国内旅行トピックス

旅行ガイドが外国人から聞かれてハッとする、インバウンドから見た「日本のフシギ」5つ

長い時間をかけて独自の文化を育んできた島国日本には、外国人にとってなじみの薄い慣習やルールが多く存在します。今回は、外国人に指摘されてハッと気付く、日本特有の文化について、いくつか考察してみました。

中原 健一郎

中原 健一郎

海外旅行 ガイド

中小企業診断士、観光学講師、全国通訳案内士。次世代の国際派観光人材の育成や観光立国とパンデミック回復に向けてサービス産業の業務改善に取組む他、約120か国の渡航経験を元に、独自の経験則に基づく海外旅行の危機管理やお得情報を発信。観光庁「若旅授業」「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」講師。

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外国人に聞かれて「ハッとさせられる」日本のフシギ5選

外国人に聞かれて「ハッとさせられる」日本のフシギ5選

秋のインバウンド来訪の季節が続いています。来日観光客が増えれば、日本との文化の違いによる誤解やトラブルが発生することもありますが、外国人の客観的な視点で見た日本の“フシギ”には、ハッと考えさせられるものも少なくありません。
 
筆者が全国通訳案内士の業務の中で、インバウンド観光客から寄せられた質問から、私たちには意外と気付きにくい日本の日常のあれこれを5つご紹介します!
<目次>

1. なぜ日本のタクシーのドアは自動なの!?

「えっ、それって当たり前でしょう」と筆者も昔は思っていましたが、実は当たり前のことではありません。少なくとも筆者は、日本以外の国でタクシーのドアが自動で開閉するのを見たことがないように思います。
 
この自動ドア(実際には運転手が手動で開けているのですが)は、1964年の東京オリンピックをきっかけに、利用者の利便性や安全性の向上を図って導入が進んだそうです。日本人らしい気遣いが感じられるサービスだと思います。
自動で開くタクシーのドアは、インバウンド外国人が初めて日本へ来て必ずビックリするものの一つ

自動で開くタクシーのドアは、インバウンド外国人が初めて日本へ来て必ずビックリするものの1つ!

こうした日本ならではのサービスにうれしい驚きを示す外国人も多い一方で、まさか自動で開くとは思っていないわけですから、自分でドアを開けようとしてうまくいかず、戸惑ったり、不都合を感じてしまったりするケースもあるようです。
 
ドアに限らず、日本のタクシーは夜間に女性が1人でも安心して乗れるということ自体が、当たり前のようで実は全然当たり前ではない素晴らしいサービスだと思います(筆者は男性ですが、海外で夜間の1人利用はできるだけ避けますし、国によっては命がけです)。

2. 歩道にある黄色い線はなに!?

これは聞かれてうれしい、明確にお返事ができる質問の1つです。答えはもちろん「点字ブロック」で、日本発祥の視覚障がい者用の案内補助設備です。歩行者は凹凸を足裏で感知できるため道を逸れずに歩くことができ、凹凸の変化で交差点などの注意箇所を知ることができます。
 
意外に思われるかもしれませんが、同じような機能を持つ設備は海外ではあまり見かけません。全く存在しないわけではないのですが、日本のように統一された規格で、社会に広く浸透している国は、筆者の知る限りありません。
日本ではあらゆる場所に設置されている「点字ブロック」。目の不自由な方々の羅針盤です

日本ではあらゆる場所に設置されている「点字ブロック」。目の不自由な方々の羅針盤として必要不可欠

説明すると、暗に「さすが日本!」という感じの反応を示してくださる方が多く、ぜひ母国でも何かのヒントにしてもらえればと思います。

3. 日本の神社とお寺の違いは? 

これも、回答ははっきりしています。神社は日本の神道の礼拝施設であり、お寺は世界宗教である仏教の施設です。
 
その点を理解してもらうことは難しくはないのですが、そう説明すると、多くの外国人は「日本では神道を信じる人と仏教を信じる人が多いんだな」という風に理解します。しかし、実際には日本では「神道と仏教の両方」を信仰の対象とする人が少なくありません。 例えば、時代劇などでよく耳にする「神さま仏さま~」というセリフは、日本人が神道と仏教をともに信仰する様子をよく表しているのではないでしょうか。
 
時と場合によって神社にもお寺にも参拝するという日本人は多いと思います。2つの異なる宗教を同時に敬うことは、多くの外国人にはなじみがありません。また、古代から八百万(やおよろず)の神々を信仰してきた日本人の宗教観(もちろん、キリスト教などさまざまな宗教の人がいることも含めて)を、インバウンド観光客に簡潔に説明するのは非常に難しいことです。
 
一方、日本人の中には「自分は無宗教だ」と考えている人も多くいます。しかし、そうした人たちも初詣の際には何時間も並び、無心で祈ったりお守りを買ったりしています。

このように柔軟な信仰心を持つ日本は、ある意味外国人にとっては「異文化体験」のるつぼなのかもしれません。

4. なぜ日本の航空接客スタッフは若い女性が多いの? 

