住宅購入のお金

利用者が増えている「ペアローン」利用するときは何に気を付ければいい?【専門家が解説】

新築分譲マンションの価格が高騰する中、「ペアローン」の利用が増加しています。ペアローンを組む際に知っておくべきリスクと対策について、住宅ジャーナリストの山下 和之氏に伺いました。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

新築分譲マンションの価格が高騰する中、夫婦がそれぞれにローンを組む「ペアローン」の利用が増加しています。リクルートの最新調査では、住宅ローン契約形態のうちペアローンが全体の約4割(37%)を占めています。

ペアローンを組む際に知っておくべきリスクと対策について、住宅ジャーナリストの山下 和之氏に伺いました。

ペアローンとは?
ペアローンとは、夫婦それぞれが主債務者として住宅ローンを契約し、お互いのローンに対して連帯保証人となる仕組みです。夫婦で別々のローンを組むため、通常の単独ローンより借入総額を増やせるメリットがありますが、リスク発生時は夫婦が同時に債務を負うことになります。

要注意!ペアローンはリスクが「倍」になることを認識

夫婦でペアローンを組むこと自体は、高額物件を手に入れるための有効な手段の1つです。しかし、そこには非常に重大なリスクが伴うことを、まず認識していただきたいです。

夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合、リスクは2人分あるということです。離婚、病気、失業など、人生におけるリスクはさまざまです。ペアローンは、これらのリスクを夫婦で2倍にしてしまうということを、特に若いカップルの方は慎重に考えてほしいです。

ペアローンがリスクを2倍にする最大の理由は、夫婦のどちらか一方に何かあっても、残された側が自分のローンと、相手のローンの「連帯保証人」としての責任の両方を負う点にあります。

例えば、夫が病気や事故で働けなくなった場合を考えてみましょう。

夫の収入が途絶え、夫のローンの返済が滞る

妻は、自分の収入から自分のローンの返済を続ける

妻は、夫のローンの連帯保証人として、夫の返済分も肩代わりする義務が生じる

つまり、妻は「自分のローン」と「夫のローン」の両方を、1人で返済し続けなければならないという、極めて危機的な状況に追い込まれるのです。特に、年収の高い「パワーカップル」によるペアローンが増えており、そのリスクに対する十分な計画がされていないと私は感じます。

(編集部補足)
団体信用生命保険(団信)に加入している場合、契約者が亡くなったり高度障害状態になった際には、その人(債務者)のローンは保険で完済されます。ただしペアローンは夫婦それぞれが別の契約となるため、一方が亡くなっても、もう一方のローンは残ります。また、離婚や失業、収入減などの生活リスクは団信の対象外となるケースが多いため注意が必要です。

なお、近年では夫婦どちらかに万一のことがあった場合に、残された配偶者のローンも完済される「ペアローン団信」を扱う金融機関も登場しています。ただし、利用には条件があり、保険料(または金利上乗せ)が発生することも多いため、内容をよく確認した上で判断しましょう。

リスク対策の鍵は「自己資金比率20%」

ペアローンで組んだ高額なローンが破綻してしまうと、自宅の売却を余儀なくされます。その際、売却額でローン残高をゼロにできるかどうかが命運を分けます。

万が一の事態に備え、私は必ず「自己資金を20%以上用意する」よう強く推奨しています。

自己資金が少ないと、売却してもローンが残る“オーバーローン”になりやすい。そうなれば、債務整理や自己破産といった、人生を左右する事態に陥ります。住宅価格が5年で20%下がったとしても、20%の頭金(自己資金)を入れていれば売却でローン残高をゼロにできる──これが20%の根拠です。

ペアローンは慎重な計画の上に成り立てば、家族の夢を叶える有効な手段。借りる前に、夫婦で“もしも”について話し合っておくことが大切です。

教えてくれたのは……山下 和之氏(住宅ジャーナリスト)
新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。
【編集部からのお知らせ】
・「家計」について、アンケート(2025/11/30まで)を実施中です!

※抽選で20名にAmazonギフト券1000円分プレゼント
※謝礼付きの限定アンケートやモニター企画に参加が可能になります
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品や投資行動を推奨するものではありません。
投資や資産運用に関する最終的なご判断はご自身の責任において行ってください。
掲載情報の正確性・完全性については十分に配慮しておりますが、その内容を保証するものではなく、これに基づく損失・損害などについて当社は一切の責任負いません。
最新の情報や詳細については、必ず各金融機関やサービス提供者の公式情報をご確認ください。

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます