ペアローンを組む際に知っておくべきリスクと対策について、住宅ジャーナリストの山下 和之氏に伺いました。
ペアローンとは?
ペアローンとは、夫婦それぞれが主債務者として住宅ローンを契約し、お互いのローンに対して連帯保証人となる仕組みです。夫婦で別々のローンを組むため、通常の単独ローンより借入総額を増やせるメリットがありますが、リスク発生時は夫婦が同時に債務を負うことになります。
要注意!ペアローンはリスクが「倍」になることを認識
夫婦でペアローンを組むこと自体は、高額物件を手に入れるための有効な手段の1つです。しかし、そこには非常に重大なリスクが伴うことを、まず認識していただきたいです。夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合、リスクは2人分あるということです。離婚、病気、失業など、人生におけるリスクはさまざまです。ペアローンは、これらのリスクを夫婦で2倍にしてしまうということを、特に若いカップルの方は慎重に考えてほしいです。
ペアローンがリスクを2倍にする最大の理由は、夫婦のどちらか一方に何かあっても、残された側が自分のローンと、相手のローンの「連帯保証人」としての責任の両方を負う点にあります。
例えば、夫が病気や事故で働けなくなった場合を考えてみましょう。
夫の収入が途絶え、夫のローンの返済が滞る
↓
妻は、自分の収入から自分のローンの返済を続ける
↓
妻は、夫のローンの連帯保証人として、夫の返済分も肩代わりする義務が生じる
つまり、妻は「自分のローン」と「夫のローン」の両方を、1人で返済し続けなければならないという、極めて危機的な状況に追い込まれるのです。特に、年収の高い「パワーカップル」によるペアローンが増えており、そのリスクに対する十分な計画がされていないと私は感じます。
(編集部補足)
団体信用生命保険(団信)に加入している場合、契約者が亡くなったり高度障害状態になった際には、その人(債務者)のローンは保険で完済されます。ただしペアローンは夫婦それぞれが別の契約となるため、一方が亡くなっても、もう一方のローンは残ります。また、離婚や失業、収入減などの生活リスクは団信の対象外となるケースが多いため注意が必要です。
なお、近年では夫婦どちらかに万一のことがあった場合に、残された配偶者のローンも完済される「ペアローン団信」を扱う金融機関も登場しています。ただし、利用には条件があり、保険料(または金利上乗せ)が発生することも多いため、内容をよく確認した上で判断しましょう。
リスク対策の鍵は「自己資金比率20%」
ペアローンで組んだ高額なローンが破綻してしまうと、自宅の売却を余儀なくされます。その際、売却額でローン残高をゼロにできるかどうかが命運を分けます。万が一の事態に備え、私は必ず「自己資金を20%以上用意する」よう強く推奨しています。
自己資金が少ないと、売却してもローンが残る“オーバーローン”になりやすい。そうなれば、債務整理や自己破産といった、人生を左右する事態に陥ります。住宅価格が5年で20%下がったとしても、20%の頭金(自己資金)を入れていれば売却でローン残高をゼロにできる──これが20%の根拠です。
ペアローンは慎重な計画の上に成り立てば、家族の夢を叶える有効な手段。借りる前に、夫婦で“もしも”について話し合っておくことが大切です。
教えてくれたのは……山下 和之氏(住宅ジャーナリスト)
新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。






