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スマホ使用の条例案も……学生3割にリスク? 海外研究から見る「スマホ依存になりやすい」5つの性格

【児童精神科医が解説】スマホの使用を「1日2時間以内」とする条例案が賛否を呼んでいます。スマホ依存は心や認知機能に大きく影響を与えますが、大学生を対象とした海外の研究によると、調査対象の約3割に依存リスクが見られたそうです。スマホ依存になりやすい性格の傾向と習慣を整えるコツを、分かりやすく解説します。

秋谷 進

秋谷 進

医師 / 子どもの健康・医療ニュース ガイド

小児科医・児童精神科医・救急救命士。金沢医科大学卒業後、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院、三愛会総合病院、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て、たちばな台クリニック小児科。小児神経・児童精神を中心に診療に従事している。

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スマホ依存のイメージ

スマホを見るのがやめられない……「スマホ依存」になりやすい性格とは?(出典:Shutterstock)


「ちょっとだけ」と思ってスマホを見始めたら、いつの間にか時間が過ぎていた……。そんな経験はありませんか? スマホは便利な一方で、必要以上に使い過ぎて、依存状態になってしまう人も少なくありません。

国内では、スマホの使用を「1日2時間以内」とする条例案の審議が愛知県豊明市で始まり、議論を呼んでいます。

実は、スマホへの依存しやすさに、「性格」が関係しているかもしれない、という興味深い研究報告があります。スマホ依存になりやすい性格と対処法について、一緒に考えていきましょう。
 

「新しいもの好きで心配性」な人ほど、スマホ依存になりやすい?

この調査は、テヘランの大学生382名を対象としたものです。調査の結果、スマホ依存の傾向がある学生には、以下のような性格特性の組み合わせが見られることが報告されました。
 
  1. 新しい刺激を求め、やや飽きっぽい
  2. 不確かなことを恐れ、心配しがち
  3. 自己と言う枠組みを超えて、物事の本質を探求しやすい(自己超越欲求)
  4. 困難に直面したときの粘り強さが低い
  5. 自分を律したり、目標に向かって計画的に行動するのが苦手

研究チームは、これらの性格の組み合わせが「自己愛性パーソナリティ障害」の傾向と関連している可能性もあると指摘しています。以下で研究の内容を、詳しくご紹介します。
 

「大学生におけるスマホ依存と性格特性の関連性」は? 研究の目的と調査方法 

今や私たちの生活に欠かせないスマートフォンですが、過度な使用は、学業成績の低下、うつや不安といった精神的な不調、さらには睡眠の質の低下など、さまざまな問題を引き起こすことが知られています。

これまでも、スマホ依存と性格の関係については複数の研究がありましたが、結果にはばらつきがありました。本研究は、「大学生において、スマホ依存と性格特性の間にどのような関連があるのか」を調査することを目的に行われました。イラン・Shahid Beheshti Medical UniversityのAli Kheradmand氏らによるFrontiers in Psychiatry誌2023年2月における報告です。

対象:テヘランの大学生382名
方法:「スマホ依存尺度」と「気質と性格の質問票(TCI)」に回答してもらい、依存傾向の有無で比較
 

調査の結果は、「約3割の大学生にスマホ依存のリスク」

調査の結果、調査に参加した学生のうち、約3割(28.8%)がスマホ依存のリスクを持つと判定されました。これは決して少なくない数字です。

そして、スマホ依存傾向が見られたグループは、そうでないグループに比べて、以下の特徴が強く関連していました。
  • 新規性追求が高い:衝動的で、新しい物事や状況に強く惹かれる
  • 損害回避が高い:将来を悲観的に考えたり、不確かなことを過度に心配してしまう
  • 粘り強さが低い:失敗や疲れを感じたときに、踏ん張って努力し続けるのが苦手
  • 自己志向性が低い:責任感を持って物事に取り組んだり、自分で決めた目標を守ったりするのが苦手
  • 自己超越が高い:「自己」という枠組みを超えて興味や関心が広がりやすい
 

児童精神科医としての考察……重要なのは自分の性格を知り、スマホと上手に付き合うこと

「新しいものが好きで心配性。かつ粘り強さや自制心が低い」性格の人は、なぜスマホに依存しやすい傾向があるのでしょうか?

本研究では、こうした性格の人は、現実世界での不安や退屈さから逃れるため、そして手軽に新しい刺激や他者からの注目(SNSの「いいね!」など)を得るために、スマホの世界に没頭しやすいのではないか、としています。

実は、この性格の傾向は、ADHD(注意欠如・多動症)やうつ病の傾向に関連するともいわれています。しかしもちろん「この性格傾向に当てはまるから、依存症になる」というわけではありません。しかし自身の性格を理解することは、スマホとの健全な距離を保つ第一歩になります。

かくいう筆者も、高校時代は受験勉強のストレスからパソコンゲームに没頭した経験があります。大好きな戦国武将になりきって、仮想現実で気炎万丈に戦う時間は、受験勉強でのさまざまなストレスから逃れ、爽快感を得られる貴重な時間でした。ゲームがなければ私の精神状態は崩壊していたかもしれません。そして最終的に、24時間365日、ゲームにハマってしまっていたのです。受験シーズンが終わり、ゲームの中ではあれだけ何度も戦国時代を終わらせる活躍をしたのに、現実社会では大学進学の決まった友人たちの中で唯一の浪人生でした。ゲームの世界と現実の世界は違うのだ……。この経験を経て、ゲームを封印し、大学受験と真剣に向き合うことになりました。「現実逃避」と「自己コントロールの難しさ」を痛感した経験から、スマホやゲームの使い方を見直す重要性を強調したいと思います。

もしあなたが「スマホ依存になりやすそうだ」と感じるなら、それを防ぐために、以下のことを実践・意識してみてください。
  • まずは現在のスマホ使用時間を計測してみる(専用アプリなどを活用する)
  • 意識的に距離を置く
  • 別のストレス解消法を見つける
スマホ依存は心や認知機能にも大きく影響します。過度な使用を防ぐには、まずは意識することです。できることから少しずつ、習慣を変えていきましょう。

■参考文献
Ali Kheradmand,Elham Sadat Amirlatifi,Zahra Rahbar,Personality traits of university students with smartphone addiction.Front Psychiatry. 2023 Feb 8:14:1083214. doi: 10.3389/fpsyt.2023.1083214. eCollection 2023.
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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