子供の教育

「昭和タイプ」の教員は“悪”なのか? 元教員が自己犠牲の指導を卒業して見つけた「答え」

威圧的とされがちな昭和タイプの指導は、今の教育現場では批判の的にもなりつつあります。ただ、現場で求められるのは一方を否定することではなく、さまざまな時代の視点を生かしながら子どもたちに合わせた柔軟な教育スタイルの模索ではないでしょうか?

坂田 聖一郎

坂田 聖一郎

子育て・教育 ガイド

大学卒業後、芸人を目指し現在「しずる」村上純とコンビ結成するも解散。その後、教員を13年間経験。独立し「株式会社ドラゴン教育革命」を設立。「学校教育にコーチングを」をスローガンのもと、「ままためコーチング塾」をスタート。子育てや家事で忙しいお母さんや教員にも親しみやすい丁寧な指導が好評。

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「ちゃんとやりなさい」「黙って従いなさい」「文句を言う前にやれ」——こういった言葉に心当たりがある人も多いのではないでしょうか。これはいわゆる「昭和タイプ」と呼ばれる先生の典型的な指導スタイル。厳しく、時に威圧的に、生徒を“正しい方向”へ導こうとする姿勢です。

現代の教育現場では、こうしたスタイルに対する風当たりが強くなっています。「それはパワハラだ」「今の子どもには通用しない」といった声が飛び交い、SNSでも“昭和タイプ”が叩かれる場面をよく目にします。

でも、昭和タイプの先生は本当に“悪者”なのでしょうか?

今回は、かつて昭和的な指導スタイルを実践していた元教員であり、現在は教育現場にコーチングを導入する活動を行う筆者が、「昭和タイプの先生と教育のこれから」について率直に語ります。
<目次>

昭和タイプ=悪ではない。けれど限界はある

私自身、13年間の教員生活で、バリバリの昭和スタイルで指導していました。

「黙れ!」「校則守れ!」「宿題やってこい!」そんな言葉を日常的に使いながら、「生徒を導くのが教師の役目」と信じていました。正直、それでうまくいった場面もありました。でも一方で、私の強い指導がきっかけで不登校になってしまった子がいたかもしれない——それも事実です。

昭和タイプの教育には、「統率力」「勢い」「熱量」といった大切な要素もあります。ただ、それだけでは今の子どもたちには届きにくくなっている。特に多様な背景や感情を持つ子どもたちにとって、「一律に同じ型に押し込める教育」には限界があると感じています。
学校(イメージ)

昭和タイプで指導するには限界がある

「一人ひとりと向き合う」ことの難しさ、そして尊さ

トラブル対応、学級経営、保護者対応、部活動……。教員の仕事は多岐にわたり、日々時間に追われています。その中で「一人ひとりと向き合う」というのは、現場の先生にとって極めて大きな負担です。

でも、生徒と1対1で向き合って話を聞く時間こそが、最も価値のある教育の瞬間だと実感したことがあります。

ある問題が起きたとき、生徒を呼んでじっくり話す。ふてくされた態度をとる子どもに対して、「何があったの?」と聞いてみる。すると、ふと心の内を話し始める。泣きながら「実は……」と語ってくれる。

その瞬間、私は、これこそが教育なんじゃないかと感じました。

でも現実には、個別対応にかかった数時間、その分の仕事は他の時間にしわ寄せが来ます。誰にも評価されないし、報酬が増えるわけでもない。ただ、向き合った分だけ自分の業務が増える。それが教員という仕事の現実です。

それでも、「話を聞く時間」の価値は計り知れない。だからこそ私は、学校教育にコーチングの視点を取り入れたいと強く思うようになりました。

自己犠牲の教育から、自分軸の教育へ

13年間教員を続けた私が、最終的に退職を決断したのは「200時間超の月間残業」を数カ月経験したときでした。

朝5時前に出勤し、夜22時過ぎても帰れない。土日も休み返上で仕事するも、それでも終わらない仕事の山。おかしい、明らかにおかしい。でもその「おかしい」に目をつぶって、麻痺(まひ)して、自己犠牲を続けていた——それが当時の私でした。

そしてようやく気付いたんです。本質的な課題は「自分」にあったんだと。

「誰かがやらなきゃ」「自分がやった方が早い」——そんな風に、周りの目を気にして、いい先生を演じていた。でもそれが、結果的に自分を追い込み、他人軸の働き方を生み出していた。

コーチングと出会ったことで、私は初めて「自分の本音」と向き合いました。そして気付きました。教育は他人の期待に応えることじゃなく、自分が本気で子どもたちに向き合いたいと思える状態であることが大事なんだと。

コーチングを学ぶことで、自分軸の働き方にシフトする先生がもっと増えてほしいと、心から願っています。
学校(イメージ)

自分軸の働き方にシフトする先生がもっと増えてほしい

変わりたいと思う先生にこそ、コーチングを届けたい

「昭和タイプはもう古い」——そう決めつけてしまうのは簡単です。

でも大切なのは、どんなスタイルであれ「目の前の子どもにとって何が最善か?」を常に問い続けること。

そして、もし今の自分の指導に違和感があるのなら、変わるチャンスです。私自身がそうだったように、何かのきっかけで「自分を変えたい」と思ったとき、コーチングはその道を照らす強力なツールになります。

今、私が主宰しているコーチング塾には、全国から多くの教員が参加しています。「忙しさに飲み込まれずに、教育を楽しみたい」「もっと子どもと丁寧に関わりたい」——そんな願いを持った先生たちから、「自分の働き方が変わった」「コーチング的に生徒に関わってみたら、こんな反応をしてくれた」といった声も上がるようになり、少しずつ現場も変わり始めています。
学校(イメージ)

どんなスタイルであれ「目の前の子どもにとって何が最善か?」を常に問い続けることが大切

昭和タイプだと思う先生へ

あなたがもし「昭和タイプかもしれない」と思っているなら——それは、もうすでに第一歩を踏み出している証拠です。

昭和がダメで令和が正義、なんて単純な話ではありません。両方の“よさ”を統合できる先生が、これからの教育を担う存在だと私は信じています。

子どもに寄り添いながらも、時には方向性を示す。「どうしたい?」と聞きながら、「これは大事だよ」と伝える。

そんな“両極のバランス”を取れる先生に、ぜひなっていってほしい。私もまだまだ道の途中ですが、一緒に、学校教育をよりよく変化させる時代を共に創っていけたらと思います。

昭和タイプの指導は時代に合わないとされがち。でも本当に大切なのは、教師自身が多忙な現場の中で「在り方」を問い直し、子ども一人ひとりに向き合うための柔軟な教育スタイルを模索していくことです。
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