
老後の生活を支える「配当金収入」を重視して投資!(画像:PIXTA)
今回ご紹介するのは、東京都在住の会社員「ダユウさん」(57歳)です。利息の低さに危機感を覚えて投資を始め、現在は老後の生活を支える「配当収入」を重視して堅実な資産形成を続けています。
■プロフィール
ペンネーム:ダユウさん
年齢:57歳
性別:男性
家族構成:妻(60歳)と2人暮らし
居住:東京都(賃貸)
職業:正社員
世帯年収:約1100万円(本人1000万円+妻100万円)
■資産と投資状況
現金・預金:約600万円
リスク資産:約900万円
- 投資信託:300万円
- 日本株:600万円
毎月の積立:10万円
預貯金の金利は低過ぎ!老後に困らないだけの配当金を得たい
「預金の利息の利率があまりにも低いから」。これがダユウさんが投資を始めたきっかけです。老後に困らないだけの配当金を得たいという目標を掲げ、長期積立をベースに配当金を重視した投資を実践しています。投資の確認は月に一度。ルールは「毎月一定額を積み立てること」。安定したペースを崩さず、時間を味方に着実な資産形成を心掛けています。情報源はX(旧Twitter)やYouTubeといったオンラインメディアを中心に活用しています。
成功体験はコロナ禍のころに積み立て始めた投資信託や、純金積立。また、保有株のアステラス製薬<4503>からは安定した配当を得ています。
一方で、「個別株は銘柄選びを誤れば危険だ」という実感も得ました。特定銘柄への集中はリスクが高く、分散や選別の重要性を痛感したといいます。
投資を始めてからは「世の中の動きに敏感になった」とも話し、日常生活においても経済や社会情勢を注視するようになりました。
「今のペースを守りながら、着実に配当金収入を増やしていきたい」と話すダユウさん。老後を支える資産基盤を育てつつ、日本の少子高齢化や市場縮小といった不安要素も念頭に置いています。特に「海外事業を積極的に展開していく企業の動向」を注視し、成長余地を探っていきたいと考えています。
専門家への質問
最後に、ダユウさんは専門家にこう問い掛けています。「おすすめの高配当銘柄を教えてほしいです。今後、日本国内は少子高齢化によるマーケット縮小が予想されるので、海外事業を積極的に展開していこうとしている企業の動向が知りたいのです」
今回の「ダユウ」さんからの質問に、個人投資家の中原良太さんが回答します!
個人投資家・中原良太さんからのアドバイス
少し前に「中原指数」というものを作りました。自分が監視していて、ブログやYouTubeでも取り上げたことのある銘柄をひとまとめにした指数です。その中から注目しているのが、配当利回りの高いものだと明豊ファシリティワークス<1717> と、グローバルな展開を進めるトヨタ自動車<7203>です。
明豊ファシリティワークスは、事務所や工場、学校などを建てたり、移動したりするのを支援するコンストラクションマネジメント会社です。工場を稼働させながら移転する!みたいな、めちゃくちゃ複雑な引っ越しなどもがっつりサポートしてくれる会社です。建設業界は人手不足が深刻で、予算以内に建物を建てられなかったり、スケジュール通りに終わらなかったり、大変です。今まさに必要な会社なので、まだまだ伸びると期待しています。
トヨタ自動車はいうまでもなく日本を代表する企業ですね。「アメリカの関税が逆風では?」という見方が優勢な気もしますが、個人的にはトヨタ自動車が「推し」なんですよね。
なぜかというと、トヨタ生産方式が大好きで、すごさを実感しているからなんですよね。
アマゾンのジェフベゾスも絶賛した『ザ・ゴール』という本も、元は筆者がトヨタ生産方式を研究して、いろんな企業に応用できるよう「制約理論(TOC)」としてまとめたものです。トヨタ生産方式を学ぶ海外企業も多く、世界に誇るスゴイ会社です。
同社の業績はある程度景気に振り回されますが、同社は同業他社と比べると「不景気に強い」イメージがあります。なぜかというと、同社が採用しているトヨタ生産方式が、「好景気でがっつり儲ける」ことではなく「不景気でも損をしない」ことを重視しているからなんですよね。
大量生産・大量消費の高度成長期では、1つの型番をたくさん作るのが正義でした。
しかし、トヨタ生産方式は「こんな時代は長く続かない」という思想のもとで、多品種・少量生産を、いかに効率的に行うかを考えて進化を続けています。