日本を訪れる多くの人々は空路を利用するため、空港で接客を担当する職員と接点を持つ機会が多いのでしょう。しかし、これは日本人として思わず言葉に詰まる質問です。

試しにGoogleで「airport staff」と画像検索し、続いて「空港スタッフ」と日本語で画像検索すると、表示される画像の雰囲気がガラリと変わることに気付くでしょう。
 
ちなみに、客室乗務員については、多くの国で男性の割合が3割くらいという感覚を持つ方が多いのではないでしょうか。一方、筆者自身は日本国内のフライトで、女性パイロットの便に乗り合わせたことはありますが、男性の客室乗務員を見たことがありません。これは非常に偏った状況だと思います。
 
その理由として考えられるのは、まだ飛行機で海外旅行が夢のようだった昭和の時代に、確かに“スチュワーデス”たちはなぜか美人ぞろいで、そのイメージがこの業界の女性人気につながって今に至る面は大きいのでしょう。
 
しかし、時代は変わっています。客室乗務員は女性でなければできない仕事ではないですし、筆者はまた、地上か空かを問わず、接客スタッフに「若い」人ばかりが目に付くこともむしろ気掛かりです。言うまでもなく、乗客の安全はスタッフの長年の経験によって支えられることが多いからです。
空の安全はスタッフの長年の経験と技術があってこそ。

空の安全はスタッフの長年の経験と技術があってこそ。航空機(乗客)に一礼する地上職員も日本ならではの光景(向かって左)。こちらこそ敬意を表したい

一般的な会社組織では、若い人が多いことは活気につながり好ましい面もあります。しかし、安全が最優先される航空業界では、事情が異なるはずです。もちろん、子育て後に復職する際のハードルなど、どの仕事にも共通する課題はあると思いますが、もし若い人たちが早期に離職してしまう現状があるとすれば、それは日本の航空安全にとって大きな損失となります。

5. 日本にはなぜこんなに多くの自販機があるの!?

これは、複合的な要因によって形成された、ある意味文化に近いものだと思います。1つの要因は、日本の治安のよさ。これは間違いなくあるでしょう。深夜にバールでこじ開けられて金銭を奪われる心配をあまりしなくてもいいというのは、世界の中ではどちらかといえば例外的なことです。
 
推測ですが、日本の物価が比較的安定していた上に、100円玉や50円玉の存在(昔は硬貨のみの自販機が非常に多かった)があったこと、またその100円の価値が缶ジュース1本の価値と長い間うまくマッチしていたことも大きかったと思います。
 
この条件を満たす国は日本だけではないはずですが、例えばアメリカの場合だと、自動販売機で1ドルを支払うには25セント玉を4枚(常に財布にあるとは限らない)用意するか、1ドル札や5ドル札を使うことになり(紙幣でおつりを出す機能も必要)、置く方、買う方双方にとって結構ハードルが高いことは想像できます。
 
さらに付け加えると、日本円は非常に清潔で新品同様の紙幣が多く、これは世界的に見ると珍しいことです。そのため、自動販売機が紙幣を読み取る際の誤作動が起こりにくいと考えられます。また、偽造防止技術も世界トップクラスであり、これら物理的な要因が自動販売機を安心して運用できる環境づくりに貢献していると言えるでしょう。
とにかく自販機が多く目につく日本。外国人から見ると、やっぱり少し違和感があるよう

とにかく自販機が多く目につく日本。外国人から見ると、やっぱり少し違和感があるよう。「こんなにたくさん本当に必要?」

ですが根本的な理由として、もしかしたら私たち日本人が便利さに慣れていて、欲しいものがすぐ手に入ることにコストを払うのをためらわないということも考えられはしないでしょうか。
 
ちなみに筆者がご案内する際には、「青いボタンと赤いボタンの違いは何でしょうか?」とクイズ形式で紹介することがあります。日本が初めての外国の方々が答えを聞いて「なるほど」という顔をしてくれるのが私は好きで、筆者の定番の案内になっています。(実際、「冷たい飲み物がほしかったのに!」というハプニングも少なくありません)
 
いかがでしたでしょうか。外国人の視点から寄せられる率直な疑問の中には、日本社会の課題が見えてくる場合もあれば、世界に誇れるいい点が隠れていることもあります。この記事を読んで、皆さまに何か新たな気付きがあれば幸いです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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