本でもかつて、課税所得の捕捉率に関する業種間格差の不公平感を表す「クロヨン」という呼称があった。これは給与所得者は9割捕捉されているのに自営業者は6割、農林水産従事者は4割しか捕捉されていないという意味だ。マイナンバー導入後、この格差は縮まりつつある。

現金取引も減少しており、今後はより正確に所得を把握できる。そのため、相続税の存在は本質的に合理性を失っている。所得税で再分配できる制度基盤が整った以上、資産移転に対してさらに課税する必要はない。

むしろ、相続税の高さは結果的に日本人の資産を流出させ、外国資本による土地所有を加速させるという重大な問題を生んでいる。今後は「税の役割は何か」「どの段階で課税すべきか」を明確にし、世界標準に近づく税制改革が求められる。

髙橋 洋一(たかはし・よういち)プロフィール
1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(内閣総務官室)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。2008年退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞。その他にも、著書、ベストセラー多数。YouTube「髙橋洋一チャンネル」の登録者数は132万人を超える。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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