自動車産業は競争が激しいのがマイナスポイントですが、トヨタ生産方式の強力さはいうまでもなく、応用範囲が広いので横展開もできます。まだまだ伸びられる会社だよなーと思います。
「海外展開企業」に縛られなくてもいい
なお、ダユウさんは「日本国内は少子高齢化によるマーケット縮小が予想されるので、海外事業を積極的に展開していこうとしている企業の動向が知りたい」とのことで、余計なお世話かもしれませんが、「この考えに縛られる必要はない」と感じました。大きなマス市場で勝負するほど競争も激しくなることもありますし、何より、事業成長と企業価値の成長は別です。「ニッチ企業には伸び代がないのでは?」というのはよくある「勘違い」でして、ニッチ企業でも、しっかり伸び代はあります。ニッチとは「すきま」のことで、ここではマニアックな商品や限られた需要に対応する会社のことをニッチ企業といいます。
確かに、経営者という立場から考えると「業績を伸ばすのが難しそうだ」と感じます。しかし、この問題は、僕ら投資家の立場で考えてみると、すぐに解決できます。
例えば、あなたがニッチ企業のオーナーだったとします。元手5億円で、年に1億円の利益を出しているとしましょう。あなたの会社の地位はまさに「鉄壁」で、これからも安定してお金を稼げます。
つまり、あなたには「盤石な1億円の収入源」があります。ここで、この1億円を使って、あなたができる選択肢をイメージしてみてください。
あなたが「経営者」で事業経営のことしか頭にないのであれば、「このお金を使っても本業を成長をさせるのは難しい」と思うでしょう。
しかし、あなたは「経営者」ではなく「投資家」です。
余ったお金は必要なところへの投資に回すことで、本業以外でもお金を稼げます。本業で年1億円を稼ぎ、その1億円は自分が得意とする別の分野に投資すればよいのです。
優れた経営者は、優れた投資家でもあります。優れた経営者が率いるニッチ企業は、本業で稼いだお金を使ってシナジー(相乗効果)が見込める企業を「買収」したり、競争優位を失わない範囲で、無理のない形で周辺分野へ「横展開」したりして伸びていきます。
通信キャリア産業のように「盤石な収益基盤」を生かして、企業価値を引き上げる
あれこれと手を広げて強みを失うのではなく、既存事業の「盤石な収益基盤」を生かして、企業価値を右肩上がりに引き上げていくことができるのです。日本企業で分かりやすい例としては、通信キャリアがあります。
通信キャリアは「内需産業」です。日本の人口は右肩下がりですから、値上げでもしない限り本業の業績を伸ばすことはできません。しかし、通信キャリアの大手は少しずつですが着実に業績を伸ばし続けています。
なぜこんなことができるのか?というと、本業で稼いだお金を投資に回しているからです。通信キャリアは顧客基盤が盤石なので、一度契約が入れば安定した収入源になります。そのお金でいろんな企業を買収して、「盤石な収益基盤」を企業成長の礎にしているのです。
……ということで、「ニッチ事業をそのまま伸ばす」という点では、ニッチ企業は伸び代に欠けるかもしれません。そもそもニッチ戦略はオタッキーな少数のニーズを満たすものですから、規模を拡大しようとするのは不適切なんですよね。
一方、それはあくまで「事業」の話であって、「企業価値」の話ではありません。ニッチ事業で稼いだお金を原資として会社を買収することもできるし、株を買うこともできますから、ニッチだからと言って投資対象にならないか?というと、むしろ逆というのが僕の考えです。
話は逸れてしまいましたが、なんとなくで決めた運用ルールが投資成績の「限界」になってしまうことはよくあるので、再考する機会になれば幸いです。
教えてくれたのは……
中原 良太さん
個人投資家、トレーダー、ブロガー、YouTuberとして活躍。主に株式投資とマネー(お金)について初心者向けに情報発信。IQ上位2%のMENSA会員。18歳に株を始め、25歳でYahoo!株価予想達人で「ベストパフォーマー賞」を受賞。モットーは「地道にコツコツ」
※本記事で紹介している人物のプロフィールや数値等は、プライバシー保護のため編集部で一部改変している場合があります。
※記事の内容はあくまで個人の体験談および専門家の一般的な見解であり、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。
※投資には元本割れを含むリスクがあり、将来の成果を保証するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。