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公立学校のキャリア教育には何が足りない? 安野貴博が提言する、AI時代に必要な3つの始点

公立学校が抱えるキャリア教育の課題に「チームみらい」の安野貴博氏が提言。実社会との乖離、ジェンダーバイアス、そして未来を生き抜く力を育むための具体的な解決策とは?※サムネイル画像:PIXTA

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公立学校が抱えるキャリア教育の課題とは? 「チームみらい」党首、安野貴博氏が具体的な解決策を提言する。※画像出典:PIXTA

公立学校が抱えるキャリア教育の課題とは?「チームみらい」党首・安野貴博氏が解決策を提言。※画像出典:PIXTA

AI時代を迎えた今、子どもたちに本当に必要な教育とは何でしょうか?

2024年夏の東京都知事選でマニフェストが大反響を呼び、15万票を獲得した安野貴博氏の著書『1%の革命 ビジネス・暮らし・民主主義をアップデートする未来戦略』では、AIを起爆剤にして行政や教育など各業界をアップデートするための方法論を伝えています。

今回は本書から一部抜粋し、公立学校のキャリア教育の現状に触れながら民間との連携による解決策について紹介します。
<目次>

リアルな職業体験の不足

新規に学校を開設するには数年単位の時間を要しますから、比較的早期に実現可能な施策として、教育の場と民間の力との接続を積極的に進めるべきだと考えています。

というのも、変化の激しい時代だからこそ、キャリア教育の重要性が高く、そのために実社会との接続が重要になってくるからです。教員には荷が重く、あまり得意ではないこの領域を民間と接続することは、合理的です。

例えば、いわゆる「職業体験」を、広くキャリア教育の文脈で、世の中にはどんな仕事があって、どんなことが社会で求められていて、そのためにはどんな勉強が必要なのか、生徒たちの日々のモチベーションとつなげるリアルな場とするのです。

これはすでに小中学校等で行われている取り組みですが、その中身をアップデートできる余地は大きいといえます。クラスでキッザニア東京や大きな工場見学に行くのもいいですが、興味や個性に応じて少人数でリアルな行き先を選択できる仕組みをもっと推進してもよいでしょう(すでに実施している公立校もあります)。

経済産業省「未来の教室」では、長野県坂城高校と博報堂のプロデューサーをオンラインでつないで「未来の街づくり」について考える試みを実践しています。東京都でも島しょ部や山間地域ではこうしたオンラインも視野にいれて検討すると、取り組みの幅が広がるのではないでしょうか。

ジェンダーバイアスの解消

また日本では、STEAM系領域においてジェンダーバイアスが強くはたらいており、理工系の分野に進学する女性の比率は低く、またITエンジニアとして働く就業者のうち女性が占める比率もOECD加盟国のなかで下位に留まっているという大きな課題もあります。
画像出典:『1%の革命 ビジネス・暮らし・民主主義をアップデートする未来戦略』

※画像出典:『1%の革命 ビジネス・暮らし・民主主義をアップデートする未来戦略』

誰もが、STEAM活動に触れられる学校教育の場をつくることに、意識的に取り組んでいく必要があります。ドイツでは、10歳以上の女子生徒に対してSTEAM分野への関心を高めることをねらって、産官学が連携して職業体験を行う全国的なイベント「Girls' Day」が毎年開催されています。

日本でも同様のイベントを実施できれば(必ずしも対象を女子生徒に限定する必要はありませんが)、先端の技術に触れる体験を通して自身の将来像が広がる子どもたちがいっきに増えるでしょう。とくに東京は各分野のトップ企業が集積しているので、こうした職業体験イベントを実施するには最適の場所です。

最前線で働く人のリアルな話を教材に

さらに、企業の最前線で働いている社会人が「一日講師」となって、生徒に現場の面白さを伝える「出前授業」の取り組みも価値が高いといえます。学校の窓の外に目をやれば、すぐ近くに、第一線でチャレンジングな仕事をしている人々が山ほどいます。例えば、

・脳外科医の一日はどんなことをしているの?
・超高層ビルはどうやって建築しているの?
・ハイパーレスキュー隊は災害現場でどう救助活動しているの?
・総合商社は世界各地でどうやって天然ガスを買い付けているの?

大人が聞いてもワクワクするような仕事の最前線で働く人々のリアルな話は良い教材です。基礎学力をつける授業とはまったく異なる刺激を生徒たちに与える機会になるでしょう。未踏ジュニアのメンター制のように、社会で活躍している人材を積極的に教育の場に引き込んでいくことには大きな意味があるはずです。
  安野 貴博(あんの たかひろ)プロフィール
AIエンジニア、SF作家。1990年、東京都生まれ。東京大学工学部システム創成学科卒。在学中、AI研究の第一人者、松尾豊氏の研究室に所属し、機械学習を学ぶ。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2016年にAIチャットボットの株式会社BEDORE(現PKSHA Communication)を創業。2018年にリーガルテックのMNTSQ株式会社を共同創業。2019年、「コンティニュアス・インテグレーション」で第6回日経星新一賞一般部門優秀賞を受賞。2021年、『サーキット・スイッチャー』で第9回ハヤカワSFコンテストで優秀賞を受賞し、作家デビュー。2024年に東京都知事選に出馬し15万票獲得。2025年1月「デジタル民主主義2030」発足、同年5月に「チームみらい」を結党し、参議院選挙(比例代表)で初当選、政党要件を満たす2%以上の得票率を達成。AIを活用した市民参加を軸に、現場と政策をつなぐ活動、双方向型のコミュニケーションを実践している。
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