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「小学校の入学準備が地獄」「いまだにこんなことを? 」効率化の時代に“無駄を守る人”の本音

30年に及ぶ日本経済の停滞を生んだ構造的問題点とは?「守り」の姿勢を貫き続けた日本は、IT革命というビッグチャンスにも乗り遅れた。※画像:PIXTA

All About 編集部

「守ること」を優先してきた日本独特の仕組みの代償 ※サムネイル画像:PIXTA

「守ること」を優先してきた日本に大きな代償が…… ※画像:PIXTA

便利になるはずの技術が、なかなか生活に届かない。日本は「守ること」を優先することで、何を失ってきたのだろうか?

外資系金融出身の金融教育家・田内学氏の著書『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』から一部抜粋し、「守る」選択を重ねた日本経済が成長力を失い、停滞していった過程と、効率化の時代のなかで「無駄が守られ」続ける理由を紹介する。
<目次>

「守る」ことで失った30年

民泊は、ホテル業界の保護などを理由に年間180日までしか営業できず、オンライン診療も、“医療の質を守るため”として利用範囲が制限されている。IT技術で農業を効率化しようにも、株式会社による農地取得はハードルが高い。

日本では、新しい挑戦を始めようとすると、必ずといっていいほど、既存の業界を守る規制が立ちはだかる。

こうした規制が社会的に注目されたのは、1993年のことだ。その年、「規制緩和」が新語・流行語大賞の流行語部門の金賞を受賞した。きっかけは、あるタクシー会社の闘いだった。値下げを申請してから認可されるまでに、実に12年かかった。ただ値段を下げるだけでこれほどの年月が必要なほど、日本の規制は根深かった。

そして日本はIT革命の波に乗り遅れた

1990年代後半、日本にもIT革命の波が押し寄せた。大幅な効率化を進めるという意味では、産業革命以来の大きなチャンスだった。ところが、日本はこの波に乗り切れなかった。日本独特の規制や既存業界の抵抗が足を引っ張ったからだ。

携帯電話市場は、ガラパゴス化により海外企業の参入を阻んだが、気がつけば日本企業自身が世界から取り残された。動画配信もそうだ。テレビ業界や著作権の壁に阻まれているうちに、海外企業が世界を制した。音楽配信でも、日本は主導権を奪われてしまった。

国内企業を守るための規制が、結果として競争力を奪い、市場を海外に明け渡すという皮肉な現象が繰り返されてきた。

いつしか、私たちはデジタルサービスの多くを海外に頼るようになった。2024年だけでも、日本から海外へのデジタルサービスの支払いは約6.8兆円にのぼる(財務省「国際収支状況」)。今後も増え続けると予測され、円安をさらに加速させるだろう。

「守り」の姿勢を続けた結果、日本の生産性は停滞した。一人当たりのGDPは、2000年には世界第2位だったが、2023年には34位まで転落している。

効率化が進む時代に「無駄が守られる」理由

問題はお金だけではない。私たちの時間にも影響が及んでいる。病院や役所で、何度も同じ住所や名前を書かされた経験はないだろうか。こうした非効率は、私たちの日常を圧迫する。衆議院の文部科学委員会で、ある代議士がこんな趣旨の発言をした。

「小学校の入学準備が地獄のようだ」

1年生が使う算数セットの数え棒やおはじき一つ一つに名前を書く作業は、親にとって大きな負担だ。効率化が進む時代に、「なぜ、いまだにこんなことを? 」と疑問に思う場面は、日常の中にあふれている。

「昔からそうだったから」という理由で無駄が守られている。いや、もしかしたら、誰かのビジネスを守るために続けられているのかもしれない。

私たち自身も、気づかないうちに効率化を妨げている可能性だってある。

これから、日本は人手不足が深刻になるが、チャンスに変えられるかもしれない。AIやロボットなどを活用すれば、効率化は進み、生産性を高められる。

しかし、新しい挑戦はいつも「守る側」の抵抗に直面する。その背景にあるのは、こんな不安だ。

「全体が豊かになっても、自分だけが取り残されるかもしれない」

社会の成長は嬉しい。でも、自分の取り分が減るのは困る。そんな不安が、守りへと私たちを駆り立てる。知らない間に、奪い合いの空気が生まれてしまう。そうなれば、本来あるはずの全体の可能性が、しぼんでいく。

どうすれば分け合える社会が作れるのだろうか? これは国レベルの話だけではない。会社や職場でも起きている。
  田内 学(たうち・まなぶ)プロフィール
社会的金融教育家。お金の向こう研究所代表。2003年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。2019年に退職し、執筆・講演活動を通じて「お金と社会の関係」を伝える活動を始める。『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」で総合グランプリを獲得した。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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