宮本 亜希子(みやもと あきこ)先生 プロフィール
BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)美容婦人科指導医・日本専門医機構認定 産婦人科専門医。腟ヒアルロン酸や婦人科形成手術を担当。産婦人科医として、周産期や婦人科美容、アンチエイジングなど、女性の健康や美しさに関わるさまざまな分野に専門知識を持つ。3児の母で、趣味は料理、筋トレ、音楽。
更年期症状への最新アプローチ
――更年期症状の主な治療法にはどんなものがあるのでしょうか。宮本先生(以下、宮本):保険診療の中心となるのは、ホルモン補充療法です。米国泌尿器科学会のGSMガイドラインでは、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)には全身投与よりも腟錠やクリームなどによるエストロゲンの局所投与がよいとされています。
このほか、自由診療で私が行っているのは6種類のアミノ酸と非架橋ヒアルロン酸を配合した「腟育注射」。腟粘膜に注入し、腟の乾燥などによる痛みやかゆみ、頻尿といった症状を和らげる施術で、実は私が国内での臨床研究に携わっている新しい治療法です。
自由診療では腟レーザーも選択肢になりますが、ガイドラインでは現時点で「条件付きで検討」とされています。条件とは、施術者が十分な症例経験を持つこと、合併症に対応できる技術があること、症例に応じて適切に機種や設定を選べること。
顔のシミに対してレーザーを使い分けるように、腟にもその人の症状や年齢に合わせた対応が必要なのは当然のことですが、美容目的のクリニックが安易に導入する例もあるのが現状です。腟レーザーの効果は、施術する医師の知識や技術に左右されることをぜひ知っておいてください。
――ホルモン補充療法は海外では広く普及していますが、日本では2%程度といわれ、普及率が極めて低いそうですね。理由の1つとして乳がんなどの発症リスクを懸念する人が多いそうなのですが。
宮本:乳がんには女性ホルモンのエストロゲンに反応して増殖する「ホルモン受容体陽性がん」があって、それらの乳がんは閉経前後の発症リスクが高いんです。閉経してエストロゲンが分泌されなくなるとリスクは低下します。ところが、ホルモン補充をするとエストロゲンの影響を受ける期間が長くなるため、発症リスクがわずかに高まるんです。ですが、その他の主なリスク要因に比べれば、ホルモン補充療法によるリスクは低いとされています。大事なのは早期発見であり、定期的にがん検診を受けることです。
――なるほど。そういうことなんですね。
気軽に受けられる「腟の健康診断」
――対処はしていないものの、何らかの違和感があって自分の腟内環境が気になっている人も多いと思います。先生は腟の健康指数の検査も行っていらっしゃいますね。宮本:国際的な指標に基づき、腟内の潤い、粘膜の状態、弾力、pHといった腟の健康状態を詳しくチェックしています。これは自由診療で行っていますが、多くの症例を見てきた産婦人科専門医だからこそできる診断なんです。
保険診療では、はっきりした病名がないと「とりあえず一度見てみましょう」ということができないんですよね。そのため自由診療になるのですが、予防医療も大切なこと。クリニックでは、施術や治療がなければ初診料のみで、診断自体は無料で受けられます。
――まずは自分の腟の状態を知るというのは、更年期と上手に付き合っていくためにも大切ですね。
骨盤底筋トレーニングは毎日の歯磨きと同じ
――家でできる腟トレとして、骨盤の底にある骨盤底筋のトレーニングなどがありますが、更年期世代におすすめのセルフケアについて教えていただけますか。宮本:骨盤底筋トレーニングは、毎日の歯磨きや美容液がキレイを保つために必要なのと同じ。腟を健康に保つのに効果的です。安全でお金もかからないですし。「3秒締めて10秒休む」ケーゲル体操は、電車での移動中や、会議中など、いつでもできます。
――腟に入れて骨盤底筋を鍛えるトレーニングボールなどもありますね。
三松:ボールを入れてみると自分の腟の状態を把握しやすくなりますよね。もし入れようとして痛い、入らないということがあればケアが必要なのかも。
宮本:セックスやケアをしていないと、50代以降の方は急には入らないかもしれません。がん検診で内診する時にも指や器具が入らない人はいます。
セルフプレジャーアイテムの使用も
三松:私は以前、初心者向けのセルフプレジャーグッズ5選を紹介したのですが、その中で、男子の指より細ーいスティックを挙げたんですよ。自分の指が怖くて入れられない人もいるので、まずはこういう腟内挿入系のプレジャーアイテムを使用するのはおすすめですね。宮本:何か入れてみて、以前と違って痛みがあったり血が出たりするようなら婦人科へ行ってみた方がいいかもしれませんね。
三松:セックスだけでなく、セルフプレジャーもいいし。日常的にトレーニングやケアもしっかりして、がん検診の時もスルスル器具が入るような腟にしておきたいですね。久々にパートナーに求められても安心安全体制を整えておくのは夫婦円満の秘訣(ひけつ)です。
宮本:保守的な日本ですけど、真由美さんみたいな人が増えていくといいですよね。
>【#1】から読む:選んではいけない病院とは? 産婦人科専門医に聞く「更年期世代の女性が知るべきこと」







