Q:夫はすでに年金を受給中。私(妻)は65歳になりますが、もう少し働けそうです。繰り下げ受給をしたほうがよいでしょうか?女性のほうが平均寿命が長く、夫が亡くなったあとの遺族年金にも不安があります。
「共働き夫婦で、夫はすでにリタイアして年金を受給しています。私はもうすぐ65歳で、老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給開始年齢になります。ただ、まだ仕事を続けられそうで、収入もあります。女性のほうが平均寿命が長いこと、そして夫が亡くなったあとの遺族年金はあまり多くないのではと考え、年金の繰り下げ受給も検討しています。繰り下げたほうがよいのか、それとも65歳から受け取ったほうがいいのか悩んでいます」(ももさん)
年金をどう受け取ったらお得に?(画像:PIXTA)
A:長生きのリスクを踏まえると、繰り下げの受給は現実的な選択肢の1つ。キャッシュフロー表などで生活設計を「見える化」し判断しましょう
65歳を迎えるにあたり、年金の受給開始をどうするか悩まれている質問者の「もも」さん。ご主人はすでに年金を受給中で、ももさん自身はまだ働ける見込みがあり、収入もあります。女性の平均寿命の長さや、将来「おひとりさま」になる可能性も見据えて、年金の繰り下げ受給を検討されているとのこと。とても現実的で、ご自身の暮らしを見据えた素晴らしい視点です。年金の繰り下げ受給は、年金を65歳で受け取らず、受給開始時期を遅らせることによって将来の年金額を増やす制度です。それによって、老後の生活費や医療・介護などの支出に備える“安心の土台”を築くことができます。
一方で、遺族厚生年金の仕組みにも注意が必要です。これはももさんの老齢厚生年金に加算されるのではなく、両者の金額を比較して支給調整が行われるため、思ったほど受取額が増えない可能性があります。
そのため、将来の備えとして遺族年金を見積もる際には、ご主人の年金額や年金の加入歴の情報も欠かせません。ご自身の老齢厚生年金との支給調整を見越して、両方の年金額を把握しておくことが、安心につながります。
「ねんきんネット」で繰り下げ後の年金額を試算し、働き方や収入の継続性、在職老齢年金制度の影響も確認しておくと安心です。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金はそれぞれ別々に繰り下げできるため、遺族年金との兼ね合いで老齢基礎年金のみを繰り下げる選択も可能です。
繰り下げによって年金額を増やすことは、長生きリスクへの備えにもつながります。キャッシュフロー表などで生活設計を「見える化」し、数字だけでなく、ももさんのこれからの暮らしに合った設計を考えることで、納得感ある判断ができるでしょう。
当面は働くことで、ももさんが65歳を迎える時点で終了する加給年金の収入を補うことができます。またその期間、年金の受給開始を繰り下げれば、将来の受給額を増やすことが可能です。
ただし、年金額が増えることで、所得税や住民税、健康保険料、介護保険料などの負担が増える可能性もあるため、注意が必要です。こうした点も含めて、「いつまで働くか」「どのタイミングで年金を受け取るか」を自分の暮らしに合わせて柔軟に設計していくことが、安心感を高める一手になります。
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