モーリス・ユトリロ展(SOMPO美術館)
■2025年12月14日まで 20世紀初頭のパリの街並みを描き、戦前から日本でも紹介され人々を魅了してきた風景画家、モーリス・ユトリロ。画家シュザンヌ・ヴァラドンの婚外子として誕生し、幼少期からアルコール依存症を発症。その治療の一環で始めた絵画制作で才能を発揮し、画家となったユトリロの複雑な生い立ち、その後の人生と作風の変化などを、展示されている約70点の作品でたどることができます。 会場は、画家としての出発点である「モンマニー時代」、建物の白い壁の表現にこだわった「白の時代」、原色に近い色彩を使い、人物も描くようになった「色彩の時代」の3つに分けられています。中でも建物の漆喰の壁を、絵の具に石膏や砂、鳥の糞などを混ぜて質感まで表現した「白の時代」の作品は圧巻。建物に沿うように描かれた道の表情も魅力的で、吸い込まれるようにずっと見ていたくなる作品群です。
また出生時のユトリロの手型から母・ヴァラドンが作らせたというブロンズは、とても愛くるしく印象的。複雑だったといわれる親子関係にも、確実に愛情があったのが伝わってきます。
©Hélène Bruneau 2025
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モーリス・ユトリロ展
ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢(東京都美術館)
■2025年12月21日まで2025年から来年2026年にかけて、日本人が大好きな芸術家・ゴッホの展覧会が全国各地で複数行われています。何度行われても常に人気のゴッホの展覧会はこれまでさまざまなテーマで行われてきましたが、上野の東京都美術館で開催中の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」は、彼の“家族”を切り口にした初の企画展です。 生前評価を得られなかったゴッホの死後、弟テオ、その妻ヨーが、彼の作品を世に出すべく奔走。また作品がむやみに分散しないよう保存にも力を入れ、それが世界一のゴッホ作品を所蔵する「ファン・ゴッホ美術館」の設立へとつながりました。今日私たちがたくさんの作品を見ることができるのも、コレクションを大切に守り抜いたゴッホ家の人々のおかげなのです。 今回はゴッホの作品30点以上と、日本初公開の手紙4通などが展示。遺族たちのゴッホへの温かい愛情を感じることができる美術展です。
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ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
※土日、祝日および12月16日(火)以降は日時指定予約制
※巡回展:2026年1月3日(土)~3月23日(月) 愛知県美術館
静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝(静嘉堂@丸の内)
■2025年12月21日まで 「大阪・関西万博2025」の開催記念として、20世紀初頭に世界各国・日本各地で行われた博覧会に、岩崎家(静嘉堂)から出品された国宝、重要文化財を含む20件余りを一挙公開するという豪華な展覧会。静嘉堂の代名詞ともいえる国宝「曜変天目(稲葉天目)」をはじめ、日本画や油絵、工芸品などジャンルはさまざまですが、どれも万博に出品した=世界に誇る日本を代表する芸術品ばかりです。 今後国宝になるのではないか? と期待される室町時代後期の水墨画家・式部輝忠の稀少な山水図屛風が、修復後16年ぶりにお目見え。
さらに幕末、明治初期の日本画家・菊池容斎が描き、1910年の日英博覧会に出品された「阿房宮図」は、秦の始皇帝が建造した大宮殿・阿房宮に、秦を滅亡させた項羽が火を放ち3カ月燃え続けたという様子を描いた作品。美術愛好家はもちろん、歴史好き、そして大人気マンガ『キングダム』ファンも必見の未来の国宝候補作です。
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静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝
以上、年内になんとしても見ておきたい、東京で注目の3つの展覧会をご紹介しました。慌ただしい年の瀬ですが、時間を捻出してぜひ!











