Q:老後貯金として2000万円ありますが、物価が上がり、老後破産してしまうのではないかと心配です
「うちは老後貯金として2000万円ありますが、スーパーとかに行くとお米の価格は2倍だし、物価が1、2年前よりも、みるみる上がっています。老後破産しないか不安です。あとは何を準備したらいいでしょうか?」(50代後半の夫婦)
物価が上がっていて不安に(画像:PIXTA)
A:2000万円はあくまでモデルケースで、必要な老後資金は家庭ごとに異なります。まずはご自身の家計と将来の年金額を把握し、生活の見直しや利用できる制度を知ることが安心につながります
2019年のいわゆる「老後2000万円問題」は、特定の夫婦の生活を前提にしたモデルケースにすぎません。しかし当時は大きな不安を呼び起こし、物価高が続く現在では、その不安がむしろ現実味を帯びて感じられる方も多いかもしれません。ご相談の50代夫婦の方が2000万円の貯蓄をお持ちとのことですが、この金額で老後が安心かどうかは、人それぞれの生活水準や住まい、働き方によって大きく異なります。2000万円も必要ない家庭がある一方で、それ以上必要な場合もあります。
老後に必要な資金を考えるうえでは、まず「現在の暮らしに一体どれくらいお金がかかっているのか」を知る必要があります。年間の支出と今後受け取る年金や働く予定、そして今ある貯蓄を組み合わせて、足りるのか足りないのかが決まってきます。家計簿アプリなどで毎月の支出を「見える化」すると、意外な発見もあるはずです。
また、生活費の中でも、近年影響が大きいのは光熱費と食費です。電力会社やガス会社の契約を見直すだけで負担が軽くなることがありますし、まとめ買いよりも「買ったものを確実に使い切る」工夫をした方が節約につながることもあります。
必要以上のサブスクや保険がそのままになっているケースも多く、固定費の見直しは老後不安を和らげる効果があります。
高齢者向けの制度の利用など、「知らなかった」が損につながる?
高齢者向けの制度は、実は想像以上に多くあります。交通機関の割引や医療費の負担軽減、介護保険のサービス、住宅の改修補助、自治体独自の支援など、知っているだけで支出を抑えられる場面は増えます。「知らなかった」が一番の損につながりますので、自治体の広報誌や公式Webサイトは定期的にチェックしておくと安心です。一方で、資産そのものに働いてもらうという考え方もあります。とはいえ、年齢を重ねるほど運用リスクは慎重に考える必要があり、余裕資金で、理解できる範囲の商品を選ぶのが大前提です。お金を大きく増やすよりも「減らさない」方向で考える方が向いているでしょう。
そして、可能であれば「元気なうちは働き続ける」ことが、老後のもっとも確実な備えになります。収入が増えるだけでなく、社会とのつながりを保つことが心の安定にもつながります。
厚生年金に加入できる働き方であれば、70歳まで加入でき、将来の年金が少しずつ増えていくメリットもあります。
ご相談者はまだ50代です。働き方の選択肢も多く、利用できる制度もたくさんあります。老後不安は「知らない」ことから生まれることが多いため、まずは現状を整理し、使える制度を知ることが重要です。シンプルな生活を意識しながら、無理なくできる対策を積み重ねていけば、老後はより安心したものになります。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)






