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「税金が高すぎ!」「もっと儲かっている人から取るべき!」“不公平”にしか見えない税制のウラ

「なぜ自分ばかり税金が高いのか」。誰もが抱く不満の裏側はどうなっているのでしょうか。ミリオネアのお金事情に精通した元国税職員が解説します。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

「なぜ税金が高い?」不公平に見える税制のウラ側とは。※サムネイル画像:PIXTA

「なぜこんなに税金が高い?」不公平に見える税制の裏側に何がある? ※画像:PIXTA

「税金ってなんでこんな高いの!」「もっと儲かっている人から取るべきだ!」税金に対する不満は尽きませんが、その制度設計の裏側を知っていますか?

ミリオネアの預金通帳を調査してきた相続税担当の元国税専門官による『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(小林義崇著)から一部抜粋し、“不公平”に思える日本の税制の意外と知られていない成り立ちについて紹介します。
<目次>

税制は「公平」を重視している

自分の手元により多くのお金を残すためのセッティングを考えるうえで、避けて通れないのが「税金」です。所得税、消費税、住民税、固定資産税など、私たちの生活のあらゆる場面に税金が存在します。

毎月の給料から差し引かれる税金を見て、「これが少なくなれば、もっと投資できるし家計にゆとりが出るのに」と思われる方は多いのではないでしょうか?

私が税務署に勤めていた頃、「どうして自分ばかり多く払わされるのか」「もっと儲かっている人から取るべきでは?」といったように、税金への不満の声を日常的に聞いていました。

税務署の窓口対応で、「年金に税金がかかるなんて許せない。今すぐ税務署長を出せ!」と拳を振り上げた高齢男性から怒鳴りつけられたことは今でもよくおぼえています。

こうした不満は、私にも理解できます。

ニュースを見れば、国民の税・社会保険料の負担は高まる一方、グローバル企業などの税負担率が低いと取り沙汰され、「やっぱり税金は不公平だ」と感じてしまうのも無理はありません。

しかし日本の税制の成り立ちを学ぶと、実は何よりも「公平であること」が重視されてきた歴史が見えてきます。

日本の税制には、「公平」「中立」「簡素」という3つの原則があり、その中でもとくに重視されているものが、実は「公平」の原則なのです。

第二次世界大戦後の日本には、戦費調達のために作られた複雑で不公平な税制が残っていました。

これを見直すためGHQ (連合国最高司令官総司令部) はアメリカの財政学者カール・シャウプを団長とする使節団を派遣し、日本の税制改革に関する勧告 (シャウプ勧告) を行いました。

これにより「公平」「中立」「簡素」の三原則が導入され、今日の税制の礎になっています。

【税の三原則】

● 公平の原則
経済力が同等の人に等しい負担を求める「水平的公平」と、経済力のある人により大きな負担を求める「垂直的公平」がある。近年は、「世代間の公平」も重視

● 中立の原則
税制が個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにする

● 簡素の原則
税制の仕組みをできるだけ簡素にし、理解しやすいものにする

2つの「公平」とは何か

ここで、公平の原則の説明のなかに、「水平的公平」と「垂直的公平」という2つの公平があることに着目してください。この2つの視点を理解すると、「すべての人にとって完璧に公平な税金」の実現がいかに難しいかがわかります。

1つ目の「水平的公平」とは、「同じような経済力 (担税力) を持つ人には同じような税負担を求める」という考え方です。

この考えを反映した代表的な税金が消費税です。消費税は、買い物を多くした人ほど多く負担します。

そのため、「年収1000万円で年間200万円の支出をしたAさん」と、「年収100万円で貯金を取り崩して年間300万円の支出をしたBさん」では、Bさんの方が収入は低いにもかかわらず税負担が重くなります。

つまり、収入や職業などに関係なく、使ったお金によって税負担が決まるわけです。

もう1つの公平は「垂直的公平」と呼ばれ、こちらは「より大きな経済力 (担税力) を持つ人にはより大きな負担を求める」という考え方です。

垂直的公平を顕著に反映しているのが、所得税です。

所得税は個人の所得にかかる税金ですが、所得が高いほど税率が上がる「超過累進税率」が採用されています。これにより、高所得者ほど税負担は重く、低所得者ほど軽くなります。

相続税も、相続財産に応じて税率が上がるため、垂直的公平の考え方に立っています。

収入や財産が少なければ税負担は少なく、収入や資産が多くなれば税負担が重くなるのですから、こちらも公平な仕組みと解釈できます。

完璧に公平な税はない

興味深いのは、水平的公平と垂直的公平、どちらか片方だけに偏ってしまうと、むしろ大きな不公平を生んでしまうという点です。

試しに、「世の中の税金が消費税だけになった」と考えてみてください。これは水平的公平に極端に偏った世界です。

すると、所得税など他の税金がなくなる分、消費税の税率は100%を超えるかもしれません。そうすれば、年金生活者や失業中の人など、収入が少ない人は生活必需品を買うことさえ困難になります。

一方で、高所得者は所得税などがゼロになるので、むしろ手元にお金が残るでしょう。そうなると、すぐに「なぜ稼いでいる人から税金を取らないのか。不公平だ!」という不満が噴出するはずです。

今度は垂直的公平に極端に偏らせてみましょう。「世の中の税金が所得税だけ」という状況を想像してみてください。

この場合、消費税や固定資産税などがゼロになる代わりに、所得税の税率が跳ね上がります。

すると、収入がない人は一切税金を払う必要はなくなります。たとえ莫大な遺産で贅沢な暮らしをしていても、自ら所得を稼がない限りは税金はゼロ。

その分、バリバリ働いて高所得を得ている人が日本の税収を一身に背負うことになります。そんな世の中では、「いくら働いても税金で奪われる。こんな税制は不公平だ!」と高所得者は働く意欲を失ってしまうでしょう。

このように公平と一口に言ってもさまざまな尺度があるため、「この税さえあれば絶対に公平」という魔法の税制は作れません。

だからこそ政府は、複数の税金を組み合わせてバランスを取り、社会や経済情勢の変化に合わせて毎年のように税制を改正しているのです。

「税金は不公平」と感じられるかもしれませんが、その背景に、「公平であろう」と努力を続ける制度設計があることは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
  小林義崇(こばやし・よしたか)プロフィール
1981年、福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っている。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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