離婚

50代からの「熟年離婚」、失敗しない5つのポイント……人生の折り返し地点で決断した人の本音

「自分らしく生きたい」と前向きな理由で熟年離婚を選ぶ人が増加しています。 熟年離婚は終わりではなく新たな“はじまり”と見なされている今、失敗しない「熟年離婚」の準備について離婚問題の専門家視点で解説します。※画像:PIXTA

岡野 あつこ

岡野 あつこ

離婚 ガイド

夫婦問題を解決に導くライフアップカウンセラーのパイオニア。特に離婚問題においては28年間で35,000件以上の相談を手がけ、どうしたら幸せになれるか親身にアドバイス。的確で歯切れのよいコメントは、テレビ番組・ラジオ・講演などでも、多くの人の共感を得ている。元祖・離婚カウンセラー養成講座を開講中。

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50代は人生の折り返し地点であり、「熟年離婚」決断の時!? ※画像:PIXTA

50代は人生の折り返し地点であり、「熟年離婚」決断の時!? ※画像:PIXTA

「残りの人生を自分らしく生きたい」という前向きな動機で熟年離婚を選ぶ人が増加している時代。ひと昔前のように、配偶者の不貞や暴力、借金などの“明確な理由”だけが離婚のきっかけとは限らなくなっています。

約4人に1人が熟年層で離婚しているという数字も、その変化を物語っています。人生100年時代、50代は人生の折り返し地点とも言えます。「これまでの50年をもう一度生きられるかもしれない」と考えた時、「私はこれからどう生きていきたいのか?」という問いを避けることはできません。結婚も離婚も、目指すゴールが「その人が幸せになること」だとしたら、熟年離婚は“終わり”ではなく“はじまり”にもなるもの。今回は、実際に決断して幸せをつかんだ人々の背景にある5つの理由をひもときます。
<目次>

熟年離婚は前向きな選択になってきた

長い結婚生活の中で、家族を最優先に走り続けた人ほど、子育てや介護がひと段落した瞬間に立ち止まるもの。「この先の自分は、誰のために、何を大切に生きるのだろう」と考えるからです。

離婚にネガティブなイメージが根強く残る一方で、「私らしさ」を取り戻すことへの肯定感は強まっています。大切なのは、「離婚=破壊」と考えるのではなく、「今の関係を続けるか、離れるか」という選択肢を、自分の価値観や健康、生活の質に照らして丁寧に比較することです。

結果として「離れる」が最適解になる人もいれば、「再構築」に向けて舵を切る人もいます。いずれにしても、熟年離婚は、逃避ではなく、人生の主導権を取り戻すための現実的で前向きな選択肢の1つなのです。

熟年離婚を決断した理由1「このままで終わりたくない」

長い結婚生活は、安心と同時にマンネリも招きます。会話は連絡事項だけ、心はすれ違い、ただ同じ空間を共有しているだけ……という毎日に、ふと「私の人生はこのまま終わってしまうの?」という心の声が聞こえてくることもあるでしょう。

実際に離婚を決断した人の多くは、「残りの人生を自分らしく生きたい」「もっと充実した毎日を送りたい」といった強い思いが、熟年離婚への一歩を踏み出す原動力になっているようです。

その直感は身勝手な思いつきとは限りません。長年の我慢の積み重ねが生んだ心の危険サインであり、同時に人生のリセットボタンでもあるのです。

熟年離婚を決断した理由2「妻・母・嫁の役割から卒業したい」

「妻」「母」「嫁」は、もちろんすべて大事な役割ではあるものの、じつはそのどれもが「自分そのもの」ではないことも。これまで、家族のために頑張ってきたからこそ「そろそろ私自身の人生を生きてもいいのでは」と思うのは、むしろ自然なことかもしれません。

役割に一生懸命だった日々を卒業してみると、かつて好きだった本や諦めていた勉強、行きたかった街や会いたかった友人など、さまざまなものを通じて自分らしさを少しずつ取り戻していくことができます。

役割からの卒業は、家族の否定ではなく「役割以外の私」を認めること。自由を選ぶ権利は、誰にでもあるのです。

熟年離婚を決断した理由3「夫婦生活のストレスから解放されたい」

「夫源病」という言葉が広まっているように、配偶者との関係が慢性的なストレス源になり、頭痛や不眠、抑うつや動悸といった心身の不調につながるケースは少なくありません。「このまま我慢し続ける私」と「距離を取り、健やかさを取り戻す私」をてんびんにかけた時、後者の選択で幸せになる人もいます。

離婚は関係を壊すものではなく、自分の健康な心身を守るもの。それが当てはまる人には、配偶者との距離ができたことで冷静に向き合うこともでき、別の形で関係を再構築する可能性も生まれるのです。

健康は最も大切な資産です。心身の安全を最優先に考えて決断することは、きっと人生の質を高めてくれるでしょう。

熟年離婚を決断した理由4「新しい自分に挑戦したい」

「いつかカフェを経営したい」「資格を取って働きたい」といった夢を、勇気を出して話したのに、配偶者や子どもから「今さら何を」と笑われ、尊厳を傷つけられた――そんな体験が、熟年離婚を決意するきっかけになることもあります。

熟年離婚は、挑戦する権利を取り戻す再宣言でもあります。「誰の許可もいらずに挑戦できる自分」になることで、その後の毎日に再び意味や情熱が生まれるのです。

挑戦は若さの特権ではありません。時間や体力、お金、スキルを現実的に計画すれば、熟年離婚をきっかけに新たな輝きを取り戻すことも十分に可能です。

熟年離婚を決断した理由5「自分らしく生きる覚悟が決まった」

人生の折り返し地点あたりに立つと、私たちは自然と「残りの人生の主役は、もう誰かに譲りたくない」という気持ちが生まれるもの。熟年離婚は、その覚悟を行動に置き換えた、象徴的なライフイベントです。

住まいや働き方、友人関係や時間の使い方など、すべてを自分自身で考え、選び、決めることではじめて「自分自身の足で歩いている」という実感が得られるようになるのです。

熟年離婚の覚悟は孤立ではなく、自立のスタートです。

熟年離婚で後悔しない! 5つの準備ポイント

離婚はしないに越したことはありません。ただし前向きな熟年離婚は、人生の質を守り高めるための大事な選択肢になります。熟年離婚を考えるなら、まずは次の準備をはじめましょう。

(1)自分の本音の棚卸し
何に疲れ、何にワクワクするのか。書き出すと考えがまとまります。

(2)安全と健康の確保
心身のケアが必要で、配偶者からの暴力や脅しがある場合は専門窓口へ相談しましょう。

(3)生活設計
住居や収入、年金や保険など数字を把握し、見直すことで離婚後の怖さは軽減できます。

(4)支援の活用
離婚カウンセラーや弁護士、ファイナンシャルプランナーなど、離婚の不安はプロに相談するのも心強いでしょう。

(5)伝え方の設計
感情の爆発ではなく「事実」と「希望」で冷静に家族に気持ちを伝えましょう。

「離婚するのか修復するのか」、その結論は人それぞれです。しかし、その先にはきっと幸せが待っています。それは、自分らしく生きることを選んだ人だけが得られる、最高のよろこびなのです。
 
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