『私の老後のお金大全 一番シンプルで堅実な人生後半のお金の備えガイド』(井戸美枝著)では、どの世代でも気になる「老後のお金の疑問」について、年金問題を得意とするファイナンシャル・プランナー(CFP)で、社会保険労務士の著者が一問一答形式でやさしく解説しています。
今回は本書から一部抜粋し、シングル世帯の年金事情と、多くの人が直面する「親の介護問題」、特に経済的リスクの大きい「介護離職」を避けるための具体的な方法について紹介します。
Q. シングル1人暮らしの年金生活は大変?
会社員時代の平均年収が400万円、厚生年金加入期間が30年の場合、共働き世帯の年金見込み受給額は2人の合計で月約25万円(※夫婦2人の平均年収と厚生年金加入期間が同じとして試算)。A. 1人分の年金での生活は厳しめ。介護離職の落とし穴に要注意
一方、単身世帯の見込み受給額はその半分の月約12万円。
年金受給に関してシングルが不利ということはありませんが、一方で1人暮らしでも、2人の生活費の半分にはならないとよくいわれます。
1人でも家賃や公共料金など基本的な生活費はかかることを考えると、2人世帯よりも単身世帯の方が、公的年金だけで老後を送るのは、より厳しいといえます。
そこを踏まえて、なるべく若い時から、コツコツとお金を積み立てて、年金に補填(ほてん)できる資金を貯めることが第一。何かしらのスキルを身に付け、少しの収入でもいいから長く働いて稼ぎ続けることも大切になります。
●難関は親の介護問題
また、シングルの人生で意外と大きな難関として立ちはだかるのが親の介護問題です。
親の介護が発生すると、本人も周りの親族も、単身だからという理由で、仕事をやめて親と同居して面倒を見るという考えになりがちです。
しかし、介護離職をするのは絶対にNG。介護のために退職し、親の年金で生活し、親を見送った後に親の年金収入を失って経済的に困窮するというのは最も避けたいパターンです。
介護を理由に一度退職し、転職した場合、年収は男性でも平均4割ダウンするというデータもあります。元のキャリアや収入を取り戻すのは簡単ではないことも覚えておきましょう。
●介護施設を探す前にやること
親の介護が発生したら、人事部や総務部に相談し、法的に保障されている介護休暇制度と介護休業制度をまず利用します。
同時に親が暮らす地域の、地域包括支援センターに相談に行き、公的サービスを使いながら、親自身の年金と財産の範囲で可能なサポートを受けられる仕組みをつくりましょう。
介護の重度にもよりますが、慌てて介護施設を探して、入居させるのは得策ではありません。親本人が今までの生活ベースを崩せず、安心して生活を続けられる仕組みはないかまずは検討してみてください。
介護離職は絶対しないと心に決めて、他の親族とも協力しながら、介護と仕事を両立させる生活を続けていきましょう。
井戸 美枝(いど・みえ)プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)、社会保険労務士、経済エッセイスト、社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員を歴任、国民年金基金連合会理事。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題について解説している。近著に『ゼロ活 ~お金を使い切り、豊かに生きる!』(扶桑社)、『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(講談社)、『ひとりで自分資産はつくれる 52歳からお金を貯める・増やす』(主婦の友社)など。







