複雑すぎる年収の壁。働き方はどう考えたらいい?(画像:PIXTA)
ニュースでは「改正」「支援」「新制度」などの言葉が飛び交い、いったい何がどう変わって、いくらまで働けばいいのか?と誰もが迷子になっているのが現状です。
2025年、「年収の壁」に大きな制度改革があり、壁はより複雑になりました。そんな中、あなたの働き方は“損をしない”選択ができているでしょうか。知らないままでは、気付かぬうちに手取りが大きく減ってしまうかもしれません。
非正規雇用で働く人のうち、なんと6割が「働き控え」をしているといわれます。
「106万円」「130万円」「150万円」など、いったい自分にとっての“壁”はどれなのか?
「年収の壁」に縛られない新しい働き方、自分らしいキャリアの再設計のヒントもお届けします。
ひと目でわかる!2025年・2026年の「年収の壁」をチェック
年収の壁とは「扶養の壁」です。扶養されている人の年収が一定額を超えると、税金や社会保険料の負担が増えるボーダーラインのこと。表は、2025年10月末時点の主な年収の壁です。
ひと目でわかる「年収の壁」[2025/2026年版]。『ついに壁が崩れた! いくらまで働くのが得? パート・アルバイトが「年収の壁」で損しない本』(宝島社)より抜粋
Q. 扶養に入りながら働くなら年収いくらがお得なの?
A. 老後の年金を考えず、現在の手取り最大化を目指すなら、年収105万円または129万円!扶養から外れないようにして、できるだけ手取りを減らしたくないのであれば、社会保険上の壁を超えない範囲で働くのがよいでしょう。週20時間の壁(実質106万円)に該当する人は年収105万円に抑えれば税金も社会保険料も発生しません。該当しない人は年収129万円に抑えれば社会保険料は発生しません。このとき住民税は発生しますが、それほど高額ではありません。
扶養に入る前提ならば年収は105万円または129万円までに抑えておくのがよいでしょう。
これまでの「106万円の壁」に該当するのは以下の条件を全て満たす人です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金月額8万8000円以上(年約106万円以上) ※2026年10月に撤廃予定
- 従業員が51人以上いる ※2027年10月から段階的に撤廃予定
- 雇用期間が2カ月を超える見込み
- 学生でない
今後賃金や従業員の要件が撤廃されます。これにより、106万円の壁は正しくは「週20時間の壁」(実質106万円)となります。
Q. 社会保険上の壁を超えて稼ぎたい人は、いくら稼げば社会保険加入前の手取りになる?年金はいくら増える?
A. 週20時間の壁(実質106万円)に当てはまる人は124万円、130万円の壁に当てはまる人は152万円が目安!年収152万円で20年働くと、厚生年金は年約16万円増える!年収が106万円(または130万円)を超えると、社会保険料の支払いが発生するため、手取りが減ります。週20時間の壁(実質106万円)に当てはまる人は年収約124万円、130万円の壁に当てはまる人は年収約152万円まで働くと年収105万円・129万円のときの手取りを回復します。
124万円・152万円以上働くと、税金や社会保険料も増えますが、その分手取りが増えるので「働き損」のような事態は起こりません。
仮に、年収152万円(月収約12万7000円)で20年間厚生年金に加入していた場合、厚生年金は年16万5700円(月約1万3800円)増える計算ですので、老後の年金額は国民年金83万1700円(2025年度満額)+厚生年金16万5700円=年99万7400円に増えます。65歳から30年間年金をもらうとすると、厚生年金の総額は16万5700円×30年=497万1000円となります。
Q. 扶養者の税金が上がるから、160万円の壁は超えないほうがいい?
A. 160万円の壁を超えたとしても、世帯の収入は増やせます!被扶養者の年収が160万円から202万円に42万円増えたとしても、扶養者(年収480万円)の所得税は約2万2000円、住民税は約3万3000円しか増えません。この場合、被扶養者の年収の増えるスピードのほうが速いので、世帯の収入は増やせます。
さらに、被扶養者の老後の年金が増えることなども考えると、扶養者の税金を気にして160万円の壁を超えないのはもったいないでしょう。
Q. 税金や社会保険料を増やさないでお金を増やすおすすめの方法はない?
A. NISAなら税金・社会保険料は増えません!NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)で得られた利益は非課税ですし、社会保険料も増えません。例えば、NISAを使って高配当株(株価に占める配当金の割合〈配当利回り〉の高い銘柄)に300万円投資し、配当金を受け取るとします。この高配当株の配当利回りが仮に4%だったとしたら、12万円が毎年そのまま手取りとして増える計算です。
人間が働ける時間には限りがありますので、お金自身に働いてもらう「投資」は味方につけたいところです。ただし、投資にはリスクがつきもの。生活に必要な金額まで投資に回さないようにしましょう。
Q. 「130万円の壁」を超えたことを内緒にしているのですがバレないですよね?
A. バレます!130万円の壁を超えないつもりで働いていたものの、実際には130万円を恒常的に超えていたとします。この場合、扶養から外れてしまいますが、扶養者に年収が130万円を超えたことを伝えなければバレないのでは?と思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
健康保険の扶養は、扶養に加入する際に収入などを確認されます。その後、通常は1年ごとに状況が変わっていないかを調査する「扶養の再認定」が行われます。扶養の再認定の調査方法はさまざまですが、被扶養者の源泉徴収票や直近3カ月の給与明細など、収入のわかる書類を提出しなければならない場合はバレてしまいます。
扶養から外れていたことがわかると、被扶養者の扶養が解除され、扶養の条件を満たさなくなった期間をさかのぼって社会保険料などを支払う必要があります。
Q. 年収120万円、扶養内で働いている場合、iDeCoは意味ある?
A. 税金を減らす効果が得られます!iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、自分で出した掛金を運用して、その成果を原則60歳以降に受け取る制度です。運用で得られた利益が非課税にできるうえ、毎月の掛金が全額所得控除できるので、所得税や住民税を減らすことができます。国民年金の第3号被保険者(被扶養者)の場合、月額2万3000円(年27万6000円)まで掛金を出すことが可能です。
2025年の年収の壁引き上げにより、所得税は年収160万円+社会保険料控除の分までかからないため、年収120万円の場合減らせる所得税はありません。しかし、住民税は1万7000円(課税所得12万円×10%+5000円)かかります。仮にiDeCoの掛金を月1万円(年12万円)出していたら、住民税は1万2000円(12万円×10%)安くできます。
Q. 今後、厚生年金に加入して働く人が増えるのは本当?
A. 確定ではないですが、ほぼ間違いない状況です!2024年7月に発表された財政検証(5年に1度行われる年金財政の点検)の資料によると、厚生年金に加入して働く人が見通しを上回ったことで、年金財政が改善していることが示されました。また、「被用者保険の更なる適用拡大」の試算でも、加入者が多くなるほど年金財政や将来の給付水準に好影響だとしています。
厚生労働省の資料によると、企業規模の要件がなくなることで新たに約70万人が社会保険に加入すると見られています。こうした状況を踏まえると、今後厚生年金に加入して働く人が増えるのはほぼ間違いない状況だといえるでしょう。







